レバレッジ特許翻訳講座

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翻訳者の整えるべき辞書環境と、おすすめの辞書・電子辞書

翻訳者はもちろん、これから翻訳者になろうとする人に非常に重要なのものが、辞書及びその辞書を活用する環境です。

恐らく、学生や社会人が持っているイメージと実際のそれとはかなり違うと思いますので、最後までお読みいただければ「翻訳者」が整えるべき辞書環境がお分かり頂けると思います。

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翻訳者は辞書とどう付き合っていくべきか

翻訳者にとっての辞書をゴルファーとゴルフクラブの関係で見てみましょう。会社員でもそれなりの道具を最初から揃えたり、有名なツアーを観て、憧れのプロゴルファーと同じクラブを買ったりします。翻訳も同じで、これから翻訳者になりたい人はすでにプロとして活躍している翻訳者が持っている辞書を揃えたいと思うずです。

問題なのは、同じ辞書を揃えれば同じように翻訳できるのかです。もし出来るなら話は簡単なのですが、そうはいきません。具体的に見ていきましょう。

辞書はお金で買える実力か

昔から「辞書はお金で買える実力」と言われてきましたが、これは正確ではありません。正しくは、「実力」(翻訳力)を発揮するためには、辞書への投資をケチってはダメだ」という意味です。

もしも辞書を買えば翻訳力がアップするなら、経済的に余裕がある人がプロの翻訳者の最短距離にいることになりますが、そんなことはありません。

量的にも質的にも、プロの翻訳者であれば通常所有しているとされる辞書は確かにあります。ですが、それは「実力があるプロゴルファーは趣味レベルのゴルフクラブで仕事をしませんよ」いうだけで、彼らと同じ辞書を買えばプロの翻訳者になれるというわけではありません。

そうした辞書を有効活用するための「翻訳力」については、別途身に付ける必要があります。 ただ、実力者の辞書の使い方をまねることで翻訳力が少しずつ身につくという側面は否定はできません。

紙の辞書は必要か

現代の翻訳業は、より効率的かつ高速に翻訳作業を行うことが求められているため、プロの翻訳者の間では「電子辞書」が主流となりつつあります。では、紙の辞書はもう不要なのでしょうか。

結論から言うと、紙の辞書は以下の理由から必要です。

  • 紙の辞書の方が情報量が多い(電子辞書に紙の辞書の情報がそのまま移植されていない)
  • 紙の辞書には電子辞書にはない「視野の広さ」がある(ある言葉を調べるときに見える紙面の中で、言葉の多義性を一瞬で捉えることができる)
  • 「ついで読み」による知識の増量速度がはるかに大きい

しかし、電子辞書には紙の辞書にはない以下のようなメリットがあります。

  • PCのハードディスク内に格納できるため場所を取らない
  • 高速で検索できるソフトがあるため効率的である
  • 複数辞書を「くし刺し検索」できるので相互参照も容易である

実際に、 「仮定」という語句で電子辞書の「くし刺し検索」を行ってみると、
複数の辞書でヒットしているのが分かります (LogoVista辞書ブラウザを使用)

ですから、辞書の使い方としては、電子辞書を一通り揃えた上で、定評のあるものについては紙の辞書も平行して調べることをお勧めします。特に、研究社の英和大辞典は電子辞書と併用すると効果的です。

辞書は引くものか

辞書を引く場面を想像してください。「XXX」という英単語について全く知識がなければ、そもそも「引く」という行為ができません。

例えば、「fundamental」という語句を例にとってみましょう。

これをLogoVista辞書ブラウザでくし刺し検索すると「基本」「原則」「原理」「根底」「根本」などの言葉が候補として表示されます。では、その中でいま選択されるべき訳語はどれでしょうか?

実は、プロの翻訳者は複数の候補から最適な言葉を選ぶために辞書を使っているのではなく、自分が既に付けている「あたり」が正しいことを「確認」するために使用しているのです。つまり、この文書のこの位置のこの文脈なら、「XXX」の訳語はおそらく「YYY」であろうという結論を既に出していて、それを確認(裏どり)するために、辞書にアクセスしているにすぎないのです。

もっと言えば、一応確認した訳語の周辺をくまなく調べます。そして、よほどの自信・確信がある場合でなければ、訳文を読み、国語辞典やその他の専門辞書をも調べて「確証」を得ようとするはずです。

つまり、辞書は「最適な訳語を探索し、仮に辞書にそれがなければ自分の頭の中から探し出す」という一連の作業を行うためのアイテムであるといえます。

翻訳者におすすめの辞書

すでに翻訳で一定の収入を得ているプロの翻訳者向けなのか、それともこれから翻訳者を目指す初学者向けなのかによっても異なってきますが、最終的にこの辺りで落ち着くのではないかというラインを提示したいと思います。

辞書は何種類買えばいいのか

明確に何種類とは言えませんが、プロであれば10種類程度の辞書を串刺し検索し、加えて3-4種類程度は紙の辞書でも調べるというのが一応の目安です。

初学習者がいきなり多額の投資するのは難しいと思いますが、無料のネット上の辞書や1~2種類の辞書で勉強することはお勧めできません。なぜなら、最初にちゃんとしたやり方をマスターしておかないと後でその癖を修正することが難しくなるからです。

辞書の種類(一般)

一般的に用いられている定評のある辞書は買って下さい。具体的には研究社の英和大辞典国語辞典ジーニアスリーダーズ+プラス海野さんの辞書小倉書店(3点セット)などです。

英英辞典、シソーラスもありますが、最初はネットを活用して、実力がアップしてきた時に購入すればよいと思います。上級者はあれもこれもと薦めてくるかもしれませんが、言われるがまま全部の辞書を購入していたら大変です。

以前は、Epwing形式で統一されていたため多くの辞書を一つのブラウザで串刺し検索することができました。ですが、違法コピーの問題に対応するため各メーカーが独自規格を打ち出したことから、複数のブラウザを使わざるを得ない状況にあることも辞書選びを難しくしている1つの要因となっています。

代表的なブラウザとしては、 Logophile と LogoVista があり、こちらはLogophileに組み込んであるわたしの辞書一覧です。

LogoVistaは確かに各種専門分野に対応した辞書が豊富に用意されているのですが、ネットで公開されているフリーの辞書などは使用することができないため、翻訳者としては、まず使用できる辞書の種類が多いLogophileで辞書を揃え、それで足りない分をLogoVistaで使用することをお勧めします。

そして、こちらが「LogoVista辞書ブラウザ」に組み込んで実際に使っているわたしの全辞書スクリーンショットです。

プロの翻訳者ならこのような代表的な辞書は一通り所有していますが、これをいきなり全部揃えるのは経済的にも大変だと思いますので、学習段階では代表的な辞書を揃えておけばよいと思います。

なお、 Logophile・ LogoVista 両ブラウザでも対応できない独自の検索仕様となっている辞書もありますので。辞書を選ぶ場合には、使用するブラウザを確認したうえで購入するようにして下さい。

辞書の種類(産業翻訳者・特許翻訳者向け)

1の小倉書店の辞書については、持っているべきですが、専門用語である2と3については、一度に全部揃えるのは大変なので、自分が選んだ専門分野から揃えていくようにしましょう。

1.小倉書店(http://www.ogurashoten.co.jp/ichiran.html)の3点セット;

  • 自然科学系英和大辞典
  • 自然科学系和英大辞典
  • 科学技術論文、報告書その他の文書に必要な英語文型・文例辞典

2.日外アソシエーツ(http://www.nichigai.co.jp/)の専門用語対訳集シリーズ;

  • CD-専門用語対訳集 機械・工学17万語 英和・和英
  • CD-専門用語対訳集 化学・農学11万語 英和・和英
  • CD-専門用語対訳集 建築・土木10万語 英和・和英
  • CD-専門用語対訳集 バイオ・メディカル22万語 英和・和英
  • CD-専門用語対訳集 ビジネス・法律16万語 英和・和英

3.株式会社アイアイエス(http://www.iis-inc.co.jp/cdrom/)の業界別専門用語集;

  • 汎用技術用語集
  • 鉄鋼・金属用語集
  • 自動車総合用語集
  • 電気・電子・半導体・IC・液晶用語集
  • 機電用語集
  • ガラス・紙・パルプ・建材用語集
  • 産業用ロボット・搬送用語集
  • バイオ・生化学用語集
  • 粉体工学・量子工学用語集
  • 自動車関連用語集
  • エネルギー関連用語集
  • 環境関連用語集
  • 医療 (心臓ペースメーカー) 用語集
  • 特許用語集
  • 財務・経理・保険・証券・金融用語集
  • 広告・マーケティング用語集
  • 品質管理用語集
  • 経営管理用語集
  • 営業・流通用語集
  • 人事・総務用語集
  • ナノテクノロジー関連用語集
  • 医学用語集

AIソフト・機械翻訳ソフトを使った訳語確定法

少し変わった辞書の引き方としては、ネットにあるAIエンジンを活用したり、機械翻訳ソフトを活用する方法があります。また、医学翻訳専門の対訳集である「イートモ」の検索機能を活用する手もあります。

AIソフト

以下が代表的な3つのAIソフトですが、「原文」に調べたい語句を入力し、対応する「訳文」を得ることで辞書替わりとして使用することができます。
(以下、各AIソフトの入力画面を表示しておきます)

1.DeepL(https://www.deepl.com/translator

2.Google翻訳(https://translate.google.co.jp/

3.みらい翻訳(https://miraitranslate.com/

AIソフト(AIエンジン)は、本来は「文章」や「ファイル」を一括処理するためのものですが、上記のように辞書替わりとして用いることも十分可能です。

参考記事:AI翻訳の精度ってどれくらい?翻訳者が特許明細書を使って徹底解説!

機械翻訳ソフト

株式会社クロスランゲージ(https://www.crosslanguage.co.jp/)から発売されている翻訳ソフトには様々なものがあり、例えば、特許文専用のPAT-Transer V14には、専門語辞書:467.5万語、総語数:912.5万語が搭載されています。

それ以外にも、ビジネス・科学技術分野、医学・薬学分野、英文契約書などの
技術翻訳の各分野に対応したものが販売されていますので、自分の専門分野を決めてから買い揃えることをお勧めします。

参考記事:機械翻訳と自動翻訳の違いや、機械翻訳の精度について翻訳者が徹底解説!

医学系訳例集(イートモ)

イートモは、医学翻訳者が実務経験をもとに重要表現を、英日ペアで収集・メンテナンスした用語集です(http://i-honyaku.life.coocan.jp/iitomosite/index.htm)。医薬翻訳の需要の高さから、特許翻訳から医薬翻訳にシフトあるいは併用する翻訳者も増えており、将来的に医薬翻訳の分野にも挑戦してみようという方にはお勧めです。

翻訳者が辞書を有効活用するためのPC環境

辞書ブラウザが複数開いた状態で串刺し検索をするとなると、大型ディスプレイが必要です。プロの翻訳者の翻訳環境としては、マルチディスプレイが普通で、3つのディスプレイを組み合わせて作業効率を上げている人も多くなりました。購入するディプレイやビデオカード、接続方法や配置方法についてはPCを販売している会社のサイトにてご確認ください。

まとめ

翻訳業で食べていきたいなら、代表的な辞書(研究社の英和大辞典、国語辞典、ジーニアス、リーダーズ+プラス、海野さんの辞書、小倉書店(3点セット)など )からいくつかを選び、あわせてその検索ソフトを用意してください。

そして、くし刺し検索等を活用して、文脈に合致した用語を選択できるようにしましょう。そのためにも、まずは電子辞書と紙の辞書に馴染んでいくことが大切です。

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