フリーランス特許翻訳者の年収・単価とは?なる方法や仕事の獲得方法についても解説

フリーランスの産業翻訳者から特許翻訳者へと移行した経験から、フリーランスの特許翻訳者の年収・単価および 仕事の獲得方法について解説したいと思います。

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まず、「フリーランスとは何か」について最初に確認しておきましょう。なぜそうすることが大切かというと、フリーランスは会社員とは全く違う生き方 を選択することになるからです。

そもそもフリーランスとは、会社や団体などに所属せず、仕事に応じて 自由に契約する人のことです。個人で契約に基づき仕事をしている人のことを指すことが多く、基本的には契約に基づいて報酬を得られるだけ のスキルを保有していることが前提です。

会社員と異なり、相手の求めるスキルレベルを保有していない場合、1円も稼げないということになりかねません。逆に、自分の能力レベルに見合う適性な報酬を得られるように交渉する能力がなければスキルの安売りということにもなりかねません。

ですから、自分の能力レベルが現在のマーケットにおいて持つ価値がどれほどのものなのかを調査し、常に相場を把握して「適性な報酬」を獲得し続けるだけの能力が必要です。

フリーランス特許翻訳者の年収及び単価とは?

フリーランスの特許翻訳者と、社内翻訳者、特許事務所で勤務する場合の年収比較ですが、稼いでいる人といない人の差がかなり大きいため、「年収」を比べることに意味はなく、いくら稼げるかはあくまで個人の実力次第です。

ただ、社内翻訳者や特許事務所の翻訳者の場合、固定給から能力給へのシフトもあって下位と上位の年収は広がる傾向にあるとも言われており、この点は普通の会社員と同様です。

フリーランス特許翻訳者の平均年収とは

フリーランスは、その本人が保有するスキルを契約に基づいて仕事の成果に変えて、それに基づいて報酬を得るわけですから、平均というものがあまり意味を持ちません。

あまり母数の大きいデータではありませんが、翻訳者の平均年収が500万~600万で、最も人数が多いのが「300万円未満」、次に多いのが「300万円以上400万円未満」という調査結果があるようです。このデータからも分かるように、平均以上の年収を稼いでいる一定数の人が、平均値を押し上げている形になっているのは会社員の場合と同様です。

自称特許翻訳者と言っても、開店休業状態で年収0円の人もいれば、一千数百万の人もいます。要は、いくら稼げるかは本人のレベル次第であり、特許翻訳者を自称する人の年収を単純平均することに意味はありません。特許翻訳者になったからといって平均年収が約束されているわけではありません。平均値がほとんど意味を持たない世界、それがフリーランスだといえるでしょう。

フリーランスと社員の年収比較

上に述べたほうに、「フリーランス翻訳者」の平均年収というものはあまり意味はないわけですが、「社員翻訳者」の場合はどうでしょうか。

この場合も、平均年収にあまり意味はありませんが、一般事務と比べると2割増しくらいのイメージがあるかもしれません。ただ、派遣なのか正社員なのかという就職形態、固定給か業績給かの勤務形態からの違いがあります。一概にそうだとは言えないところです。

派遣の場合は、期間限定で「時給幾ら」の仕事が多く、正社員と異なり長期にわたって安定して仕事が約束されることはないようです。仮にフルタイムができるほどの仕事量がなければ、週のうち3-4日だけの勤務となります。また、毎日8時間勤務とは限りません。一日4時間勤務となるかも知れません。となると、時給換算での年収は激減することになります。

これに対して、正社員の身分は相対的に安定しているといえます。特に、翻訳関連の仕事に特化した会社であり翻訳ニーズが十分あれば、正社員としてフルタイム勤務できるかも知れません。

しかし、翻訳業務だけで勤務時間が埋まらない場合、つまり翻訳が業務の一部に過ぎない場合には、翻訳以外にさまざまな仕事をこなす必要が出てきます。この場合は、採用時の条件として翻訳以外の業務も羅列してありますので確認が必要でしょう。

また、本来はフリーランスとして在宅で行う業務を社内で時給換算で行う仕事もありますので、社員翻訳者(社内翻訳者)と言っても、業務内容・勤務形態はさまざまであり、一律に年収いくらとは言うこと自体、非常に困難です。

加えて、正社員で社員翻訳者となっても、昨今の業績主義・実力主義の傾向の中で、社員翻訳者とフリーランス翻訳者の立場が「接近」しているため、社員翻訳者のメリットであった「安定性」が失われつつあるとも言われており、年収比較がさらに無意味になりつつあるといえるでしょう。

いずれにせよ、事前に十分な情報収集を行い、労働条件を確認するようにしましょう。翻訳者だからいくら稼げるはず、正社員だからいくら稼げるはずという考えは危険です。

正社員~翻訳会社と特許事務所の年収比較

特許事務所との比較においても同様で、事務所の勤務形態・職種・報酬形態等が一律ではありませんので、単純平均することにあまり意味がありません。

特許事務所から直接仕事を獲得できれば、翻訳会社で抜き取られるマージンがないから受注単価が高いと評されていたこともありますが、そう単純な話しでもありません。

あくまでも個別具体的な事例を精査して、自分がどのような勤務形態を望んでいるのかを中心に考えたほうが賢明です。高い年収には高いだけの理由があります。自分の生活実態に合わないような仕事に応募しても結局続けられなくなってしまいます。

フリーランスの特許翻訳者になる方法

翻訳者のトライアルに合格する方法

通常はこのルートから仕事を獲得することになりますが、昨今はトライアルのレベルも上昇していますし、加えてAI翻訳の登場により、トライアル合格時の評価が上位でなければ低レートだったり十分な仕事量が得られず仕事が途切れがちになったりします。

極端な場合、いずれ仕事が依頼されなくなってしまいますし、翻訳会社が定期的にトライアルを実施している場合、より使いやすい・専門分野がマッチした候補者が出てきた場合、自分の椅子は簡単に奪われることになるでしょう。

また、仮に依頼があったとしても、合格時の評価が低いと低レートの翻訳者の位置づけに甘んじることになり、低年収になります。これを避けるためには、しっかりとした準備をして、「高評価」でトライアル突破することが大切です。

昨今、トライアルだけを突破すればいいという指導をするスクールなどがあるようですが、トライアルに突破してもその後の「継続的な受注」に結びつかなければ勉強のための投資が1円も回収できないままとなってしまいます。

翻訳チェッカーから始める方法

従来はこちらのルートもそれなりに用意されていました。しかし、AI翻訳の登場により、チェッカーとは名ばかりのMTPE(Machine Translation Post-Editing)要員だったりしますので採用されたとしても契約内容をじっかりと確認することが大切です。

従来のチェッカー業務では、上級翻訳者の翻訳を見て学べる機会がありましたが、最近では初心者にはPE(ポストエディター)を担当させる翻訳会社も増えているようです。その場合でも、トライアル合格時は「翻訳者として合格」とされていることもあるので、実際に依頼された仕事が翻訳業務なのかどうかは確認が必要です。

本来はMTPE案件は実力者がやるべきなのです。しかし、翻訳会社が「アイミツ」で仕事を獲得するために無理やりコストダウンをすることとなり、そのためのツールとしてAI翻訳を利用するようになって以降、色々と問題が発生しています。

機械翻訳された意味不明な訳文をいくらチェックしても、ちゃんとした訳文にすることはできませんので、結局「訳し直し」が必要となります。このように、仕事の「内容」が本来のチェック業務から大きく外れているにもかかわらず、チェック業務の「名目」で非常に安価でやらされてしまう等の事象が業界では起きています。訳し直しが必要なMTPEは、低レートの上、時間がとられストレスも大きいため注意してください。

もし、このルートから入るならちゃんとした訳文をチェックできるような仕事なのか、そういうことがちゃんと理解できている翻訳会社(クライアント)なのかを事前に慎重に確認することが大切です。そうでなければ、永遠に安いチェック要員としてぼろ雑巾のように使い捨てされてしまいます。

フリーランス特許翻訳者の仕事の獲得方法

仕事獲得は、ネット情報・個人的なコネクション・イベントなどを活用して「トライアル」に応募してそれを上位で突破するのが王道です。

翻訳会社の講座を受講するとお仕事紹介がありますよという謳い文句にあまり期待しないようにして下さい。高年収で稼働するには高いスキルセットが必要です。誰かが旨い話を運んでくれるほど世の中は甘くはありません。

フリーランス翻訳者のメリット・デメリット

フリーランスは社員に比べると不安定というのが相場でしたが、正社員の契約社員化や業績主義の導入・徹底などにより雇用はメルトダウン化しつつあります。また社員とは言っても様々で、契約社員や派遣社員となるともはや、フリーランスとの安定性の差はあまりないと言えるでしょう。

フリーランス翻訳者の大きなメリットとしては、自分で仕事相手や仕事内容を選べるという点でしょう。ただし、これには「選べるだけの実力がある」のが前提です。

対するデメリットとしては、仕事以外の付帯業務を全部自分でやらないという点でしょう。仕事のための装備は全部自前で揃える必要があり、PCや辞書、書籍やデスク、椅子や仕事部屋の確保などにそれなりの出費が伴います。加えて、税金や仕事開拓、入出金の管理など、会社なら他部門がやっていたような業務一切を自分がすべてこなさなければなりません。

これと関係しますが、問題解決は基本的に自分ひとりでやらなければなりません。外部の専門家にアドバイスを求めることも可能ですが、外部リソースの利用はタダではありません。社内なら簡単に聞いて解決できたことが簡単かつ無料でできなくなります。例えば、営業ツールとしてブログを立ち上げ記事を書くことも自力で行っていく必要があります。

特許翻訳の専門分野の見つけ方

専門分野を見つけるというと、何かどこかにあなたの専門分野が転がっていて
それを見つけるという発想になりがちですが、これは違います。

まずマーケットを見ることです。そして、マーケットを分析して一番報酬が高くて仕事も安定的に発生する分野を専門分野にしてください。あなたの好き嫌いなんて関係ありません。現在だと「バイオメディカル系」の仕事が多いようです。

ただ、はやりの専門分野は時代と共に変化していきます。ですから、もし自分の専門分野の需要が少なくなってきたと感じたら、需要が見込める分野へシフトするようにして下さい。そのためにも、それが出来る実力を兼ね備えた「マルチ分野対応型」の翻訳者を目指していくべきです。そのためには、機械・電気電子・化学などのレガシーなカテゴライズではなく、すべての案件を取り込めるだけの幅広い基礎学力が必要となります。

特許翻訳の面白さとやりがい

特許翻訳は、英語力(語学力)、日本語力、調査力、ITスキル、専門知識、特許制度の知識、判例知識、法律知識などを総合的に運用する力が問われる翻訳分野です。そのベースにあるのは、論理力、読解力、説明力、調査力、図解力などです。さらにコミュニケーション能力、営業力、交渉力、スケジュール管理力、体力(健康)が加わります。

ということは、特許翻訳で実力者になれば他のビジネスへの展開も可能だということ。不透明な日本にあってこれは武器になります。考え方次第ではやりがいだらけといえるでしょう。

特許翻訳者を目指す方へ

2-3年は死に物狂いで努力する覚悟・気構えも持ってください。翻訳業界は厳しさを増しており、1か月や3か月でそれなりに稼げるようなお気楽な仕事ではありません。トライアル合格ですら無理です。

ですが、スキルをきちんと身に付けて仕事の途切れないフリーランス翻訳者になることができれば、会社や住む場所等に依存せずに働くことが可能となります。実際、私が運営する翻訳講座の受講生や卒業生の中には、コロナ禍での満員電車や雑踏を避けられる地方移住を実現させた人もいらっしゃいます。

フリーランスは自由である反面、不安定だと言われてきましたが、安定が一番のメリットとされてきた会社員も、勤務していた会社に「個人事業主」として働く時代に突入しており、会社員とフリーランスの境界はかなり曖昧になってきていると言えるでしょう。

特許翻訳者を目指す人の動機も、以前は子育てをしながら自宅で出来る仕事がしたいという女性の希望者が多かったのですが、最近では、コロナ禍で自分の会社の将来性に危機感を持っている方や、定年後を暮らしを見据えて準備を始める方など、年齢や性別に以前とは異なる傾向が出てきているのも翻訳者を目指す人の特徴の1つとして挙げられます。

ただ、翻訳単価に関しては、初心者と上級者(トップレベル)との間で、10倍程度の差があります。まずは中央値でエントリーして、数年かけて上位クラスのレートに上げていけるように努力すべきです。

翻訳者の年収は、(翻訳レート)×(翻訳速度)×(稼働率)で算出されますので、年収を上げるためには、① 定期的に新しいトライアルに挑戦しつつ翻訳レートを上げつつ、② 各種CATツールなどを活用し、翻訳メモリや用語集の再利用率を上げつつ処理速度を向上せて、③ 有料無料の各種ソフトやマクロを活用して翻訳品質を維持しながら依頼者の信頼を獲得し、継続的に仕事を受注して稼働率を上げる方法が王道です。

繰り返しになりますが、大した勉強もせずに簡単に稼げるほど翻訳者の仕事は甘いものではありません。プロの世界で活躍できるのは上位数%だけとも言われています。しかし、それだけの努力をすれば報われる仕事だと思います。

正社員の地位も昔と比べて脆くなってきておりフリーランスとの差もかなり小さくなってきています。なので、今の仕事に不安を感じている方、キャリアチェンジをしたい方、定年後の仕事にしたい方、そして在宅で仕事をしたい方は、ぜひ翻訳者を人生の選択肢の1つとして考えて頂きたいと思います。

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