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プロの翻訳者になるためには、トライアルを突破する必要がありますが、そもそもトライアルとは何なのか。
そして、このトライアルに突破してプロの翻訳者になるには具体的にどうすればいいのかについて、誤解している方が非常に多いです。

そこで、プロの翻訳者としてのキャリアをスタートさせるために、避けては通れないトライアル突破法についてお話ししたいと思います。

翻訳者になるためのトライアルとは何か

トライアルとは、翻訳会社が受注した案件を任せられる人かどうか、つまり、一定レベルの品質水準を満たす
翻訳者かどうかを判定するために、各翻訳会社が応募者に課す試験問題のことです。

会社毎に実施するという意味では、入社試験と同じようなものです。
なお、このトライアルを「特許事務所」や「クライアント」が直接実施する場合もありますが、
ここでは実施主体が「翻訳会社」である場合を前提にお話したいと思います。

巷では、ある「認定試験」に合格したら、どこの翻訳会社も無試験で仕事が受注できるような謳い文句で、
受験者の募集をかけている認定試験運用会社もあるそうですが、現実にはそのような試験合格者を
無試験で受け入れている翻訳会社はほとんどありません。

あくまで会社ごとにトライアルを受ける必要があるのであり、会社ごとに個別のトライアル対策が必要となってくるのです。

トライアル対策のやり方

各翻訳会社ごとにトライアルを突破する必要がありますから、傾向と対策も当然、「応募先ごと」に研究する必要があります。
産業翻訳中心なのか特許翻訳中心なのか、特許翻訳中心であっても、化学中心なのか機械中心なのか、それとも
バイオ中心なのかによって対策が異なってくるはずです。

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例えば、自分の専門が「化学」なのに、わざわざ「機械」専門の翻訳会社のトライアルに応募することは普通ないと思います。

しかし、それでもあえてそういう応募をするのなら、それ相応の理由があるはずです。
例えば、「翻訳案件が大量にある」「翻訳レートが平均以上」「大学時代の専攻は化学だが機械メーカーに就職し、
機械系の研究開発に従事してきた」「趣味で自動車のエンジンいじりをやってきて特にその分野に詳しい」等です。

それらの理由がないのに闇雲に応募書類を送りつけても、相手はその分野の知識が応募者にはないと判断して、
相手にしない可能性が高いです。

トライアルを突破するために意識すべきプロセス

まずは、トライアルを突破するために必要なステップを整理しましょう。ある「料理」を作ろうと思ったら、
おそらく以下のような手順を踏むと思います。

料理に必要な「材料」が手元にあるのか調べ、もし不足する材料があればそれを揃えます。
さらに、料理する道具も必要ですし、レシピも必要です。これら全てが揃っていることを確認して
料理スタートです。トライアルもこれと同じです。

どの分野で応募するのか、応募する分野の案件が多そうな翻訳会社はどこか、
過去にどのような問題が出されているのか、その分野の知識が十分か、
翻訳作業に必要な翻訳環境(ハードやソフト)が揃っているかなどを確認します。その上で、
応募書類(CV)を完成させ、メールライティングのお作法に則って、翻訳会社にトライアルの応募をします。

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送付後は、相手からトライアルが送られてくるのを待ちますが、しばらく経っても連絡がなければ、
応募先を増やすCVを見直して相手にとってより魅力的な応募者であることをアピールします。

トライアルが送られてきたら、納期までに課題を完成させ、相手の希望する形態で返却し、合否判定が出るのを待ちます。

結果、合格できれば、正式に翻訳者として登録され、応募した分野や、翻訳会社がこの人なら対応できるだろうと判断した仕事が
クライアントから来れば、あなたに仕事を依頼してくるはずです。こうしてあなたのプロの翻訳者としてキャリアがスタートするのです。

「英語の達人」を目指すな

あなたは、「料理の鉄人」という番組を覚えていますか?「鉄人」と呼ばれるレギュラー出演者のシェフ達と
「挑戦者」として登場するゲストシェフとが、特別キッチン・スタジオ内の器具や食材を使い調理した料理を
ゲストおよびレギュラーの審査員に試食してもらってその評価を競う番組です。

番組の見どころは、テーマ食材が、調理開始の直前まで「秘密」になっているところでした。
素材によっては、自分の得意やジャンル、例えば中華料理にしてしまうと不利な場合があるので、
料理人にはイタリア料理、フランス料理、中華料理、日本料理から創作料理まで幅広く対応できる力が求めらます。

翻訳者になりたい人を見ていると、「英語の達人」であったり、
あらゆる分野に対応できる翻訳者を目指している人が多いという印象を持っています。

まず、TOEICは「900点後半」がとれるまで頑張る。英検はできれば「1級」せめて「準1級」まで頑張る。
民間がやっている「なんとか認定」も頑張る。できれば「一番上のクラス認定」まで履修する。
さらに、有名な翻訳スクールの上位クラスの卒業証書を揃える、

このように、自分の考える「凄いCV」にしてからトライアルに応募しようとする人が少なからずいます。

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自分の自信のなさを「肩書き」で補填したいという気持ちは分からないでもありませんが、これは時間の無駄です。
どんな分野の翻訳案件でも完璧にこなせる「英語の達人」になってからトライアル受験しようとする人は、
そういうものに「自身」のよりどころを求めたいのだと思いますが、これは人生の浪費ですので即刻やめて下さい。

トライアルと大学入試とは違う

意外と理解されている人が少ないのですが、翻訳会社のトライアルは大学入試の英語の試験とは違います。
大学入試では、ある程度どこの大学であってもトップで合格できる英語力みたいなものを想定して
勉強すると思いますが、それと同じように翻訳の勉強を初めてしまうと迷走してしまいます。

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なぜかというと、翻訳会社ごとに募集している翻訳者のタイプは異なりますし、翻訳会社が得意とする専門分野も異なるからです。
自分が一番やりたい分野の案件を沢山持っている翻訳会社のトライアルに合格できれば、それで済む話であって
あらゆる翻訳会社のトライアルを突破できることや、あらゆる分野に対応できる翻訳者になる必要はないのです。

特許翻訳であれば月に2~3件受注して、数十万円の報酬を継続的に得られればよいのであって、それ以上は、いくら引き受けたくても物理的に処理できません。依頼されても断るしかないのです。

したがって、安定受注のために、2~3社と契約することに意味はあっても、50社、100社のトライアルに合格し、登録翻訳者になる必要はどこにもないのです。このように、何のための勉強なのかを常に意識しないと、漫然と英語の勉強に「時間」と「お金」を使ってしまいますのでくれぐれもご注意ください。

トライアルに合格しただけでは足りない

ときどき、「トライアルに合格したのに仕事が来ません」という人を見かけます。理由はいくつか考えられますが
まず考えられるのは、翻訳会社が受注している仕事の中にあなたに依頼する適当な案件が存在しない場合です。

これは、そもそもトライアルに応募する「翻訳会社の選定」が間違っていたとが考えられますので、
あなたの得意とする分野の仕事を定期的かつ大量に受注している翻訳会社のトライアルに応募しましょう。

次に考えられるのは、あなたのトライアルでの評価です。仮に2軍として登録された場合は、仕事がたくさんあって
レギュラー陣だけでは処理しきれないという事態でなければ、まずあなたに仕事が振られることはないでしょう。
つまり、トライアルは突破するだけでは不十分で、上位で突破する必要があるのです。

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漫然とトライアル合格実績だけ積み重ねても意味はありません。仕事を受注し「報酬」を受け取って初めてプロと言えるのです。

まとめ

プロの翻訳者として仕事を受注するためには、トライアルはどうしても越えて頂かなければなりません。
ですから、自分が一番やりたい分野の案件を沢山持っている翻訳会社見極めて、そこのトライアルに合格するよう準備をして下さい。

そして、ただ合格するのではなく、プロとしてのキャリアをすぐにスタートさせるためにも、上位で合格することも忘れないで下さい。

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特許翻訳者になりたいという人に、

これまでに何件ぐらい明細書を読みましたか?

と聞くと、

「まだです。まだ明細書を読んだことがありません。これからです。」
と答える人が多いのに驚かされます。

毎日、特許明細書の翻訳をするのが「生業」の特許翻訳者を
目指しているのに、これはどういうことでしょうか。

更に驚くのは、特許翻訳の勉強を開始して何年も経つというのに
まだ明細書を読んだことがないという人が少なからず存在することです。

彼らは何をしているかというと、

ずーっと英語のお勉強をしているんですね。
これでは、特許翻訳者になれるわけがありません。
トライアルに合格できるわけがありません。

一流のバッターになりたい野球少年が、
一度もバットを振ったことがないというのと同じですから。

ただ、だからと言って闇雲に明細書を読もうとしても読めません。
特許明細書の読み方にはコツがあるのです。

この点、「定型表現」を切り口に読み方を解説したり、
部分的に読んだことで、明細書を読んだことにしている場合もあるようですが
これでは当業者の読み方に迫ることはできませんし、
優秀なサーチャーもそんな読み方はしません。

本記事では、これから特許翻訳者になりたいという人向け
特許明細書の読み方」について説明させていただきます。

これまでそれなりの数の明細書を読んで来たけれども、
自己流でうまく読み込めてないのではないか?
という不安を抱えている人にも役立つ内容となっておりますので、
是非最後までお読みください。

<関連記事>

特許明細書を専門知識に依存せず読み取る方法

特許明細書を読むために必要な専門知識の深さ

特許明細書を読むための化合物命名法

そもそも特許明細書とは何か

こちらには、「特許出願人が、その技術分野の専門家が発明を
実施することができる程度に十分に、発明を説明した書類である」
との説明がありますが、

この点については、特許法1条についての特許庁のページ
参考に考えると分かりやすいと思います。

(参照)※太字部分は本記事作成者による。

特許法第1条には、
「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し
もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。

発明や考案は、目に見えない思想、アイデアなので、
家や車のような有体物のように、目に見える形でだれかがそれを占有し、
支配できるというものではありません。

したがって、制度により適切に保護がなされなければ、
発明者は、自分の発明を他人に盗まれないように、
秘密にしておこうとするでしょう。

しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することが
できないばかりでなく、他の人が同じものを発明しようとして
無駄な研究、投資をすることとなってしまいます。

そこで、特許制度は、こういったことが起こらぬよう、
発明者には一定期間、一定の条件のもとに特許権という
独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、
その発明を公開して利用を図ることにより新しい技術を
人類共通の財産としていくことを定めて、
これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。

ものすごく端折って言うと、

「発明したら公開してね。その発明は国が保護してあげる。

その代わり、ライバル企業はその発明を参考に
もっと良い発明をするかも知れないけど、お互い様だから、
参考になるところは参考にどんどん競争して
良い製品開発して工場建ててばんばん売って儲けてね。

儲かったらたんまり納税してもらうね。」ってことです。

もっと上品に言うと、日本弁理士会のページにあるように、

「発明を秘密にしておくのではなくて、
世の中に公開するとともにその代償として特許権という独占権を
得ようとするのが、特許制度の趣旨及び目的になります。

つまり、私はこのような発明をしましたので世の中に
その技術内容を公開しますという役目を負っているのがこの明細書です。」

この明細書の趣旨に沿って、以下の様式が定められています。

特許明細書の構造

願書の様式については、
1.願書等様式(通常出願)(1)通常出願 特許

特許出願書類:明細書の記入例については、
特許出願書類:明細書(平成21年1月1日以降)の記入例
をご覧ください。

次に、「特許の上手い読み方」として、
弁理士会・東海支部のページに以下のような内容が記載されています。

アウトラインと思われる部分だけをわたしが抽出しました。

● 「特許請求の範囲」は後回し(最後に読む)

● 「要約書」から見る(代表図面も一緒に)
→発明の概略を知る

●「明細書」は従来の技術(背景の技術)から発明が解決しようとする課題を見る
→目的を知る

● 課題を解決するための手段
→構成、作用、効果に着目

● 実施例
→必要部分だけ、特徴的な部分を探す

● 「発明の概要」を「特許請求の範囲」とすり合わせる

ポイントは、最初から順番で読まない
発明の概略の把握に努めるということです。

当業者が短時間で読める理由

当業者やサーチャーは、数秒からせいぜい数分で
特許明細書のコア(キモ)を読み取ることができます。

図面と請求項を軽くスキャンするだけで、「ああ、あれか。」と
エッセンスを抜き取ることができます。

ここに明細書読解のヒントが隠されています。

ここにこれから特許翻訳者になろうという人が、
特許明細書の読み方をマスターするためのヒントが隠されています。

彼らはどこをどういう順番で読んでいるのでしょうか。
そして、その際にどのようなことを考えているのでしょうか。

因果関係から考える

これから特許翻訳者になろうという人・ゼロから始めようという人が、
上級者の真似をするのは困難です。ハードルが高すぎます。

当業者であれば、タイトルだけで発明の概略が把握できます。
そうでない場合も、タイトルと出願人(会社名)・発明者を見ただけで
概略が把握可能です。

普段から、学会等でライバル会社の動向は注視しているわけですから、
「ああ、XX社のYYさんか。タイトルは、~か。ああ、あれか。
だいたいの内容は想像できるな。」で終わりです。
図面と請求項すら見る必要がありません。

しかし、それができない人はどうしたらいいでしょうか。

物事には因果の流れがある

ポイントは、因果関係です。

企業は研究開発のために大金を投じています。
その投入したお金はどこかで回収しなければなりません。
趣味や道楽で研究開発する企業は存在しません。

その企業にとって解決すべき「問題」があり、

その「問題」を解決することで製品の「競争力」が向上し、
マーケットから多くの「利益を回収」でき、
その「利益の一部」をまた次の研究開発費に「投入」するという
サイクルになっているわけです。

そして、当該企業にとって目指すべき研究成果があるとすれば、
その成果によって解決されるべき問題が存在し、
その解決すべき問題は利益を生む自社製品あるいは
これから製品化しようとするものと関連したものであることは
容易に想像できるでしょう。

だから、当業者でない人が特許明細書を読む際に最初に確認すべきは、
「解決すべき課題(問題)」とそれがなぜ設定されたかという
背景」に関連する部分であることは明白です。

問題解決、そしてその間に「発明の成果(効果)」が挿入されるはずです。

全体の流れは、「背景(業界の動き)→問題発明の成果(効果)→解決
であり、問題解決までの道筋に存在するのが基礎理論(専門知識)に
裏打ちされた論理ということになります。

自動車メーカーが燃費向上させたエンジンを開発する目的は、
ユーザーへの価値の提供であり、
ユーザーがその価値を認めてくれることによる
自社製品の選択→自社の売り上げ増→利益増大ですから、
この場合は、問題設定は容易かつ明白であり、
発明の中心は、燃費を向上させる手段追求に帰着します。

しかし、発明によっては「なぜそのような問題設定がなされたのか?
が当業者以外には理解困難なものも存在します。

その場合、当業者が共通して持っている知識、
常識部分については補充するしかありません。

では、この常識はどのようにして獲得すべきでしょうか。

ニワトリと卵

逆説的ですが、特許明細書が読めないのは特許明細書を読まないからです。

特許明細書の中には、特許文献・非特許文献の引用があるはずです。
それを読めば、発明者が着目しているライバル企業及び
そのテーマで自分と競っている研究者が分かります。

研究開発のテーマは共通しているわけですから、
数件~十数件まとめて読めば、おおよそどういう会社が
どういうテーマに群がって競合しているかは分かるわけです。

あとは、解決すべき問題への切り込み方(アプローチ)に
どの程度の振れ幅があるかどうかを確認し、
それを中学~高校で学んだ科目(数学、物理、化学、生物など)に
登場する基礎理論に照らし合わせて読み解く作業となります。

当業者が特許明細書を瞬時に読み解けるのは、
この知識部分及び論理の運びが十分備わっているからです。

だから、それが不足している人が特許翻訳者を目指すのであれば、
この欠けている部分を補充するしかありません。

この補充作業を端折って、
英文法・構文や頻出パターン・一括置換等でごまかそうとするから、
おかしな翻訳文をはき出してしまうのです。

特許庁DBに公開されている訳文をチェックしてください。
大変残念なことですが、誤訳のオンパレードです。

特許明細書をちゃんと読めるようになるには、
ある程度の数の特許明細書を読むしかないのです。

文系のハンデはあるか

あるかないかと問われれば、「あります」としか答えられません。

が、文系の人が思っているほど、絶望的な差が理系との間に
存在するわけでもありません。

むしろ、論理力の差が大きいと思います。

普段から、なぜそうなのか、裏取りして納得するまで
調べるクセが付いているのであれば、さほど苦労しないはずです。

むしろ、問題は時間でしょう。

それなりの時間投入は必要です。
理系が投入した数年間を無かったことにするワケにはいきません。
あるとすれば、その間に理系が身につけた「~的考え方+論理力」を
どれだけ期間圧縮してキャッチアップできるかでしょう。

広さと深さ

本当の難しさは、あるテーマについてどこまで深掘りするのかにあります。

特許翻訳に必要とされる知識の深さを見切る力
独力で身につけることは、極めて困難と言えます。
要不要が文系には極めて見極めにくいのです。

何年も努力しているのにどうも読み方のコツが見えてこない、
という人は「努力の方向性」が間違っている可能性があります。

知識は無限の広がりを持ちます。深さも底なしです。
それを特許翻訳者に必要な範囲で見切ることの難しさ。

おそらく特許翻訳者をゼロから育てる上で、これが最大の難敵でしょう。

暗記脳からの脱却

脳が脳たるゆえんは、答えがあるのかないのか分からない状態で、
課題を設定することができることです。

イメージ、構造化し、自己の知識体系・知識空間の中に
対象を持ち込むことで、問題設定及び解決策までの連結部分を導出する力です。

課題設定力・課題解決量の根本にあるのは、イメージする力です。
そして、これは理系だからと言って、必ずしも備わっているとは言えません。
優良特許を出願するために必要なスキルです。

特許翻訳では、この部分の作業は企業(研究者)が
やり終えているわけですから、あとは論理と知識で繋いて
因果の流れに乗せるだけです。足りないのは専門知識ではありません。

すでに終わっている課題設定、課題解決に沿って
構造化し図解化することでそのトレースをしてみることです。

この作業の重要性に気づければ、一定期間の鍛錬によって
特許翻訳者になれるのは当然といえるでしょう。

まとめ

特許明細書を読む上でいくつかのポイントがあります。

まず、量を読むこと。

次に、論理が破綻しないように内容理解に努めること。
知識ではなく、鍛錬こそが重要であると知ることです。

そしてそれらができるようになるには、
おそらく年単位の期間が必要となってきます。

そのまずは第一歩として、特許明細書を読んでみてください。
すべてはそこから始まるのですから。

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追記

受講感想を原文のまま「卒業生の声」として
HPに一部掲載していますのでぜひ読んでみて下さい。

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こちらの「資料請求」から入手できる「講座案内」に
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特許明細書を読むためには、
どの程度の専門知識が必要とされるのでしょうか。

その量と正確さ(厳密さ)について確認しておくことは、
これから特許翻訳者になろうとする人にとって、とても大切なことです。

なぜなら、知識は多ければ多いほど良い、正確であればあるほど良い
というのであれば、果てしなく専門知識を追い求めることになり、
翻訳者に求められる処理量とのバランスが取れなくなってしまうからです。

それどころか、何年勉強しても仕事が始められない
ということになってしまいます。

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競合する翻訳者との「比較的優位」が維持されている限り、
とりあえず仕事は受注できます。問題は、どこまで踏み込むかです。

特許翻訳者は、論文の査読委員のような専門知識は求められてはいません。

翻訳対象に大きな論理破綻がない前提で言えば、
翻訳者には「素早い内容把握」とコンテクスト理解に基づく
正確な翻訳」と「納期厳守」が求められています。

あまりに細部にこだわり過ぎて納期に間に合わないようでは、
プロの特許翻訳者とは言えませんが、逆に、内容を全く読み取ろうとせず
語句の置換作業に終始していたのでは、早晩仕事の依頼がなくなるでしょう。

後者は論外としても、大学・大学院・企業で専門知識を
ブラッシュアップしてきた人が、「潔癖症」で「完全主義」を
追い求めてしまうと職業人として特許翻訳者失格となってしまいます。

では、具体的にどの程度の深さで特許明細書を読めばいいのでしょうか。
具体例を挙げて説明しましょう。

題材とした特許明細書

今回取り上げたのは、以下の特許です。

【公開番号】特開2005-58288(P2005-58288A)
【発明の名称】医療用粘着テープのための粘着剤組成物及び粘着テープ

PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE TAPE AND PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE COMPOSITION FOR MEDICAL ADHESIVE TAPE
WO2005019369 (A1)

特許の大枠を把握しよう

結局のところ、何の特許なのか、
まずやることは特許の大枠の把握です。

一言で言えば何の特許か、どこがキモなのか、ということです。

まずは「課題」分を見てみましょう。

【課題】

高い透湿性と優れた防水性とを同時に有し、剥離時の皮膚刺激が少なく、
繰り返し接着が可能で、匂いがない医療用粘着テープを提供する。
また、高い透湿性と吸水性、保水性とを同時に有し、
剥離時の皮フ刺激が少なく 匂いがない医療用粘着テープを提供する

何=「医療用テープ」であることが分かります。

Content of First aid kit plasters, bandage and pills

となると、治療中という期間限定での使用となり、

その間、皮膚にしっかりと貼り付き、同時に容易に取り外し(剥離)可能で、
その際に皮膚への刺激が少ないこと(皮膚を傷つけたりしないこと)、
余計な匂いがしないこと、透湿性.吸水性.保水性などの特性が
問題となることは、明細書中の続きの文章を読まなくても分かりますので、
読んでいるのは、確認のためということになります。

次に、そのための「解決手段」をみてみましょう。

【解決手段】

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を
架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含む ベースポリマーを
含み、 かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg) は
0℃以下である、 医療用粘着テープのための粘着剤組成物。

成分について、「ウレタンアクリレートオリゴマー」というのが登場しますが、
ここで、構造式や性質を想起できる必要はありません。

化学を専攻した人や細部にこだわる人の中には、
こういう物質が実在するのだろうか、どういう構造をしているのだろうか、
などの疑問を解消すべく徹底的調べようとする人がいますが、不要です。

こういう「潔癖体質」「完全主義」は、
自分の首を絞めることになりますので要注意です。

知識があって不利になることはありませんが、
その知識を使う場所と使い方を間違えてはなりません。

プロというのは、納品レベルを維持しつつ大量処理が求められますので、
「訳質」と「処理速度」にリンクしない作業に余計なエネルギーを
回してはいけません。

ここで翻訳者に求められるのは、

「ウレタンアクリレートオリゴマー」が、
「ウレタン」+「アクリレート」+「オリゴマー」の合成であって、
スペルミスがないことの確認だけです。逆にいえば、その程度の
化学的背景知識は求められているということになります。

次に気になるのは、「前駆体」でしょう。

文章構造から考えて、どうやら「前駆体」というものを
「架橋」「硬化」させると「ポリマー」というのが出来るらしい。

前駆体はポリマーの「前」の段階にある何かだろう、
くらいは解読できると思いますが、ここではそこで止めておきます。

では、最後に「解決手段」の中で取り上げられている
ガラス転移温度(Tg)」を取り上げてみたいと思います。

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上で取り上げた「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「前駆体」は、
中身(組成)についてのものだと推測されますが、

この「ガラス転移温度」は、本明細書が目指す製品の「特性」についてのもの
であると推測され、より発明の本質に関わるものと考えられますので、
専門知識がなくても理解でき、かつこの点について理解できないと
本発明が完全にブラックボックスになってしまう危険があるからです。

ガラス転移温度についてどこまで理解すべきか

では、このガラス転移温度についてどこまで理解すべきでしょうか。
まず、明細書の中に答えがないかという視点で読み進めていきます。

以下のように、本明細書中に「ガラス転移温度」という言葉は、数回登場します。

【請求項1】

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を
架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含むベースポリマーを
含み、かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である
医療用粘着テープのための粘着剤組成物。

【請求項13】

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む
粘着剤組成物前駆体を混合すること、

前記粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して
2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成すること、
及び、前記塗布液を基材上に塗布し、その後、
前記ウレタンアクリレートオリゴマーを架橋もしくは硬化して、
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるベースポリマーを形成させること、
を含む、医療用粘着テープのための粘着剤組成物の製造方法。

【課題を解決するための手段】

本発明は、1つの態様によると、ウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を架橋もしくは硬化して得られる
感圧接着性ポリマーを含むベースポリマーを含み、かつ、
前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である、
医療用粘着テープのための粘着剤組成物である。

本発明は、別の態様によると、上記の粘着剤組成物を高透湿性基材上に有する
医療用粘着テープである。

本発明は、さらに別の態様によると、上記の粘着剤組成物の層からなる、
医療用粘着テープである。

本発明は、さらに別の態様によると、ウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む粘着剤組成物前駆体を混合すること、

前記粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して
2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成すること、
及び、前記塗布液を基材上に塗布し、その後、

前記ウレタンアクリレートオリゴマーを架橋もしくは硬化して、
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるベースポリマーを形成させること、
を含む、医療用粘着テープのための粘着剤組成物の製造方法である。

【0011】

本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は一般的に市販されている
粘弾性測定装置等によって測定される。

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【0013】

ベースポリマー

粘着剤組成物中のベースポリマーはウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を架橋もしくは硬化して得られる
感圧接着性ポリマーを含み、かつ、前記ベースポリマーの
ガラス転移温度(Tg)は0℃以下である。

ベースポリマーの原料としてウレタンアクリレートオリゴマーを用いることで
アクリレートモノマーなどのモノマーがベースポリマー中に残存して
皮膚刺激を生じることを防止することができる。

また、ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)0℃以下であり、
室温(例えば、25℃)などの使用温度よりも低いので、
皮膚に貼りつけるときに、粘着性を有し、また、皮膚形状に追従して
柔軟に変形することができるようになる。

【0031】

粘着剤組成物及び粘着テープの製造方法

本発明の粘着剤組成物は、1態様として、以下のとおりに製造されうる。

まず、ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤などの
原料を混合して粘着剤組成物前駆体を形成し、次いで、粘着剤組成物前駆体を
50℃以上100℃未満の温度に加熱して2000~100000mPa.s
の粘度を有する塗布液を形成する。

この塗布液を基材上に塗布し、その後、ウレタンアクリレートオリゴマーを
架橋もしくは硬化して、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である
ベースポリマーを形成させ、基材上において粘着剤組成物を製造する。

glass-texture-design_gjo8zvtu

このうち、なぜ「ガラス転移温度」が問題になるかについては、
【0013】に答えが書いてあります。

ここから読み取れるのは、ガラス転移温度というのは、ポリマーの柔らかさ
(柔軟性)と関係する。この温度を0℃としたことで体温ではもちろん、
水洗いなどの際、体温より低温になったとしても、接着層の皮膚・体の
凹凸への追従性が保持され、テープがはがれたりしないしないことを
言いたいのではないかという点です。

ガラス転移温度について調べてみる

専門知識の無い特許翻訳者がいきなり辞書や便覧で確認しようとしても、
コンテクスト理解には結びつきません。

まずは、明細書の記述を素直に読んで、何を言わんとしているのかを
推測してみることが大切です。その後で、ネット検索してみます。
そうすると、以下の解説が見つかります。

結晶性プラスチックにおいては、 結晶部分と非晶(非結晶)部分が
存在するが、温度を上げて行くと、 まず分子間力に拘束されない
非晶質部分の分子が動き出す温度(1)に達する。

更に温度を上げて行くと、ポリマーが分子間力で集まった 結晶部分の
分子までも動き出し、すなわちそのプラスチックが溶融する温度 「融点」
(2)に達する。 この時、(1)の温度を「ガラス転移点」という。

また、このガラス転移点以下では、非晶質部分の分子も熱運動しない
柔軟性のない状態、即ちガラス状態となるので、 物性変化の点移転として
そう呼ばれている。

一般的には、非晶質固体において、 ガラス転移を起こす温度をガラス転移点と
呼び、その上の温度域ではゴム状態、 それより低い温度域ではガラス状態となる。
https://www.kda1969.com/words/words_pla_2k_07.htm

「結晶」「非晶」「分子間力」など、
更に分からない言葉が出てきたと思いますが、とりあえず無視します。

最後のところを読み取ると、要するに

ガラス転移点以上ではゴムのように柔らかくなり、それ以外では
ガラス状態、つまり固くなる。」ことが分かり、検索前の推測が
概ね正しかったことになります。

あとは、化合物名や調製方法について解読するためには、
それなりの化学の専門知識が必要となりますが、
ここでの調査も時間が許す範囲にとどめるべきでしょう。

このように考えれば、とても無理だ、読めないと思っていた
化学系の特許明細書も、とりあえず納品レベルでの作業はやれそうな気が
してきたのではないでしょうか。

まとめ

本特許明細書が何を目指しているのか、まずはその大枠を把握しましょう。

そして、その際には、細部に踏み込んで、化合物名から構造や反応式を
考えるようなことはせず、作業に「必要な範囲と深さ」で調査することを
心掛けましょう。

プロの翻訳者には、量と品質を両立させつつ、納期厳守で継続的に
安定した仕事(アウトプット)をすることが求められているのだ
ということをくれぐれも忘れないようにして下さい。

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プロの翻訳者になるためには、各翻訳会社のトライアルを突破しなければなりません。
では、どうやったらこの難関とされるトライアルに合格できるのでしょうか。

実は翻訳者が見逃しがちな盲点があるのですが、これを知らないと
何年も無駄な努力を続けることになってしまうので注意が必要です。

翻訳者のトライアルは一発勝負!

翻訳会社としても大切なクライアントからの仕事を任せる以上、優秀な翻訳者だけを選別したいと思うのは当然です。
ということは、公募してきた人が優秀な翻訳者かどうかの選別が書類審査の段階で始まっています。

日本国内で日本人が応募する場合、応募先はその応募書類に必要な情報が含まれていることを期待しています。
日本語で書かれている以上その文章の正確性や読みやすさなども選考対象となっていると考えられます。

つまり、この書類審査の段階で不合格となる可能性ももあるわけです。書類審査の段階で不合格となった場合には、
応募書類送付後トライアル受験が許可されることはありません。つまり、トライアル課題文は送付されません。

トライアル課題文が送られてきたら、トライアル問題へ挑戦します。そのチャンスは1回限りというのが鉄則で、
何度もやり直し・再提出を認めてくれることはありません。同じ会社のトライアルを再度受験したい場合には、
通常1年程度の期間を空けるところが多いようです。

Opportunity Definition Magnifier Shows Chance Possibility Or Career Position

ですから、できなかった箇所だけやり直して最終的に合格ラインを超えたら合格判定してくれる、なんて
優しい翻訳会社は聞いたことがありません。もちろん、一定期間(1~2年)経過後に再受験を可としている
翻訳会社もありますが、前回のトライアルとは問題が異なりますから、前回の試験問題をそのまま参考に
できることはまずありません。

つまり、「赤本」のような翻訳会社毎の対策資料集が存在しないのですが、このことは考えればみれば当然です。

各翻訳会社は、メインとなる顧客も違えば得意分野も異なりますし、顧客や分野も時代と共に変化するのですから、
一度トライアルに合格すれば、時代を超えてどの翻訳会社も安心して採用できるような試験制度はありません。
ですから、どの翻訳会社も、担当者が自らチェックして納得の上で翻訳者を選別したいのです。

また、昔と異なり、トライアル問題送付から返送まで、短い期間が設定されたり、場合により日数ではなく
XX時間以内に返送、といった時間指定に変わってきたりしています。

※赤本とは各大学・各各部別の大学入試過去問集のことで、教学社(https://akahon.net/)から発行されています。

Time For Success Message Means Victory And Winning

トライアルなんて自宅で挑戦するのだから、ネットも書籍も見放題、時間無制限だからちょっと準備すれば大丈夫
などと甘く考えてはいけません。

トライアルはクセモノがいっぱい

加えて、トライアル問題には各社各様のクセがあります。プロになった後であれば、

「ああ、ここはひっかけだな」
「ここは意地が悪いな」

というクセの分析(見切り)が出来るのですが、これからトライアルを突破しようとする初心者には
なかなかそれを見ぬくことはできません。ですから、何回もいろんな翻訳会社のトライアルに挑戦しては、
不合格を重ねているうちに心が折れてしまう人が続出するのです。

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トライアルを何回か経験すればそのうち慣れてきて、パターンも見えてくれば自然と合格できるだろう、
といった甘い考えは通用しないのです。

スクールで扱っているような「素直な文章」だけが載っているテキストで、一般的な型や約束事を学んでも、
トライアルに埋め込まれたトラップを見ぬくことは困難であって、公開特許にあるミスを自力で発見し、
自力で修正できるぐらいの力がなければトライアル突破は難しいといえます。

本当のトライアルはトライアルに合格してから

合格後に始まる値踏み

え?どういう意味?と思われたかと思いますが、いわゆるトライアルに合格しただけでは、
プロの特許翻訳者として認知されず、その実力は、品質を維持しつつ納期を厳守する実ジョブにおいて試されます。

つまり、翻訳会社に登録されても、最初は比較的短い(ワード数の少ない)案件を何件か処理させ値踏みされます。
そして、翻訳会社が提供した資料(スタイルガイド、関連資料等)をちゃんと読み込んでいるか、
それらに準拠した仕事ができているか、 また、メールのやりとり等から、ビジネスパートナーとして
今後お付き合いを続けていくのにふさわしい翻訳者なのか等もチェックされるのです。

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トライアル代行サービスの出現

一昔前まではそこまで厳しくなかったのですが、「トライアル代行」サービスを使って
トライアルを突破しようとする人が増えてきたため、翻訳会社も慎重になってきているのです。

トライアル代行とはどういうものかというと、プロの翻訳者にお金を払ってトライアルを代行してもらい、
実力不足でもトライアルだけは通過させるサービスです。

このようなサービスの存在がどうしてバレてしまったかというと、トライアルの結果だけを見ると
「極めて優秀」な翻訳者だと思われるのに、実ジョブをやらせると「ガタガタ」(品質に難あり)になる人が
増えてきたため、業界でもこのサービスの存在が知られることとなったのです。

ですから、トライアルに合格した人に、いきなり大ボリュームの案件を任すことはしなくなりました。
お試し期間(その人が本当に優秀かどうか、実ジョブを通じて判定する期間)を設けるようになったのです。

もちろん、このようなお試しを全ての翻訳会社が導入しているわけではありませんが、
相手はまだまだあなたの実力を疑っていますので、このお試し期間にミス(特に、誤訳などの致命的なミス)を
繰り返すようだと確実に切られます。もう、仕事の依頼は決して来ないと思った方がいいです。

まとめ

このように翻訳者になるためのトライアルには、一発勝負であることや、
各社各様のクセのある問題にうまく対応できるかどうかという特有の難しさがあります。

また、たとえトライアルに合格させたとしても、翻訳会社はまだあなたを疑いの目で見ており、
本当のトライアルは、登録後の実ジョブを使ってなされるのだということを決して忘れず仕事に取り組んで下さい。

これらを全てクリアして初めて、継続的に仕事を受注できる「プロの翻訳者」としてのキャリアが
スタートできるのですから。

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特許翻訳のトライアルに挑戦しよう

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特許明細書を読み取るためには、理系の専門知識が大量に必要だ。

だから文系の自分は不利だ、無理だ、できない、と思っている人が
多いのには驚かされます。

本稿では、足りないのは知識ではなく思考力や論理力であること、
そしてその前提として素直に明細書に立ち向かうマインドに
問題があることを説明していきたいと思います。

以下の文章をよく読み、実践していただければ、巷に広まっている
「特許翻訳=理系有利」という「ドグマ」が瓦解すると思います。

足りないのは知識ではありません。
考えるという一手間を惜しむその脆弱マインドこそ問題なのです。

ここでは、2016年・セミコンジャパンで登場した
「ステルスダイシング」を素材として、その「言葉」からどのように
内容にたどり着くのか、その過程をお見せしたいと思います。

 参照)https://www.disco.co.jp/jp/news/event/sj2016/index.html

言葉を出発点としたアプローチ

「ステルスダイシング=ステルス+ダイシング」です。

そして、この言葉がセミコンジャパンで登場しているのですから、
半導体関連の技術についての言葉であるはずです。

ダイシングについて

まずは、半導体プロセスの一つである「ダイシング」について確認するため
「半導体+ダイシング」で検索します。

この際、大切なことは細かい知識に惑わされないことです。
「要するに」どういうこと?という質問を自分に投げかけて、
それに答えるようにして調べるようにしてください。

次に、従来のダイシングが抱える問題点を解決するために
「ステルス」ダイシングなるものが登場したと考えられますから、
まずは現状把握、つまり半導体プロセスにおけるダイシング工程と
そこでの問題点を確認します。

まず、グーグルサジェストを活用してみます。

半導体工程におけるダイシングには専用装置が存在し、
その工程にはフィルムが使われ、ディスコが代表的な装置メーカーであり、
その工程には「ブレード」「レーザー」が使われていることが推測できます。

ここまで確認したら、一度通しでお読みいただいた半導体関連の書籍
(下記で推奨書籍をご紹介しています)の索引を活用し、関連箇所を読みます。

20161220-1

あわせて、グーグル検索結果を「画像」に切り替えます。

20161220-2

出典)http://www.lintec.co.jp/e-dept/adwill/about/

ダイシングとは、ウェハー上に作成したチップを分離するために、
レーザーまたはカッター(ブレード)で切断する工程であることが分かります。

この後、YouTube等でダイシングプロセスの動画をチェックします。
従来のダイシングではゴミが発生するために洗浄工程が
必要であることが分かります。

となると、「ステルス」とは「コンタミ防止」に関連した技術ではないか
と推測できます。

ここまでの説明を読んで「難しい」と思った場合、
前提が欠如していることになります。

英語を勉強するのに「アルファベット」は知る必要があります。
特許明細書を読むために細かい専門知識は不要と言いましたが程度問題です。
最低限度の言葉は押さえてください。

もちろん、ネットで勉強する、知識ゼロからネット検索で芋ずる式に
知識を獲得する方法もありますが、いかんせん時間がかかります。

普通は、まず定評のある書籍を入手し、
半導体プロセス全体を押さえておく必要があります。

オススメするのは、前田さんの本です。
この2冊はぜひ購入してください。

この本の存在を知らない、あるいはここに書かれている基礎的な知識も
欠如している状態では、半導体案件を受けることはできません。

また、そのレベルで半導体が得意分野です、とか言わないようにしてください。
コーディネータに鼻で笑われてしまいます。

さて、事前にこうした本で学習済みであること、あるいは、
最初の依頼が半導体がらみだった場合は大急ぎでこうした本で
大枠を把握していただいたことを前提に、話を進めていきましょう。

ステルスの正体

すでに、ステルスがコンタミ防止がらみで出てきた技術に
関連するのではないかという推測はしていますから、
次は「ダイシング ステルス コンタミ」で検索します。

すると、

https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/etd/SD_tech_TLAS9004J.pdf
がヒットし、その中に「図1 ステルスダイシングの基本概念」が出てきます。

20161220-3

ウェハーの内部にレーザーの焦点があり、
これがスキャン(走査)されていることが分かります。

ウェハーの内部にのみ局所的・選択的な加工を施してありますから、
外部からはレーザーによる加工がなされたかどうかは
わからないことになります。

これが「ステルス」という意味ではないかと推測できます。

上記PDF内にも「ステルスダイシングは対象材質をその材質“内部”から
割断する方式であるため、対象材質を“外部”から切断する従来の
レーザダイシングとはその原理機構が明らかに異なります。」

との記述はこのことを示していると考えられます。

また、外部変化が無いということは、

レーザーやダイヤモンドカッターを使った機械的切断と違い、
削りかす(ゴミ)が発生しない「クリーンプロセス」であることが分かります。

参考)本プロセスの特徴については、
https://www.disco.co.jp/jp/laser/merits.html
にまとめられているように、コンタミ防止以外にもいろいろあるようです。

違いを端的に表現する力

20161220-4

出典:https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/etd/SD_tech_TLAS9004J.pdf

図6の説明には、「SD方式の場合、ステルスダイシング後は
個々のチップは依然として一体化したウェハーのままの状態であり、
その後テープエクスパンドにより初めてチップ分離されます。」とあります。

外からは見えない「切れ目」を入れておいて、
実際にチップを取り出す前に、ウェハーの裏面に貼ったテープを
引き延ばすことで、チップどうしを物理的に分離していることになります。

これは、日常生活で使っている湿布薬(モーラステープ)の使用例に似ています。

20161220-5

出展:http://hisamitsu-katahari.jp/sp/

つまり、レーザーを内部にフォーカスし、
見えない切れ目を作成しておいてからテープを引き延ばすことにより
分離するという視点は、技術としても操作としても、
何ら新しいものは無いことになります。

それをダイシングという工程に組み合わせた視点が新しいと言えます。
が、この理解に特段の専門知識は不要です。
専門知識の有無とは関係なく理解可能なのです。

レーザーのフォーカシングをウェーハ内部で行ったこと、
見えない切れ目を予め入れておいてからテープを引き延ばす
機械的操作と同時にチップを分離していること、ここがポイントです。

あえて理系知識を問題にするのなら、レーザーがどういうもので
そのフォーカシングが可能であるという点だけでしょう。

まとめ

文系だから、専門知識が無いから、
といったできない理由を探すことはやめましょう。

結局、当該特許明細書において、何が新しいのか、どういう発想で、
何に着想を得て出願された特許なのかと考えてみましょう。
このことで、特許の理解が加速します。

先入観を捨てて素直に特許明細書と向き合うことが何よりも大切です。

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翻訳者のための特許明細書の読み方

特許明細書を読むために必要な専門知識の深さ

特許明細書を読むための化合物命名法

追記

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ここ1~2年、

「トライアル応募しても書類審査ではねられてしまう」
「トライアルが難しくなった気がする」

という声が聞かれます。

何が起きているのでしょうか。
詳しく分析してみたいと思います。

成熟した業界で必然的に起こる変化

未成熟期

特許翻訳という職業が今ほど認知されていなかったころは、
特許翻訳者という職業自体が珍しく、特許翻訳というマーケットが
形成されていない、あるいは、あったとしても小さく、
今のようなスクールも成り立たなかったため、
スキル獲得手段の多くは、先輩からのOJTに依存していたはずです。

現在、大手のスクール経営者に顔見知りが多いのは、
そのことを裏付けるものでしょう。

彼らは、業界がまだ未成熟期にあった頃、試行錯誤しながら
経験を積み上げて指導する側に回ったと考えられます。

成熟期

時が経過し、翻訳業界が成熟し、それなりにノウハウ・テクニックが蓄積され
それらがマニュアル化され、スクールビジネスを通じて組織的に
翻訳志望者へと広まったことで何が起きたのでしょうか。

裾野が広がったスポーツやビジネスでも同じように、
特許翻訳者の集団における「底辺層の底上げ」並びに、それに伴う
必然的な「全体レベルの上昇」です。

この時、マーケット全体が拡大し、全員の受け皿が準備できていれば
問題ないのですが、企業の特許出願数の頭打ち傾向や出願する
特許の厳選・選別という状況が生じればそうはなりません。

では、どうなるでしょうか?

業界全体で必要とする特許翻訳者数は横ばいかむしろ減少してしまい、
新規参入のための閾値すなわち「トライアルのレベル」は
必然的に「上昇」することになります。

加えて、

過当競争により依頼側の「要求水準の上昇」と「レート低下」をもたらし、
従来の平均以下レベルの翻訳者の仕事は、翻訳精度の上がった機械翻訳ソフト
あるいは、近時流行のAI翻訳ソフトによって代替されていく
方向であろうことは容易に推察できます。

トライアル受験者が経験したこと

トライアル受験をした人の多くが、以下のような経験をするようになったのは、
上記のような業界の変化が背景にあると考えられます。

すなわち、

(1)時間制限付・日数制限付トライアルが登場してきた
(2)どこがダメだったのかはっきりしないが不合格となるケースが増えた
(3)トライアルに何度挑戦しても突破できない
(4)すでにプロとして食べている人がトライアルに合格できなくなった
(5)書類審査で落ちるケースが増えてきたなど、

一言でいえば、「トライアルが難しくなっている」ということです。
この理由について、以下で深掘りしてみることにしましょう。

新規参入者が知っておくべき新潮流

時間制限・日数制限付トライアルの登場

以前のように「出来たら送ってください」という
時間制限のないトライアルは確実に減少しています。

逆に、そちらの都合に合わせて課題文の訳文を何時送ってもらっても
構いませんという一見するとやる気のないトライアルは、
さほど新規参入者のニーズが高くない状況とも考えられます。

この背景にあるのは、

「マーケットの停滞」と「新規参入の増加」が人出不足感を解消させ、
「現有のレギュラー陣と交代させられる程度のレベルなら欲しいが、
とりあえず登録だけしておいてひょっとしたら依頼するかも知れない人に
合格を出す必要はない」という会社が増えたためではないかと思います。

翻訳雑誌などでも「優秀な特許翻訳者は常に不足しています」
というのがコレですね。

「優秀なら」つまり、現有のレギュラー陣=1軍と代替可能なレベルなら
欲しいが、そうでないなら、専門分野が特殊とか何か理由がない限り、
急いで採用するまでのことはない、というわけです

野球でいえば、イチローやダルビッシュクラスなら何人いても困らないよ、
という至極当たり前のことを言っているだけであり、特許翻訳志望者が
この部分だけ見て、特許翻訳者が不足しているから業界参入の大チャンスだ
と考えると大やけどをしてしまいますよということです。

採用する側から考えればすぐに分かりますが、そもそも登録者だけを
増やしても管理コストだけ増えて何のメリットもありません。

加えて、レギュラー陣でとりあえず目先の仕事が回っているのであれば、
それ以上にトライアルを実施して人を増やす必要がそもそもないのです。

どうしても追加で必要なときだけ、少数の優秀な翻訳者を合格させれば
よいのであって、普段から登録者を増やして実ジョブに慣れさせる訓練を
しておく必要もなくなったとみるべきでしょう。

また、引き受ける仕事の「レートが低下している」傾向の中では、
いきなり実戦投入できない初心者を長い時間とコストをかけてまで
育てる余裕がなくなっていることも考えられます。

これは特許翻訳業界に限定された話ではなく、ビジネス全般に言えます。

一流大手に入社した新入社員でも、昔なら3年ぐらいで一人前になってくれよと

言っていたのが、1年になり、半年になり、3か月になり...
最近では、入社後1か月で実戦(プロジェクト)に戦力投入される
というケースもあるようです。

そして、プロジェクトの現場に放り込んで、そこからなんとか
自己成長できる人だけ残し、そうじゃない人はばっさりリストラする
という会社もあるようです。

即戦力で、教育の手間がかからず、仕事を依頼する側からすれば
打てば響く(気持ちよく使える)優秀な人材なら欲しいが、
そうでなければ相手にする必要はない、というのがビジネスの流れです。

それぐらいビジネスの現場は厳しくなっているわけですから、
こうしたソークラ(ソースクライアント)から見て下流=「下請け」
に過ぎない企業に余裕などあるわけがありません。

即戦力以外は不要、というのはどの業種、どの段階でも
ディファクトとなりつつある考えです。

書類審査のハードルの上昇

「書類審査のハードルが上がった」ことも、上記の点から考えれば
容易に説明がつきます。

育てる必要のない優秀な人は、メールの文面や添付ファイルにある文章を
見ていれば、おおよそ選別できるものです。

トライアル応募に対してトライアル課題文を送る必要もないだろう
という判断をされてしまう人も増えてくるのが自然な流れです。

初心者は気づいていないかも知れませんが、メールでのやりとりや
応募要項に対応したCV作成能力によって、同時に翻訳力を含む
翻訳者としての総合力もおおよそアタリを付けることができるものなのです。

まして、年間何百~何千通という応募メール、CVを見ている
コーディネータ、その結果として使えたかどうかを相関関係のデータベース
として頭の中に持つ経験豊かな翻訳コーディネータであれば、
この見切りはさほど難しいことではないでしょう。

スクールと異なる判定基準の不明確さ

加えて、「トライアル不合格の理由が分からない」のであれば、
対策しようがありません。

数打ちゃ当たるだろうとばかりに沢山のトライアルを受けていこう
とする人も出てきますが、

明確なトラップ(罠)が仕掛けられているだけでなく、
全体として訳文の硬さや、調査の浅さなど「総合判定」を判定項目に
持ち出されると、パッチワークのような勉強をいくら続けても、
その後トライアルに落ち続けることになります。

トライアル権にすがるべきでない理由

このような状況下にあってなお、翻訳スクールがインセンティブとして
付けている「トライアルを受験できる権利」なるものにすがる人が、
少なからずいることに驚きます。

翻訳スクールの中には、そのスクールの運営母体である翻訳会社の
「トライアルを受験できる権利」をオマケにしているところもあるようですが
もし、そのトライアルに落ちた場合にどうするつもりなのでしょうか。

また同権利が付いた類似のスクールに入り直すつもりなのでしょうか。
最悪、同じスクールの同じコースを複数回受講することになりそうですが、
それが解決策になりますか?

そもそもプロとして安定稼働するためには、

契約会社を1社のみに限定するのは非常に危険です。
時期により依頼案件数が変動しますし、ソークラが別の翻訳会社に
契約を切り換えた場合、その専門分野の依頼そのものが無くなってしまいます。

プロとしてはこのような場合に備え、リスクヘッジとして常時2~3社との
取引が必要で、それが専業の翻訳者として生活を維持するための前提となります。

とすれば、トライアルは複数合格しておいて、その中から各種条件と
案件・担当者との相性等を考えて最終的に2~3社と契約するという
流れになるはずです。

そして、このような状態にするためには、

翻訳スクールが提示する「トライアル受験の権利」にすがるのではなく、
任意の会社に自由に応募してもかなりの確率でトライアル合格できる実力
(真の翻訳力)の獲得に精力を傾けることが重要と考えます。

ましてや、「トライアル受験の権利付」のスクールに入っても、

最終的にトライアル合格できずにチェッカーとしてずっと安く使われたり、
別の講座(英検1級コース、TOEIC高得点コースなどが定番のようですが)
へ誘導されたりして、時間とお金を効率的に投入できていない状況は、

プロの特許翻訳者になり安定稼働するという当初の目的からみて、
本末転倒をいわざるを得ません。

結果に結びつかない学習はやめよう

翻訳者のスキルとしては、一般に英語力、専門知識、日本語力、調査能力
などに加えて、ビジネスセンス(営業力などを含む)も必要となりますが、
これらを個別に鍛えていても、時間制限付のトライアルを突破することは困難です。

トライアルに挑戦する段階で、「一軍」として活躍できるレベルが
必要なのですから、テキストをなぞっていくようなやり方では
限界があると言えるでしょう。

現在のトライアルは、出来合いのテキストを使い、時間をかけて勉強すれば
そのうち突破できるようなものでは無くなっています。

なので、結果に結びつかない学習は早期に軌道修正する必要があります。

ゼロから始めたとしてせいぜい3年、時間のない子育て中の主婦だとしても
4-5年でプロとして稼働できなければ、その勉強方法は
根本から間違っています。

また、正しい努力を一定期間継続してもダメだったら潔く諦める
というのもありです。

レートが低くても構わない、とにかくプロを名乗れればいい、
という発想しかない人は、おそらく遠くない未来にAI翻訳の下請けとして、
安いロボット要員にされるだけでしょう。

そもそも、一流大手には英語ができる社員ははいて捨てる程いますし、また
高性能化した翻訳ソフトを使いこなす社内の人材の登場によって
現在は「外注」されている仕事も「内製化」されてしまい、
外部へ仕事の発注そのものがなくなる状況すら考えられます。

企業は、「キャッシュアウト」を嫌うためです。

それに、ポストエディットやゴミ取り作業を担当する、いわゆる
ポイントチェッカーの仕事では翻訳者としてのモチベ維持も困難です。

加えて、総じて低収入ですから「お小遣いレベル」を卒業することができず
家族に何かトラブルが生じた場合にはサポート力として脆弱です。
最悪の場合、生活の維持ができません。

図解による確認

これまでの話を図解で確認していきましょう。
下図はこれまでの業界を示しています。

トップ層があって、ボトム層がある。真ん中に平均層が存在するという図です。

もちろん、現実はこのような単純構造にはなっていませんが、
話の都合でモデリングして細部は切り捨てて簡略化していますので
この点はご了承ください。

これに起きた変化の一部を付け加えたのが下図です。

従来のトップレベルが上昇し、下位レベルも上昇しています。
また、全体のパイの増大に伴い全体の三角形が破線のように変化します。
平均値が分厚くなっています。

これにさらに修正を加えたのが下図です。

平均値が上昇しています。

新しい平均値(赤の破線)は従来の平均値(赤の細い実線)より上に
スライドしています。翻訳者(志望者も含む)の総数は増えつつ、
平均レベルが上昇し、全体としてハイレベル化していることを示しています。

これにマーケット(ニーズ)の大きさ(パイ)に変化が無いことによる、
市場参入レベルの状況を付け加えたのが下図となります。

2つの紫の実線が上方向にかなりスライドしていることが分かります。

新しいEntry Levelより上の三角形部分(斜面が破線、底辺が緑の実線)
だけが、稼働対象となるプロの特許翻訳者を示しています。

業界のレベルが上がれば、緑の底辺(実線)が上方に平行移動し、
三角形の面積はさらに縮退することになります。

すでにプロとして稼働している翻訳者がトライアルを受け直したときに、
以前よりレベルが上昇しているため、必ずしも合格できるとは言えないのは
このためです。

新しい状況に対応できず、廃業に追い込まれるベテランが
一定数いることもこれに関係していると見ています。

加えて、常に顧客の高まるニーズというプレッシャに晒されている
コーディネータにしてみれば、現在の一軍の中にもリストラしたい人が
一定数存在するはずです。

上側の紫の実線より上のレベルがトライアルで発掘できれば、
使えない一軍をリストラしてフレッシュな新人とスワップしたい
と考えるはずです。

文句なしのトライアル合格レベルとは、このレベルです。

翻訳者を目指す人へのアドバイス

まず、業界の状況は今後、厳しくなることはあってもその逆はないだろう
ということです。それを前提とすると、期限を決めて極限まで努力し
ダメだったら転進することも考えるべきだと思います。

だらだらと5年、10年と「ワナビー」(夢子)を続けるのは人生の浪費です。
一度しか無い人生、たかだか数十年の人生ですから、貴重に使いたいものです。

お花畑スキップを続けてはいけません。

それにお金儲けが目的なら、他のビジネスもあります。
不要品販売、転売、せどり、アフィリエイト、コンサルなどのネットビジネス
も個人でできる時代です。自分の適性にあったものを選べばいいと思います。

もう一つは、英語力を通訳か翻訳か、という狭い世界で使おうとしないで、
もっと視野を広げるべきでしょう。

例えば、IT翻訳にコピーライティングを組み合わせれば
トランスクリエーションという新しい需要を生み出せると思います。

講座では「翻訳力を再解釈してブルーオーシャンを狙え」と言っています。

極限まで努力する、期限を決めて努力する。反対解釈として、
適当で中途半端な努力を延々と続けて人生を浪費してしないで欲しいと思います。

<追記>

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叶わぬ夢に何時までもしがみついているのは人生の無駄です。
さっさと挑戦してさっさと決断し次のステージへいきましょう。
人生は短いのですから。

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翻訳者になるためのトライアルの難しさ

特許翻訳のトライアルに挑戦しよう

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トライアルに挑戦しましたがダメでした。
別のトライアルに挑戦しました。またダメでした。

これを延々と続けてもおそらくプロにはなれません。
なぜダメだったのか、どこをどうすれば良かったのか、
トライアル受験後の分析がどこまでできていますか?
問題はそこです。

次のトライアルに活かせる気づきがあったでしょうか。
気づきを蓄積していくプロセスが確立されているでしょうか。

このプロセス確立がないまま、トライアルの数勝負だけを
延々と続けてもプロへの道は拓けてはきません。
おそらく20-30件ぐらいトライアル受験して
挫折してしまうのではないでしょうか。

トライアルは毎回内容が違います。

初見でどのように挑戦するのか。
内容の違うトライアルにも応用可能な訳出プロセスを確立しておく
必要があります。

この記事では、実際の特許を素材に、初見でどう切り込むのか、
初心者がどのようなアプローチをすれば、ノウハウ蓄積プロセスを
確立できるのか、という観点から、トライアル挑戦プロセスを
シミュレーションしてみたいと思います。

トライアルとして選んだ特許

ここでは、以下の特許(部分)がトライアル課題文として、
出題されたと仮定して、初心者がどのように切り込んでいけばいいのかを
お見せしたいと思います。

いきなり下の解説を読まないで、
まずは自力でやれるところまでやってみてください。

FIELD OF THE INVENTION

This invention relates to optics and, in particular, to an optical system for use in a scanner for processing semiconductor wafers.

BACKGROUND

In certain types of semiconductor wafer fabrication systems, a source of light illuminates a reticle (or mask), and the pattern on the reticle is then focused on the wafer surface to expose a layer of photoresist. In one type of exposure system, the illumination light is a relatively narrow strip of light which is then scanned across the reticle to expose the photoresist on the wafer.

State-of-the-art wafer fabrication systems also incorporate a step-and-repeat exposure system, where a pattern from a reticle is illuminated on only a portion of the wafer surface to expose the photoresist layer.

The wafer is then stepped with respect to the reticle pattern such that, ultimately, the entire wafer is exposed to the reticle pattern. A scanning exposure technique may be used in conjunction with such a step and-repeat type system.

As is well known, the illumination of the reticle in a scanning system must be uniform to obtain an accurate and predictable pattern on the wafer. That is, the light intensity incident on the reticle must ideally be the same at all positions along the reticle, perpendicular to the scanning direction, as well as exhibiting equal energy weighting versus incident angle. Such light characteristics ensure that all areas on the wafer will be identically exposed by the reticle pattern.

Various optical systems have been employed between the light source and the reticle in an attempt to obtain more uniform illumination. Due to non-uniformity in the light output by the light source, such as a laser, it is very difficult to obtain substantially uniform illumination of the reticle.

The present invention is an illumination design for a scanning microlithography system which provides a substantially uniform illumination of the reticle.

トライアルの取り組み方

課題文の出典の有無の調査

まず、Googleを使って、第一文をフレーズ検索してみます。
フレーズ検索とは、” ”のようにダブルクォーテーション「」で
キーワード又は言葉の並びを囲んで検索するものです。

実際にやってみましょう。

“This invention relates to optics and, in particular, to an optical system for use in a scanner for processing semiconductor wafers.”

Google検索の結果が出ました。

20160924-1

このトライアルの出典が、「US5844727」と判明しました。

該当特許からの情報取得

出典が判明したら、そこからできるだけ多くの情報を得るようにします。

まず、出願人が「Cymer, Inc.」、発明者が「William N. Partlo」
であることが分かります。

さらに、タイトルが
「Illumination design for scanning microlithography systems」
となっていること、及び、下図の中にある名称から見て、
リソグラフィー用の光学系であることが分かります。

20160924-2

図から情報を読み取る練習をしてみましょう。

右端にある光源から出た光が、左端にあるレチクルに到達するまでの経路に
レンズが多数配置された光学系に関連する特許であることが分かります。

読みの正しさの確認

自分の読みが正しいかどうかを、本文中の該当箇所で確認してみます。

BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS FIG.

1A is a side view of one embodiment of the illumination system, assuming scanning is in a horizontal direction.

FIG. 1B is a top down view of the illumination system depicted in FIG. 1A.

上記記述から、自力で行った図からの情報の読み取りと、
特許の説明が合致していることが確認できました。

ちなみに、この時点で「リソグラフィー」「レチクル」「光源」「レンズ」
「エキシマレーザー」などのキーワードが理解できない場合、
何のことか全く分からない場合は、半導体関連の書籍を読む必要があります。

入門者向けの定評のある本を1冊読むことです。時間がなければ、
該当箇所(該当項目)だけの拾い読みで済ます場合もありますが、
できるだけ1冊は読み通してください。

これが無いと、問題となっている特許が果たす役割を、
その前後のプロセスとの関係で把握することができなくなり、
とんでも無い誤訳をしてしまう可能性があります。

前田さんの本がオススメです。

これから料理をマスターしようとする人が、
「包丁」「なべ」「フライパン」がどういうものか、どうやって使うのか、
どういう機能を持っているか、が分からない状態であれば、
いきなり調理法を説明されても理解できないのと同じです。

横着しないで、当該分野において定番といえるような書籍は
必ず読むようにしてください。当業者の知識の常識部分は、
翻訳者も共有しておく必要があります。

ちなみに、トライアル課題文中、以下の赤でマークした部分は、
キーワード・キーフレーズです。

どのようなものか、どのような機能を持つのかが即答できないようであれば、
完全な知識不足です。これらを完全理解した後で無ければ、
トライアルの土俵に立つことはできないと考えてください。

FIELD OF THE INVENTION

This invention relates to optics and, in particular, to an optical system for use in a scanner for processing semiconductor wafers.

BACKGROUND

In certain types of semiconductor wafer fabrication systems, a source of light illuminates a reticle (or mask), and the pattern on the reticle is then focused on the wafer surface to expose a layer of photoresist. In one type of exposure system, the illumination light is a relatively narrow strip of light which is then scanned across the reticle to expose the photoresist on the wafer.

State-of-the-art wafer fabrication systems also incorporate a step-and-repeat exposure system, where a pattern from a reticle is illuminated on only a portion of the wafer surface to expose the photoresist layer.

The wafer is then stepped with respect to the reticle pattern such that, ultimately, the entire wafer is exposed to the reticle pattern. A scanning exposure technique may be used in conjunction with such a step and-repeat type system.

As is well known, the illumination of the reticle in a scanning system must be uniform to obtain an accurate and predictable pattern on the wafer. That is, the light intensity incident on the reticle must ideally be the same at all positions along the reticle, perpendicular to the scanning direction, as well as exhibiting equal energy weighting versus incident angle. Such light characteristics ensure that all areas on the wafer will be identically exposed by the reticle pattern.

Various optical systems have been employed between the light source and the reticle in an attempt to obtain more uniform illumination. Due to non-uniformity in the light output by the light source, such as a laser, it is very difficult to obtain substantially uniform illumination of the reticle.

The present invention is an illumination design for a scanning microlithography system which provides a substantially uniform illumination of the reticle.

日本の特許庁のデータベースでの調査

次に、日本の特許庁のデータベースを使って、関連特許の有無をチェックします。

これをやらないで、いきなり翻訳作業を開始する人がいますが、
絶対にやってはいけません。

例えば、トライアルの期限が10日後であれば、
1週間は関連特許・関連記述・キーとなる技術等の調査と理解に費やすべきです。

特許の一部を翻訳する「部分訳」のトライアルであっても、
必ず全文を翻訳してから該当箇所の訳文を提出して下さい。

このやり方をすることで、原文のミスが見つかることもありますし、
通常はこう訳すけれどもこの特許ではこう訳すべき、といった
特殊事情が見えてくることもあります。

特許情報プラットフォームにアクセスしたら、キーワードを選定して
数十件程度(該当特許を2日程度でざっと読める程度の件数)
まで絞り込みます。

20160924-3

この検索条件で、

20160924-4

という結果です。

どの項目に、どのようなキーワードを入れて、
何件ぐらいで検索作業を収束させるかは、
何度もやってみてコツを掴む必要があります。

この作業がいきなりできるものではありませんので、
試行錯誤して身につける必要があります。

ここでは件数が9件ですから、それらすべてを読んで、
トライアルの出典となった特許と似た図面が含まれないかどうかを
調べることができます。

また、出願人が特許で使っている言葉使い等になれるためにも、
できるだけ多くの明細書に目を通したほうが有利です。

対訳の有無を調査

DJSOFTE’Storage2016を使って、
出典に使われた英文特許に日本語訳が存在しないかを調査します。
そうすると、以下の日本語訳が存在することが分かりました。

【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】公表特許公報(A)
【公表番号】特表2001-515268(P2001-515268A)
【公表日】平成13年9月18日(2001.9.18)
【発明の名称】走査式マイクロ・リソグラフィー・システム用の照明設計

では、この公開訳文中から該当箇所をそのまま解答として使っていいのでしょうか?

対訳が存在する場合の注意点

出題者側が、対訳が存在する特許をトライアル課題文の素材として
敢えて使った意図、すなわち「出題意図」を読む必要があります。

初心者は、対訳がないかな?→検索→あった!→やった→このまま使おう
というふうに考えがちですが、過去見てきた類似のケースからみても、
この場合は、出題者が公開訳文に対して「不満」がある場合がほとんどです。

出題者は、あなたがその訳文を「バージョンアップ」できますか?
と問うていることになります。これが出題意図です。

だから、公開訳文から該当箇所をそのまま抜き取って回答した段階で、
速攻NGだと思ってください。

なので、あえて周辺部から攻めて、一見遠回りするような作業を
しているわけです。

訳文から入ると、どうしてもそれに引きずられてしまいます。
誤訳を引きずって訳文を作成すると、
やはり不満足な訳文になってしまう可能性があるのです。

今回はたまたま対訳が存在しました。
しかし、対訳が存在すれば対応できるけれど、
対訳が無い場合には、手も足も出ないということでは困ります。

対訳の有無に関係なく、トライアルに対応できるように、
普段から対応スキームを模索し、確立しておく必要があります。

まとめ

このようにトライアルの出典として使われた特許に対訳が存在する場合には、
より一層慎重な対応が求められます。

当該対訳だけでなく、同一出願人、同一発明者の特許を複数確認して、
用語の選択、言葉の運び等を分析して下さい。

トライアルを受けられる際には、調査・知識獲得8割訳出1割確認1割
ぐらいの時間配分がお勧めですが、対訳の有無に関わりなく対応できるように
様々なアプローチをぜひ用意しておいて下さい。

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化学系特許明細書には、沢山の化合物が登場します。

では、これらの化合物はどのようなルールで命名されているのでしょうか。

こういう疑問が生じると、すぐに命名法の書籍を買って勉強しようとしたり、
命名法のセミナーに参加したりする人がいます。

でも、ちょっと待ってください。

そもそもそういう勉強は本当に必要なのでしょうか?
そこをちゃんと確認しておかないと、必ずしも必要とされない
勉強に時間とお金を無駄遣いすることになります。

命名法の完全マスターは化学系の専門家でもハードルが高いのですから。

今回は、化学系特許明細書を読む際に、最低限どこまで
知っていなければならないのか、命名法のポイントについて
お話したいと思います。

翻訳者が知るべき命名法の3つのルール

まず、命名法には、

① IUPAC(International Union of Pure & Applied Chemistry
  国際純正及び応用化学連合)の規則に基づくもの

② CAS(Chemical Abstract)によるもの

③ 慣用名によるもの、の3通りがあります。

①と②は多少の違いはありますが本質は同じです。

③は、いまだに広く利用されていますので、
これを知らないと古い文献を読むときに困ります。

ちなみに、化学の専門家になるためには、
①~③全てをマスターする必要があります。

IUPAC

IUPACは、わかりやすくて明確な命名を目指しており、
必ずしもある化合物の名称が1つに限定される必要はありません。

つまり、個々の化合物の命名には裁量の余地が残されているのです。
結果、IUPACでは名称と構造とは「多対1」の対応となっています。

CAS

これに対してCASでは、実験的又は理論的に取り上げられた
あらゆる化学種を収録して科学者の検索の用に供するように要請されます。

従って、CASの索引名は、同じ化学種が別名を持たないように規則を作り、
それが厳密に適用されることが期待されます。

そこで、CASにおいては原則として、
名称と構造との対応が、「1対1」となっています。

特許翻訳者にとっての命名法

特許翻訳者が構造式から名称を決定することは、通常求められていません。

従って、最低限押さえておくべきは、
同じ構造式に複数の名称が割り当てられている場合に、
明細書執筆者の注意力不足で、同一化合物の名称が統一されず、
同一明細書内で「ゆらぎ」が生じている可能性があることです。

特許翻訳者は、その場合の対応方法を知っておく必要がありますが、
以下のような方法で対応することができます。

まず、J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
「化学物質の目的別検索」などを利用して、
別名の有無及びCAS登録番号を確認します。

J-GLOBAL

CAS登録番号については、化学情報協会の説明を参考にして下さい

CAS登録番号全般 – 化学情報協会

化学情報協会

CAS 登録番号 (CAS Registry Number: CAS RN) は,
世界的に利用されている、個々の化学物質に固有の識別番号です。

CAS 登録番号自体には化学的な意味はありませんが、
一つの物質あるいは分子構造に様々な体系名・一般名・商品名・慣用名などが
存在する場合にも間違いなく同定 できる手段となっています。

CAS 登録番号は、CAS の作成するすべてのデータベースに
用いられているほか、他の多くの公的・私的データベースや
化学物質規制リスト登録にも利用されています。

このようにして、ある化合物の名称が複数存在し、
それらが明細書内で統一されていない可能性がある場合に、

別名検索の結果とCAS番号を対比させることで、
明細書中の揺らぎが実際生じているのか、それとも、
同一化合物かと思われたものが別化合物(別CAS番号)であったのかを
確認することが可能となります。

また、同様な調査方法を使えば、化合物の一部が文字化け等で読めない場合、
文字化け部分を確定することができる場合もあります。

もちろん、これらの調査結果は、必要に応じて訳文と併せて
コメントとして依頼者に連絡することになります。

命名法誕生の背景と必要性

そもそもなぜこのような命名法が生まれたのかを知っておくことは、
命名法とどのように付き合うべきかを理解する上で重要です。

科学の進展と共に確認された化合物の数が膨大になってくると、
それまで使われてきた慣用名だけでは間に合わなくなることは
容易にご理解いただけると思います。

膨大な数の化合物を命名するための「命名の約束事」(ルール)が
必要となってきたのです。

そして、実験室で合成された化合物が新規物質であるか否かを
命名及びCAS番号検索によって判断することができれば、
研究も効率的に行えます。

加えて、構造の共通性(その構造に基づく特性・物性)をある命名ルールに
紐付けておくことは、専門家同士の議論や思考経済上も有益です。

ソフトウェアを活用して、構造から簡単に化合物名を決定できる時代には、
化学者が独力で複雑な化合物の命名をするニーズも薄れており、
命名できるスキル自体にさほどの価値があるとは思えません。

特許翻訳者が命名法をマスターする必要性

命名法のルールが何に着目しているのかさえ理解しておけば、
明細書を読み解く上での強力な武器になります。

例えば、明細書中に「~類」とあった場合、
その類に対応する化合物の構造上の特徴や特性が想起できれば、
明細書の意図するところをすばやく理解できる可能性があります。

けれども、

特許翻訳者が構造式を見て、ゼロから命名することや、
命名の間違いを指摘したり、その名称の化合物が実在するかどうかを
判断したり、新規物質かどうかを判定するといった作業を
求められることはないのです。

あくまで明細書中の化合物名の「揺らぎ」を疑った際に
CAS番号を使ってその確認をしたり、一部文字化けのものを修正したり
明細書中の化合物のグルーピングを行って構造・特性情報を読み取り、
コンテクストの素早い把握に役立てることができれば十分なのです。

翻訳関係者の話は鵜のみにするな

翻訳関係者や講師などの中には、自分が化学の専門家であることを
アピールするために、命名法の専門書を持ち出したり、
優秀な翻訳者であると言えるためにはそういう専門書をマスターすることが
必要であるかのような説明をしたりすることがあります。

しかし、そういうポジショントークに惑わされてはいけません。

命名法のルールは必要に応じてネットからいくらでも入手できますし、
化学系特許明細書の内容理解のために求められる命名法の知識は
そもそも限定的なのです。

間違っても化学者・研究者になろうとはしないでください。
時間と労力の無駄遣いになります。

まとめ

化学系特許明細書を読むために必要とされる「命名法」の知識は
あくまで限定的なものですので、巷の話に惑わされて
無駄な努力をしないように気をつけて下さい。

特許翻訳者に求められていることは、
命名法についてのルールが複数あることを知ること

同一化合物に複数の名称が対応している可能性と、
CAS登録番号の確認作業が翻訳作業に役立つことを知ること

命名法の大枠と、構造・特性の対応関係の概略を知り
素早く明細書の内容を把握することなのですから。

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特許明細書を専門知識に依存せず読み取る方法

特許明細書を読むために必要な専門知識の深さ

翻訳者のための特許明細書の読み方

追記

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本講座がなぜ「お試しコース」「初級コース」「中級コース」
「上級コース」「実戦コース」などのクラス分けがなく、
1つのコースに統合されているのか、
その理由について説明していきたいと思います。

これまでさんざん、多くのコースに、多額の受講料と
数年単位の時間を費やしてきた人にとっては、目から鱗かも知れません。

最後までしっかり読んで、理解してください。

人生には「制約条件」があります。

そしてこの制約条件からは何人も逃れることはできません。
そうですね、「寿命」です。人は生まれて死ぬ。
その間は数十年しかありません。

その間に何かを成し遂げ、充実した人生だったと
振り返ることができるのは、ちゃんとした人生設計に基づいて
努力した人だけです。

漫然と時間とお金を浪費する。

人の意見に流され、惑わされて、方向性も無く、努力の継続もなく、
能力の積み上げもない状態では、ただ生物的に老いて死ぬだけです。

誰もそんな人生は望んではいないはず。
充実した人生にするためには「設計」がどうしても必要となります。

いま、あなたは何歳でしょうか?

本講座の受講生は、30代~60代が中心です。
平均してアラフォーだとすれば、ほぼ人生の折り返し地点に
立っていることになります。

漫然と「お稽古ごと」「お勉強」に時間を回している余裕は無いはずです。

残りの人生が40年あるとしても、
その残りの歳月をすべて使って夢を実現する、
なりたい自分になるというのは意味がありません。

それでは、人生の収穫期が無くなってしまいますから。

残りの人生を楽しみ、QOLを上げていく、
そして最後に素晴らしい人生だったと振り返るためには、
準備期間は無制限にあるわけではありませんよね。

せいぜい数年でしょう。

ここで数年と言いましたが、数値化してください。
漫然とそのうちに、みたいな発想になってしまいますから。

では、何年でしょうか。

わたしは3年、もしこれが延びたとしても5年が限度だろうと思います。

なぜなら、人間というのはこれ以上の期間設定をしてしまうと
緊張感の維持が困難になり、ダレて惰性モードに入ってしまうからです。

そして、この期間で目標値に到達するには最初の1年が勝負です。
いくら難関大学でも最初から3年浪人する覚悟をすることは無意味です。

ここで、「3年」で「目標」を達成するという設定ができました。

では、ここで問題となる「目標」とは具体的に何でしょうか。

資本主義の世界では、価値とお金が交換されて回っています。
つまり、価値を提供できる人になること、つまり
プロレベルの価値を保有することが目標となります。

それによって、資本主義の世の中でQOLを上げるために
必要な富を手に入れることができるのです。

「3年」という時間的制約の中で、
プロレベルの価値提供ができる人になるという
フレームワーク(枠組み)が確認できたところで、
これをより具体化(数値化=ブレイクダウン)してみましょう。

わたしの講座では、ゼロからスタートしプロになってから3年程度
年収1000万円に到達するという目標を設定しています。

価値のある人はより価値のあるサービスを提供できるわけですから、
相対的にそうでない人より稼ぐことができるはずです。

その具体的な数値を年収1000万円に設定しているのです。

このように年収1000万円をプロ化後3年目に到達する
という目標が明確になりました。

次にこれを「逆算」して、スタート時点で何をするかを考えていきます。

講座の受講生にも様々な背景がありますので、
画一的に議論することは困難なのですが、
概ね2年目700万円稼ぐことが目標となっています。

実際は、±100万円のレンジに多くの受講生が入っている感じでしょうか。

次に、初年度ですが、ここは400万程度が目標です。
ここでも、±100万円のレンジに多くの受講生が入っています。

なお、受講期間中に結婚、出産、両親の介護など、
様々なライフイベントにより、思うような勉強ができなかった方も
いらっしゃいますが、当初の予定通り学習できた方は、
ここまで述べてきたような年収増加グラフに近い積み上げが実現しています。

さて、プロになってからの3年間の年収グラフは上記の通りです。

となると、ゼロから初年度400万円までどうやって立ち上げるか
つまり「1年間」の使い方が次に問題となります。

時間は「1年間」しかありません。

ここを前提にして考える必要があります。
1年で結果が出るように、全てのベクトルを向け変える必要があります。

つまらない長電話に時間を浪費していた場合は、長電話はやめてください。

くだらないテレビ番組に時間を浪費していた場合は、
1年間テレビを見ないようにしてください。

意味不明の「ご褒美」だの「たまにはいいわよね」の飲み会、
ランチ会もやめてください。

たばこなんてとんでもない話です。即刻、禁煙してください。
お金も時間も無駄。人生の浪費以外、何者でもありません。

このように、1年間、結果を出すため、プロレベルの自分になり
年収400万円を稼ぐことが確認できたわけですが、
ここで大事な話があります。

1年間、勉強していればどんどん力がついてめきめきとプロレベルに近づく、
なんてことはないということです。

多くの人は、かけた時間(勉強量)に比例して、
自分のレベルが上がると思っていますが、そんなことはありません。

最初は変化がなく平坦な道を延々と歩くことになります。
これを「高原状態(プラトゥ)」と言います。

ビジネスでも勉強でも同じ。
受験サイトを見ると沢山似たお話が登場しますから、
興味がある人はそちらをチェックしてみてください。

主観的には赤い矢印の上を歩いていると思っていますが、
実際は黒い線のような成長プロセスを辿ります。

この非線形成長プロセスを雪だるまを大きくする場合にたとえてみます。

最初に雪を両手ですくって小さな雪の塊を作ります。
そしてそれに雪をどんどん付けて大きくします。
塊がある程度まで大きくなったら地面において、今度はそれを転がします。

つまり、最初は手のひらに乗るような雪の塊だったわけです。

学習プロセスにおいても、この「最初の塊」が必要となります。
成長の核となる部分です。そしてあとは肉体労働だけで大きく出来ます。
このプロセスは「連続的」です。

学習曲線におけるプロセスも同じ。
プロセスは一つです。「連続的」です。
これを分割することはできません。

最初に丸い塊を作れるか。そして、それをどんどん大きくしていけるか。
大切なのは、塊(コア)の形成と、大きくするための継続力です。

雪の塊も、大きくなれば表面積は急速に大きくなり、
それだけ地面を転がす力はより大きいものが必要となります。

おおきな雪だるまを作った経験がある人は、
最後のほうは汗だくだったはずです。
ゴールに近づけば近づくほど、どんどんきつくなるのです。

この労力の非線形を表したのは、黒い曲がった矢印です。
これはこういうものなのですから、受け入れるしかありません。
 ズルはできないのです。

大切なことは、最初のコア(赤い丸)をできるだけ固く、
丸く作り上げること。

次に、大きくするための継続的な努力をいとわないことです。

ただただ時間だけ経過しても、成長はできません。
すべき努力が継続されているという前提で、
「時が問題を解決してくれる」わけです。

多くの英語女子が間違っているのは、プロになるということは、
イチゼロ判定だということです。

30%プロになった。50%プロになった。80%プロになった。
というようなことはありません。

プロか、プロじゃないか

それが全てです。

だから、プロになる過程というのは、しっかり助走して、
勢いをつけてから、バーを飛び越えることです。
バーを落としたり、バーの下をくぐったのでは、
プロとしての認定はされません。

プロになるということは、「走り高跳び」に似ています。

結果がすべて。バーを超えたかどうか。
トライアルに合格できたかどうか。それが全てです。
どんな言い訳も不要です。

階段を少しずつ上がっていくイメージで
このプロセスを捉える人がいます。これは間違いです。

半分プロになったという認定を誰かがしてくれたとして、
それが何になるのですか?ごまかされてはいけません。

半分プロ=まがい物=アマチュア=お金は一円も稼げない。
残酷なようですが、これが真実です。そこから目を背けてはいけません。

成長曲線は非線形であり、最後の最後に急激に成長します。

ということは、成長が急加速する直前が一番挫折しやすいのです。
なぜなら、主観(赤い矢印)と客観(黒い曲がった矢印)
との間のギャップが一番大きくなるから、
このポイントで心がポキリと折れてしまうのです。

最後の最後、ここで踏ん張れるかどうかが勝負なのです。

講座は、1年間、1500-2000時間の集中した勉強を
しましょうと言っています。そしてこれを素直に実行できた方は、
ほとんど全員がプロになり、2年目から数百万円の年収を得ています。

もちろん、簡単なことではありません。
途中で挫折する人も皆無ではありません。
しかし、成長曲線の真実からは誰も逃れることはできないのです。

しっかり助走をつけて、一気にバーを飛び越える。
トライアルに合格して、実ジョブを獲得する。

この覚悟を持てた者のみが人生の果実を味わうことができるのです。

これまで、逡巡したり迷走したりして人生を浪費したと思っている人は、
本講座で1年間がんばりましょう。

「後にも先にもあんなにがんばったことは無かった。
もう一度やれと言われても絶対にできない。」
そう言っている受験生、卒業生は、例外なく稼いでいます。

あとはあなたの考え方、決断だけだと思います。

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これから特許翻訳者になろうと考えている人や
すでに特許翻訳の仕事をしている人が、
知識をブラッシュアップするためにもっと関連情報を入手したい、
最新情報を入手したいといった場合、
そうした情報をどこから取ればいいでしょうか?

ジャーナルについては本ブログの別記事にて紹介させていただきましたので
それ以外の情報源についてお話したいと思います。

まず多くの人が連想するのが、翻訳者どうしのお茶会・勉強会、
翻訳会社が開催しているセミナーでしょう。

しかし、もっと良い情報源があります。

最新情報をその道の専門家から入手できる素晴らしい情報源があります。
それはショウコンベンションなどのイベントです。

業界団体が集まって開催されるので、
関連情報を短期間に一気に集めることができます。

また、当該技術を説明してくれるのはその製品の専門家、
場合によっては開発者自身です。

引退した翻訳者がやっているようなセミナーとは違います。
10年前、20年前のカビの生えたような情報ではありません。
フレッシュな情報、最先端情報です。

今回は、講座の受講生にもお勧めしている
ショウやコンベンションの活用術についてお話していきましょう。

自分の得意分野については、常に業界の最新ニュースについて
語れるぐらいでなければ偽物です。

翻訳者におススメのイベント会場

東京ビックサイト

まずは、公式ページ(http://www.bigsight.jp/)にアクセスして下さい。
次に、「イベント情報」(http://www.bigsight.jp/event/)を確認しましょう。

カレンダーをめくっていけば、自分が得意分野にしようとしている、あるいは
得意分野としている特許を出願していそうな会社やその会社が属している
業界団体が開催しているイベントを見つけることができるでしょう。

ここでポイントとなるのは、イベント名や、主催している会社の名前や
業界団体を見た時に、おおよそどの分野の技術についてのものであるか、
を特定できる程度の「常識」は必要だということです。

また、特定分野を扱っているイベントは、
毎年、同時期に開催されることが多いので、
年間スケジュールに入れておいて、
予定はブロックしておくことが肝要です。

不意に仕事が入ったときに「参加するイベントが集中しているかどうか、
その仕事を受けるとスケジュールに余裕がなくなるかどうか」を
即座に確認できるカレンダーが必要です。

東京国際フォーラム

公式ページ(https://www.t-i-forum.co.jp/)のカレンダーを
めくっていただくとおわかりだと思いますが、
こちらは学会・研究会系が多いです。

それ以外だと、特定テーマで開催される企業のシンポジウムが
比較的多いようなので、あるテーマでじっくり知識を吸収したい
という場合はオススメです。

なお、事前登録制になっていることが多く、
急に思いついて参加しようとしても満席で参加できない可能性が
ありますので注意が必要です。

東京ビックサイトで業界全体の情報を仕入れておいて、
特定の企業や学会まで絞り込めたら、こちらの会場で開催される
イベントを活用して知識の深掘りをするといいでしょう。

いずれにせよ、事前に企業のサイトを読み込んで背景情報は頭に入れておく、
主力商品に関連した特許を読みこんでおくといった準備作業は必要です。

研究者や技術者に質問するなどして有意義な時間を過ごすためにも、
その程度の事前準備はしておきたいものです。

幕張メッセ

公式ページ(https://www.m-messe.co.jp/)の
イベントカレンダー(https://www.m-messe.co.jp/event/)は、
「展示会・見本市」「学会・会議」のタブがあり、使いやすくなっています。

同じ業界団体のイベントが春はビックサイト、
秋はメッセというように年2回開催されるケースもありますが、
メッセでしか開催されていないイベントもありますので注意が必要です。

最初の1~2年は、思いつきでもいいので、
色々なイベントに参加してください。

そして、自分の好みや方針との関係で、
継続して参加するイベントが絞られてきたら、
その分野の知識を一気に増やして当業者レベルに近づけるでしょう。

その段階になったら、毎回参加するイベントで最新情報の確認だけ
行うようにすれば、さほど負担にはならないと思います。

イベント参加時の注意点

地方から参加する場合は、ホテルの予約や移動手段の確保を
早めにしてください。

離れた場所から、首都圏のラッシュにもまれて会場まで移動すると
疲労困憊します。

また、名刺は多めに用意しましょう。
名刺を渡さないと資料をくれない場合もあります。

さらに、こうしたイベントでは情報だけを入手するために
質問している「調査屋」は嫌われます。

素直に「御社の特許について翻訳の仕事をさせていただいているものです」
と言った方がいいかも知れません。

聞かれなければ答える必要はありませんが、
どのように受け答えするかは事前にシミュレーションしておきましょう。

また、ポスターセッションが併設されている場合は大チャンスです。
研究者本人が説明してくれますから、自分が翻訳した特許の出願人に
会えるかも知れません。

研究者というのは「承認欲求」が異常に強い人種なので、
もしあなたが「あの特許を出された○○さんですよね?」
「○○さんのXX関連の特許は全部読んでいますよ。」
とでも言おうものならもう大変です。

1時間でも2時間でも話を聞くはめになるかも知れません。
タダで専門家からレクチャーを受けることができるわけです。

その他の情報源

企業が独自に開催するイベントがあります。

ある特定企業の仕事が多い場合には、このようなイベントは
仕事に必要な情報をまとめて入手できるチャンスです。

企業のサイトをブックマークしておいて、イベントカレンダーを
定期的にチェックしましょう。

メルマガを発行している場合は、必ず登録しておいてください。
メルマガは最新ニュースを自動的に配信してくれますから、
イベント情報を見逃すこともありません。

東京以外でのイベント

大阪、名古屋などの地方都市でもイベントは開催されていますので、
移動や宿泊の費用が負担になるという方は、
できるだけ地元の情報を収集するようにしてください。

地方にも全国的・世界的に有名な企業はあります。
また、工場見学という手もあります。

大切なことは、自分がその分野では非常に詳しいんだという
プライドを持つことです。

得意分野として打ち出している人が、最近面白い技術が出てますか
と聞かれて、いきなり声が小さくなってしまうのは変です。

まとめ

翻訳者だからと言って、いつも翻訳関連の雑誌を読み、
翻訳者同士でだべって満足しているようでは、レベルアップは望めません。

常に、業界の最先端の情報を仕入れ、専門家とも対等に議論できるような
レベルの特許翻訳者を目指すべきです。

少なくとも、最終目標はそこに設定すべきです。

とりあえず日々の生活には困らないというレベルで満足していると、
知らない間にレベルダウンしてしまいます。

そのためには、各種イベント及び同時開催されている発表会にも
積極的に参加すべきです。

(関連記事)特許翻訳者のためのジャーナル活用術

<追伸>

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特許翻訳者を目指して特許翻訳の勉強をしている人だけでなく、
すでに特許翻訳者になっている人の中にも、
特許に書いてあることが最先端だ」と思っている人が
少なからずいらっしゃいますが、コレは間違いです。

最先端技術情報は、実は特許ではありません。

また、特許を読む上でキモとなる「背景知識」は、
特許だけを読んでいたのでは身につきません。

この記事では、その辺りの誤解を解くと同時に、
特許翻訳者になるための学習に、ジャーナルを取り入れる有効性
についても詳しくお話していきたいと思います。

特許翻訳者の誤解(研究者が目指すもの)

皆さんは、企業の研究者が日々何をモチベにして頑張っている
とお考えでしょうか。

上司の評価?ボーナスの査定?それとも人間関係?会社員ですからね。
もちろんそれもあるでしょう。

けれど、研究者になったからには、「研究者としての評価」を上げることを
一番に考えるはずです。では、「研究者の評価」は特許出願の数でしょうか?
会社にとってお金を生み出すエース級特許でしょうか?それも否定はしません。

けれども、研究者としての評価は、やはり、自分が執筆者として
名前が出ている論文が一流の雑誌(ジャーナル)に掲載され、
それが世界中の一流の学者の論文に引用されることだと思います。

学会に参加したときに、「君の論文読んだよ。凄いね。
うちの研究室でもすごい話題になっているよ。」

Image of a business team with its leader being at the conference on the foreground

なんて言われたら舞い上がってしまいます。
研究者というのはそういう生き物なのです。

もちろん、論文を出すだけではダメです。

論文の数だけでなく、個々の論文の質(インパクトファクター)
被引用数などで評価される研究者のいわば「戦闘力」
(ドラコンボールで登場するスカウターに表示される数値)
が大きければ大きい程、研究者の評価も急上昇し、
当然、研究者本人の満足度もアップするはずです。

逆に、この戦闘力がゴミレベルなら、いくら職場の上司に評価されていても、
論文がゴミ認定されれば、研究者仲間からは、当然、研究者の頭脳レベルは
「ゴミ」認定されてしまいますよね。

ここで大切なのは、研究者自らの第一義的評価基準が「特許」ではない
ということです。

企業が、職務発明規定により「金一封」というインセンティブ(※)
を与えている場合であっても、その金額はせいぜいボーナスが
幾分増えたかなという程度です。

多くの研究者は、特許の対価に期待して研究しているわけではなく、
研究者として一流の認定を受けたいのです。

ですから「俺の特許で会社が100億円儲かったから半分の50億よこせ。」
などど言ったら、日本の村社会ではそれこそ「鼻つまみ者」です。

会社はその特許を生み出すために、研究所を建設し、
高学歴社員を大量に採用し、実験装置に大金をはたいて研究活動を
支援しているのです。

Flu virus experiment -  scientist in laboratory with microscope, wear protective eyewear

会社には利益を、従業員(研究者)には名誉を」です。
研究者に渡される最高の報酬はお金ではありません。
名誉なのです。

※報奨金の相場については、「職務発明対価請求ナビ」等を参照してください。

であるとするなら、

ライバル企業(大学、各種研究機関を含む)で同じ分野の研究をしている
研究者からの高い評価を得るため、誰よりもすばらしい論文を誰よりも多く、
メジャーなジャーナルに発表したいと思うはずです。

そして、このことがときどき「勇み足」となり、
特許出願できない事態(※)を招くことになります。

もし、研究者の心が、特許出願に向かっているとすれば、
そもそもこのような事態は起こりえない得ないはずです。
まず、研究者の頭の中が「論文発表ありき」だから
このような問題が起きるのです。

※「学会発表する場合に、特許関係で気をつけること
(名古屋大学、学術研究・産学官連携推進本部)を参照のこと。
併せて、特許法第29条1項の新規性についての特許庁の資料を参照願います。

ジャーナルに旬の情報が掲載されるワケ

ジャーナルの種類にもよりますが、投稿から掲載されるまでの日数は
概ね数十日です。少なくとも、数ヶ月以上かかることはありません。

ちなみに、「Applied Physics Express(APEX)」2008年1月創刊号によれば

「JJAP Express Lettersは、投稿からオンライン版掲載まで
平均35日という迅速な出版プロセスを持っています(最短15日)。
この特徴は、新編集体制を導入して、APEXでもさらに充実して行きます。」

となっています。研究者は、このスピード感の中で争っています。

もし、あなたが得意分野の最新情報に精通したいのなら、
ジャーナルをフォロー(定期購読)すべきです。

ちなみに、わたしの主催している講座では、
Journal of Electrochemical Society」及び
Journal of Vacuum Science & Technology A,
Journal of Vacuum Science & Technology B」の購読をすすめています。

加えて、ジャーナルには、査読(Peer Review)プロセス(※)が
組み込まれているため、内容・文体などの点において
特許明細書を上回るクオリティが担保されています。

特許明細書を活用して特許翻訳を勉強している人は、
「特許には間違いが多い」と文句を言いますが、
書いている人のレベルも査読のプロセスの有無も、
そして何より執筆者の意気込みがジャーナルと特許では違います。

質の高い情報を求めるなら、一流ジャーナルを定期購読すべきです。

加えて、複数の学会に参加、研究者が参加するショウ・コンベンション
の類もフォローすべきです。特許のネタは特許翻訳業界の外にあるのですから。

※「査読」については、例えば、
査読(Peer Review)とは何か?」を参照願います。

特許の鮮度

では、ジャーナルの鮮度に比べて特許のそれはどの程度なのでしょうか?

この点については、特許庁のサイトに公開されています。
そこには、「公開特許公報については、出願日から18月(1年6月)
とあります。

そもそも特許法の目的は、特許法1条に記載されているように
「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて
産業の発達に寄与すること」です。

特許制度というのは、世の中にとって「有用な」技術を、
特許という形で一般に公開してもらう見返りとして、
公開した者に特許権という独占権を与えるものです。

この1年半という非公開期間が長くなれば、
公開した者にとっては先行者利益が増大し有利ですが、反面、
ライバル企業からみれば似た発明(場合により同一発明)に
重複して投資するリスクが増大してしまいます。

結果、産業界のリソースを無駄食いすることになります。

この期間設定は、秘密にしたい側の利益と公開して欲しい側とのバランス
(利益考量)から決定されたものと考えることができます。

なので、あなたが最先端情報だと思って見ていた特許は、
1年半以上前のものであることになります。

研究者が研究テーマを選定するときに、
特許だけを決定材料にすることはありません。

なぜかというと、情報が古いからです。

関係者が見ているジャーナルを普段から読み込んでいる研究者が
特許を読む理由として考えられるのは、例えば自分の研究予算を
確保するために、特許を参考にして「この研究が金になる」という
アピール材料を探すためでしょう。

もちろん、企業の研究部門が他社特許を参考に研究テーマを探す場合、
より直裁的に、他社に対して特許出願数・取得数を争うことが
目的だったりしますが、ジャーナルで名前を売ることが目的の研究者が、
他社特許との比較ありきでテーマ選定することはありません。

この辺りは、サイエンティスト志向とエンジニア志向の違いが
出る場面とも考えられます。

翻訳者がジャーナルを読むことによる副次的効果

まず、特許判例データベースにアクセスしてください。

「平成 12年 (行ケ) 409号 特許取消決定取消請求事件」の中に、
次の箇所が見つかると思います。

「ウ 特開昭62-90863号公報(乙第4号証)
「一方Li+イオン等の陽イオンを取り込んだ黒鉛層間化合物を
負極として用いることは当然考えられ,事実,例えば
特開昭59-143280号公報に,陽イオンを取り込んだ黒鉛層間化合物を
負極として用いることが記載されている。しかしながら,
かかる陽イオンを取り込んだ黒鉛層間化合物は極めて不安定であり,
特に電解液と極めて高い反応性を有していることは,エイ・エヌ・デイ・・・
等の「ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティー・・・1970年」
の記載から明らかであり,」。

というように、代表的なジャーナルは、特許判例でも引用されていることから、
その有用性がおわかりいただけると思います。

特許と論文との関連

まず、「”journal of electrochemical society” google patent」で
検索してみましょう。

20160825-1

この中で、赤枠で囲った特許を見てみます。

Method for maskless chemical and electrochemical machining

公告番号              US4283259 A
公開タイプ           認定
出願番号              US 06/037,074
公開日                  1981年8月11日
出願日                  1979年5月8日
優先日                  1979年5月8日

この特許の「2. Background Art」に、

「The classical methods of machining which rely on
deformation mechanisms are limited in their resolution and
result in deformation of the machined surface.

The problems associated with deformation of the machined surface
have in part been overcome by electrochemical machining techniques.

W. Kern and J. M. Shaw, in Journal of Electrochemical Society,
Electrochemical Technology, Vol. 118, No. 10, pp. 1699-1704
disclose a technique for delineation of high resolution patterns in
tungsten films on semiconductor device wafers.」とあります。

翻訳者募集のページで、「当該分野における背景知識があること
という記載を見たことがあると思いますが、
背景知識とは、当該分野の特許出願をしている当業者の知識が
地層のように積み重なったものです。

当該分野の背景知識に習熟するためには、目の前にある特許だけを
見るのではなく、当業者がすでに発表しているジャーナルを追跡し、
関連情報を根こそぎ拾う力が必要です。

それなくして、当業者レベルの背景知識があるとは
言えないのではないでしょうか。

ちなみに、読むべきジャーナルは自分が得意としている分野で違います。

ジョブとして読んでいる特許の「引用非特許」の箇所に同じジャーナルが
何度も登場するなら、それを定期購読して読むようにしましょう。

わたしが主催している講座の受講生・卒業生も、
学会や学会論文をフォローしている人が増えてきました。

まとめ

もしあなたが得意分野の最新情報に精通したいのなら、
ぜひ代表的なジャーナルをフォローしてみて下さい。

また、特許はその発表論文との関連で読むようにすると、
より深く理解できますし、発明の内容(技術思想)の立体的把握にも
きっと寄与するはずです。

<追伸>

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特許翻訳者になりたい人が最初に抱く疑問がコレではないでしょうか?

ネット上のどの質問サイトを見ても、同じ質問が繰り返し登場します。

「英語力がどれぐらいあればなれるのでしょうか?」

そして、その回答の多くが(というよりほとんどすべてが)
「英検」とか「TOEIC」と絡めてのものになっています。

英検1級は必要ですね。
TOEICは最低900点欲しいですね。

こういう回答がとても多いです。

そして、こうした回答を受けて多くの人はまず英語を勉強しようとします。
結果、遠回りになるとも知らずに。

わたしの主催している講座には、「英検1級+TOEIC満点
(少なくとも900点以上)」という人がたくさんいます。

では、彼らは特許翻訳者になるための登竜門ともいえる
「トライアル」に簡単に突破できるかといえば、
残念なことに、その合格率はほぼゼロパーセントです。

英語力を身につけてから、英語力はトップレベルになってから、
特許翻訳の勉強をしようと考えている人は、
遠回りすることになりますから注意してください。

では、最短で特許翻訳者になるにはどうすればいいのでしょうか?
今回は、それについてお話したいと思います。

最短で特許翻訳者になるには

英語女子の陥るワナ

英語が得意な「英語女子」の多くは、「積み上げ思考」です。

翻訳ってやっぱり語学力がポイント、語学力といえば英検とTOEIC、
だから両方ともトップレベルになるまでがんばってからでないとダメだ、
そういう発想です。

まずは英検1級、そしてTOEICは最低でも900点台、
できれば950点以上、本当なら980点は無いとダメだろう、
だから、まずは英語力をこのレベルにしてから翻訳の勉強を始めよう。

Portrait of cute girl with open book and looking at camera

こういう「積み上げ思考」で考えてしまいます。

翻訳者の知り合いに聞いてみてください。

英検1級ならトライアルに一発合格しますか?
TOEIC満点なら、トライアル一発合格しますか?と。

おそらく期待したものと違う答えが返ってくるはずです。

逆算思考のススメ

最短で特許翻訳者になるためのポイントは、
積み上げ思考」から「逆算思考」へ頭を切り替えることです。

つまり、

プロの特許翻訳者になるためには、「トライアル」と呼ばれる
各翻訳会社が課す課題文を翻訳して提出し、
合格点をもらわないとどうやらダメらしい。

だとすれば、そのトライアルに合格するにはどうすればいいんだろう・・・

と逆算して考えることです。

thoughtful woman coming up with an idea smiling

そのためにまず必要なことは、「トライアルに挑戦」することです。

そもそもトライアルを受験したこともない人が、
勝手な思い込みで行動してはいけません。

「英語力を磨けば自然と合格できるはず。プロになれるはず。」
この思い込みが、数年間の浪費を生んでしまうのです。

最近は、「有料トライアル」というものもあります。

ご丁寧に、コメントを付けて返してくれるものがありますので、
それを利用してください。

結果は、ほぼ間違いなく不合格でしょう。
いいんですよ、不合格で。

大切なのはその後、どういう行動をするかです。

その原因を探ってください。

本当に「英語力不足」で不合格となったのでしょうか。
恐らく、そうではないことに気づくはずです。

そこから対策を考えましょう。
何が足りないのかを考えましょう。

man-thinking-3d-render_mjn0zdu_

わたしは講座主催者として数年間、
高い英語力を有する受講生のトライアルを見てきましたが、
英語力が足りなくて不合格になっているケースは一例もありません。

英語力としては「オーバースペック」になっている方がほとんどなのです。
英語力が高いけど「人生が詰んじゃってる」残念な人にならないでください。

トライアル合格に足りないもの

では、何が足りないのでしょうか?

多くの場合、内容の理解力が不足しています。

何が問われているのか、そもそも何がその文章の主題なのかが
全く把握できていません。

辞書を引いて、もっともらしい訳語をあててはいます。

ですが、それはなんとなく意味が通じていそうな日本語にしている
ただそれだけのことです。

「タテ」のものを「ヨコ」に、
「ヨコ」のものを「タテ」にしているだけなのです。
これではトライアルを突破できるはずがありません。

Image of a frustrated or tired young brunette rubbing temples

料理には「包丁」という刃物が必要らしい。
だから、すぱすぱよく切れる刃物を手に入れれば料理人になれるに違いない。

わたしの持っている包丁は「電源ケーブル」すらすぱすぱ切れる。
だから一流料理人になれるはず。

そんなことを思う人はいませんよね?

しかし、英語力さえ身につければ翻訳者になれる
と思っている英語女子はたくさんいます。

それってこの料理人志望の素人に似ていませんか?
どこか狂ってますよ。

翻訳者として安定的に稼働するには

別の誤解

ここまで読んだ人は、

「ああそうか。じゃあ、理系知識、専門知識が足りないんだな。」
と思ったかも知れません。

違います。

もし、専門知識を身につけることが必要なら、
知識量が問題になっているのなら、
どこまでやっても勉強は終わらないことになりませんか?

世の中の知識はどんどん増えていきます。

もし知識で勝負しようとするのなら、技術の進歩に伴って、
新しい知識をどんどん補充しなければなりません。

しかも、翻訳者は専門家と違い、
ある分野だけを担当すればいいというわけにはいきません。

翻訳者として安定的に稼働するためには、
新しい知識にも対応できる力がなければなりません。
では、その力はどうやって身につければいいのでしょうか?

対応力を身につける方法

特許明細書がアルファでありオメガです。

これから特許翻訳者になろうという人も、
すでに特許翻訳者になっている人も、死ぬまで勉強は続きます。

稼ぎながら勉強し、その結果レベルを上げ、
己の競争力を上げ、さらに稼ぎ続けなければなりません。

とするなら、

「特許明細書」を使って勉強する
「特許明細書」を活用してレベルを上げる
その方法をマスターしなければなりません。

Learning process, cute children

このレベルアップの過程で、中身をどう捉えるかが問題であって、
そこから英語力だけを切り出しても意味は無いのです。

多くの学習者には実力アップのプロセスが見えていません。

目的達成のためのプロセスが分析できていません。
だから、何年勉強してもプロになれないのです。

わたしの講座受講生にも5年、10年、15年と
「お勉強」は続けてきたけど、トライアルにまったく歯が立たない、
その理由が分からないので悩んできたという方が相当数在籍されています。

出口を見て入り口を設定するという「出口戦略」がないまま、
ただただ長年「積み上げ式」の勉強を延々続けてみても、
プロになって稼ぐという目標には到達できません。

資格ビジネスや認定ビジネスは、ビジネスを仕掛ける側の論理で動いています。

それを冷静に分析することなく英語力アップ至上主義で突進し続けると
人生をドブに棄てることになりますから、注意してください。

まとめ

まずは、「目標」を設定し、
その目標に到達するために必要なものを抽出して下さい。

そして、早い時期に「トライアル」を経験し、
合格に何が足りないのか、その「差」を見つめて下さい。

そしてその「差」がわかったら、
その差を、どれぐらいの期間で、どのようにして
どの順番で埋めていくかを考えて下さい。

最短で特許翻訳者になるためには、まずは英語力をあげてから
「トライアル」と「積み上げ」ていくのではなく、

トライアルに合格するにはどうすればいいのか
という「逆算」で考えることが何より重要なのです。

<追伸>

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特許翻訳者になったら、「稼働率維持」が問題になります。

気が向いたときだけ仕事をします、みたいなライフスタイルは
翻訳フリーランスには許されていません。

会社員が副業でやるなら、うまくはまるケースもあると思いますが、
それはそれで条件がかみ合うことは少ないです。

高給サラリーマンなら、副業の仕事が来たり来なかったりでも平気でしょうが
それでは、わざわざ副業で特許翻訳をやっている意味がありません。

では、高稼働率を維持するためには何が必要でしょうか。

結論から言うと、守備範囲の広さです。
幅広い専門分野に対応できる力が必要となります。

今回は、ある分野から他分野へと守備範囲を拡げる際に役立つ
アナロジー思考」についてご紹介したいと思います。

特許翻訳者が守備範囲を広げるべき理由

仕事を割り振る翻訳会社も、社員に給料を支払う等
固定費を捻出するためには稼働率を上げる必要があります。

となると、会社としては仕事を選んではいられないというのが本音でしょう。

ですから、いろんな分野に対応できる
(処理速度と品質という条件クリアが前提)レギュラー陣がいれば、
そのメンバーを中心に事務所の仕事を回そうとするのは自然の流れです。

ここで問題となるのは「理系の翻訳者」です。

彼らの中には、自分の専門分野に強いこだわりを持つ人がいて、
「XXXしかやりません。」と言ったりしますが、
はっきり言って「困ったチャン」です。

なぜなら、割り振る仕事の専門分野を限定されてしまうと
コーディネータとしては仕事がやりにくいからです。

結果、徐々に疎遠になり、最悪、その登録翻訳者はフェードアウト
(切られるというやつですね)してしまいます。

そこまでいかなくても、翻訳対象の専門分野を限定してしまうと、
その分野の仕事が運良く回ってきたときに、
今度は自分自身のスケジュール調整が難しくなり、
他の翻訳者に仕事が流れてしまうリスクがあります。

この時、副業だったらまだしも、専業でこのようなスタイルを貫くと
稼働率が上がらないまますなわち年収が上がらないままとなり、
自分の首を絞めてしまうことにもなりかねません。

プロとして安定稼働する、希望の年収レベルを維持するためには、
たとえ専門を持つ理系であってもその専門分野に固執することは
避けなければなりません。

まして、文系であるならなおさら。幅広く仕事を獲得できるように
スキルアップを継続し備えておく必要があります。

専門分野を持たないということは、
本人がより積極的に幅広い得意分野を打ち出さない限り、
理系に比べて不利な扱いを受ける可能性があるからです。

同じように得意分野として打ち出しているのなら
文系のXXさんに御願いしようと思われるぐらいのブランディング
(相手に対する認知)が必要です。

では、具体的にどのようにすればいいでしょうか。

ここでは、ある分野から他分野へと守備範囲を拡げる際に役立つ
アナロジー思考」について、具体例を挙げながら
説明していきたいと思います。

化学はできるけど、機械は苦手。
バイオは得意だけど、化学はダメ。

こういう方は是非、日頃の勉強にこの思考力アップのための
トレーニングを取り入れてみて下さい。

具体例(分離技術)

ここでは分離技術を取り上げてみます。

化学の世界では、様々な成分が含まれる混合物を
分離する技術が必要となります。

どんな成分があるかを確認するための「定性」分析と、
各成分がどのぐらいの割合で含まれるかを確認するための「定量」分析があり
そのために用いられる技術の一つに「クロマトグラフィー」というものがあります。

この言葉に遭遇した知識ゼロの文系翻訳者が
どのようにアプローチするかという仮定で話を進めていきます。

キーワード候補を探す

キーワード候補を探すための
サジェストツール(http://kouho.jp/)を使いましょう。

Google検索で、「クロマト」と入れると候補リストが入手できます。

ある装置の「仕組み」や「原理」が分からないと
その先の話が理解できませんから、得られたサジェストの結果から
「原理」「種類」「基礎」「意味」などを中心に検索をします。

その際に、その装置を主力製品の一つとして販売している企業名
組み合わせるのも一つのテクニックですし、
表題部分にキーワードが入っているものを検索したり、
ファイルタイプをpdfに指定したりするのも有効です。

どのような検索オプションがどの程度有効かは経験から学ぶ必要があります。

Research

ここでは、「allintitle:クロマト 原理」を使ってみます。

この検索式allintitle:」は、
「クロマト」「原理」の両方がタイトル部分に入っているページを
検索するためのものです。

なお、検索式については、まとめたページがネット上に
多数がありますので調べてみてください。

また、クロマトにはいくつか種類があるのですが、
そこから入ると確認する知識が増えてしまいますので、

新しい概念に遭遇した場合は、
今回のように「原理」から入るのがコツです。
大枠から入り、細部に進むという順番です。

概念(原理)の把握

検索結果のページが表示されたら、「画像」に切り替えます。
画像の中からできるだけシンプルなもの(簡略化されていそうなもの)
を表示させてみます。

【図1】

20161006-1
(参照:http://www.gls.co.jp/technique/technique_data/basics_of_gc/p1_3.html

【図2】

20161006-2
参照:http://tsunepi.hatenablog.com/entry/2014/04/27/210615

【図3】

20161006-3
参照:http://analysis.ikaduchi.com/gpc.html

上記の3つの図を見てみると、

どうも最初は同じスタートラインにある複数の異なる「成分
(色や大きさが異なる粒子のようなもの)が一斉にスタートして
競争したとき、進む速度が違うため差がついているように見えます。

ただ、同じ場所(経路)を移動する「成分」に生じる
移動速度(移動距離)の差が、「成分」が自分で走って生じた
とは考えられません。人間のように走るわけではありませんから。

Run. Sport for All.

アナロジーの活用

砂利が河川で運ばれる場合のように、
重い成分ほどゆっくりと運ばれると仮定すると、
成分の重さ(質量)に着目した分離しかできないことになりそうです。

上記の各図の説明を読むと分かるのですが、
「流れる成分」と「その周りにあるモノ」との「相互作用」が
進行速度を決めています。

「相互作用」というと難しそうですが、
あなたがマーケットで買い物をする場合、
興味のある商品が並んでいるお店の前にくれば立ち止まるし、
買うつもりなら品定めのためにさらに長時間足を止めるはずです。

これが「相互作用」です。
あなたの嗜好とお店の商品との間にある「相互作用」です。

成分についてこの相互作業を考える際には、
その成分の何に着目し、その成分の相手に何を配置するか(組み合わせるか)
がポイントになりそうです。

Robot pointing at invisible object.

もし、成分の大きさに着目するのであれば、
相手は小さな孔を無数に有するものにすれば、
小さい成分はその孔に入り込むのに対し、大きい成分はそのまま素通りです。

これで進行速度(同時に移動距離)に差を付けることができます。

もし、電気のプラス(+)とマイナス(-)のような関係があれば、
両者が引きつけ合ってなかなか前に進まない(進めない)ことになります。
こうして、移動速度に差が生まれることになります。

この相互作用の違いが幾つかあって、
それらの組み合わせ(ペアリング)が、
クロマトの種類に対応しているのではないかと推測できます。

そこで「allintitle:クロマト 種類」で検索すると、
クロマトグラフィーの種類と分類(https://www.lasoft.co.jp/chromdoc/chrom.asp?sub=chromat4
がヒットします。

もし、実ジョブでここまでの準備作業をしているとすれば、
ここでやっと、実ジョブとしてやっているクロマト(グラフィー)が
どのタイプに該当するのかの確認作業に入れます。

専門用語への変換

「種類と分類」についての上記ページにある表を解読するためには、

「相」の概念と「気体」「液体」「固体」の種別、
「移動相」「固定相」の違いについての理解と、
それらの組み合わせによりどのような「相互作用」が期待(利用)できるか
という分類の視点が必要です。

逆に言えば、これらの知識確認が済んでいるのであれば、
クロマトは自分の得意分野にできるレベルまで来ていると言えます。

Close up of a dart that has nailed a bulls eye in the center of the dart board. Shallow depth of field.

原理から入り、アナロジーを使って身近なものにたとえて、
そこで使った概念を専門領域のキーワードに転換する力さえあれば、
後は高校レベルの知識補充・確認をすれば、特許翻訳者としては
十分通用します。

いきなり難しいと決めつけないで、たとえてみるアナロジー思考
そして図解(概念化、可視化してみるというクセをつけましょう。
後は、類似の特許を数多く読むだけです。

専門知識の補充

誤解のないように付け加えておきますが、
当業者が常識的に有する知識確認は怠りなく行って下さい。

ここでは、「相互作用」がそれに該当します。

特許明細書の原稿を執筆する人・作成する人・読む人は「当業者」です。
わかりきったことについては説明してくれません。

例えば、「化学 相互作用」で検索した際にヒットするページ
http://kusuri-jouhou.com/sayou/sougosayou.html)から、
相互作用には何種類かあることが分かります。

・ 共有結合
・ イオン結合
・ 双極子-双極子相互作用
・ 水素結合
・ ファンデルワールス力
・ 疎水性相互作用

あとは、これらの語句を個別に検索したり、
他のサイトも見てクロスチェックして正確性を担保したり、
定評のある化学事典で確認するなどして、知識補強をします。

文系の中は、理系ならどんな技術的な内容でも理解しているはず
と思っている人もいるようですが、クロマトに使われている
相互作用について体系的に説明できる人(本を見ないで)は、
化学を専門にしている人であっても少数派です。

理系には、どうせ勝てない、どうせ無理、どうせ難しすぎる、
といった先入観は、理系を過度に利するだけですから、やめてください。

短期間の独学でプロになれる人

文系で専門知識ゼロなのに、数ヶ月の集中的学習で
プロの特許翻訳者になってしまう人がいます。
少数ですが、確かに存在します。

多くはこのアナロジー思考を身につけています。

本人が意識的に使っているのか、無意識的に使っているのかは不明ですが、
この力が備わっていなければ、短期間で限定的な知識を起点にして
広範囲の専門的な文書を読み解くための手がかりを入手することはできません。

そして、この限定的知識からの展開力こそ、再現性のあるスキルであり、
一度身につけることができれば、長年にわたって活用できる
一生モノのスキル」ということになります。

アイデアの借用や組み合わせができる等の思考力があってこそ、
知識量に依存することなく、新しい分野の特許を読み解くことができるのです。

まとめ

アナロジー思考は、未知を知に変える力、
発想そのものを生み出す力です。

これがマスターできれば、あとは高校レベルの基礎知識を押さえ、
数多くの特許明細書を読み込んで可視化し、まとめるという努力を
積み重ねることで、特許翻訳は独学でマスターできるはずです。

逆に、ここが理解できていないと
「理系の大学に進んでやり直さないとダメなんだ。」
という発想に行き着くことになります。

これでは特許翻訳のプロになって稼ぐという目的から見て
大きく遠回りしてしまいます。

わたしが主催している特許翻訳講座は、
この発想を1年以内に身につけ実践し、
プロの特許翻訳者になるまでの期間を短縮するための
加速装置」に過ぎません。

当たり前のことを当たり前にやっているに過ぎないのです。

<追記>

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この業界では、

英訳ができて翻訳者として一人前」
「文系女子は英語ができるから英訳者を目指すべき」
「和訳できる人は多いが、英訳できる人は少ないから、
英訳者は引っ張りだこ」

といった定説というか、都市伝説みたいなものが
まことしやかに語られています。

しかし、これって本当でしょうか?
それについてちゃんと考えてみたことがありますか?

無防備に信じているのではありませんか?
どこかの雑誌が書いているから、そう思っているのではありませんか?

スクールのパンフレットにそう書いているから
そう信じているのではありませんか?

誰かがそう言っているから、
業界の有名人がそう言っているからそうなんだろう、
で終わっているとしたら、優秀な翻訳者と評価されるのは
恐らく難しいと思います。

今回は、具体的な特許を取り上げて、
こうした「都市伝説」に迫ってみたいと思います。

ちなみに、今回取り上げるのは以下の特許です。

特許庁の特許情報プラットフォームにアクセスし、
特許・実用新案番号照会に下記公開番号を入力して検索してください。
入手した全文ファイルを印刷し、記事をお読み頂ければと思います。

【公開番号】特開平7-211631
【発明の名称】多層レジストパターン形成方法
【出願人】エルジイ・セミコン・カンパニイ・リミテッド

 Method for forming multi-layer resist pattern

特許の概略を理解できるか?

今回取り上げたのは、半導体リソグラフィーの特許です。
まず、下記「背景」部分を見てください。

BACKGROUND OF THE INVENTION

The present invention relates to photolithography processes,
and more particularly to a method for forming a multi-layer resist pattern
capable of achieving improvements in resonance and alignment of a
multi-layer resist and preventing a generation of a charge-up effect
in an exposure to electron beams.

本発明は、写真エッチング工程に関し、
特に多層レジストの解像度と整列度を向上させ、
電子ビーム露光の際、電荷蓄積効果を防止することができる
多層レジストパターン形成方法に関する。

当業者」とは、特許出願された発明の属する技術分野における
通常の知識を有する者のこですが、当該分野について
「当業者」と同等レベルの背景知識を有しない特許翻訳者は、
まずこの背景部分を読んでください。

そして、そこを読んで「ああ、あれか。」と、
特許の概略が把握できれば問題ありません。

しかし、「何を言っているのだろう。」
「何の特許か、さっぱり分からん!」ということであれば、
完全なる知識不足です。

いきなり特許分析から始めても歯が立たないと思いますので、
当該分野の知識獲得から始めて下さい。

なお、本件については、下記関連書籍がオススメです。

(関連書籍)

 

 

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はじめての半導体プロセス [ 前田和夫 ]
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半導体プロセスは、現場経験がモノを言います。
特に、前田さんの本は、私が半導体プロセスをはじめて勉強する際にも
参考にさせていただきました。特許検索のヒントも満載でおススメです。

その他、標準技術集(半導体製造装置関連真空・クリーン化技術)内で、
出典/参考資料として引用されている書籍定評があります。

なお、上記英日ペアにおいて、
英文側の「resonance」(共鳴・共振)は
「resolution」(解像度)の間違いですし、
「surface」は「平面」ではなく「表面」です。

さらに、

日本語側の「写真エッチング」は「フォトリソグラフィー」
「整列度」は「アラインメント」(位置合わせ精度)
「電荷蓄積効果」は「チャージアップ」(帯電)

と、それぞれ修正するのが当業者には理解しやすいと思いますが、
本記事の論点はそこにはありませんのでここでは詳細な説明はしません。
詳しくは、上記書籍でご確認ください。

まず「背景」を読んでいただいて、
半導体リソグラフィーにおける多層レジストを用いた
パターン形成方法についての特許だな。

多層プロセスにすることで、解像度と位置合わせ精度を向上させ、
チャージアップを防止するんだな、と分かれば問題ありません。

対訳の検討(日本語→英語)

問題は、次の文章です。

As the design rule in device design for fabrication of integrated circuits
becomes strict, steps present on surfaces of semiconductor devices serve
as a limitation on pattern formation.

集積回路を作成するデザインルール(design rule)が、
きびしくなるにつれ、半導体素子の平面に存在する段差が
パターン形成時の制約原因となる。

英文と日本文を対比してみる

訳文は「~につれ」とあります。

その日本語訳を正しいと仮定すると

「as」を「~するにつれて」と訳することになりますが、
だとすると、「As the rule – becomes strict」という英語表記は
おかしくはないでしょうか?

この文章をできるだけ生かそうとするのであれば、
「strict」が比較級(stricter, more strict~文法的には、
stricterですがmore strictもかなり使われています)となって、
「As the rule becomes stricter」となるはずですが、

英語の原文にまさか修正を入れるわけにもいきません。

このように、日本語と英語をペアで見ることで、
公開されている特許であっても、訳文に「?」が付くものが
実は多いことに気が付くはずです。

ちなみに、「デザインルール」というのは各デバイスメーカーで異なり、
半導体素子のレイヤーごとに線幅、線間、配線ルールが定められています。

一般論として、「デザインルール」という場合、
ゲート長・配線ピッチなどの「寸法」を想定したルール
となっていますので、詳細については、
以下のサイトにある各ドキュメントを参考にしてください。

用語集の作成の元ネタ

用語集を作成しようと思ったら、このような文書から収集して下さい。

半導体技術ロードマップ専門委員会(http://semicon.jeita.or.jp/STRJ/ITRS/)

当業者の言葉遣いは、翻訳者や翻訳スクールからではなく、
専門家・学会・業界団体の公開文書等から学ぶのがおススメです。

対訳の検討(英語→日本語)

「きびしくなるにつれ」の英訳を依頼されたと想定して検討してみましょう。

1stステップ

まずは、自分であたりをつけた「As the design rules become stricter」
でフレーズ検索してみます。

検索結果ですが、これを書いている時点で、以下の1件のみがヒットしました。

Assessing benefits & costs of
vehicle emissions testing in Australia …

As the design rules become stricter with time,
vehicles that are sold become less emitting.

ヒット数そのものが少なすぎることと、半導体関連のものが
ヒットしなかったことから「As the design rules become stricter」
という英訳に「?」が付くと思われます。

2ndステップ

ここでいま一度、落ち着いて考えてみましょう。
そもそもルールが「厳しくなる」とはどういう意味でしょうか?

下記の2つの解釈が成り立つと思います。

1つは、ルールをクリアするのが「難しい」という意味であり、
もう1つは、ルールの「適用を厳しくする、厳格にする」という意味です。

まず、前者の意味だと仮定してみます。

従来、例えば線幅1ミクロンを基本に回路が設定されていたとすると、
配線については「1ミクロンルール」なわけです。

それが、同じチップサイズの中に、より高密度に回路を集積するため、
回路の線幅を1ミクロンから「0.5ミクロン」に半減させたなら
これは、技術者にとっては新たなハードルであり、
確かに「厳しい」(難しい)と言えます。

では、「厳しい」の英語は「strict」なのでしょうか?

この場合は、ルールの受け手の「主観」が反映されていますので
「strict」では無理があると思われます。

次に、後者の意味だと仮定してみます。

1ミクロンルールだろうが、0.5ミクロンルールだろうが、
適用を「厳格」にするなら「strict」です。

逆に、0.5ミクロンルールでもいいし、
場合によっては、1ミクロンでも2ミクロンでも、
現場の技術者が適当に決めればいいというのであれば、
0.5ミクロンというスペック自体は確かに「厳しい」ですが、
ルールの適用基準はいい加減ですから、「strict」だとは言えないのです。

もしも「厳しい」という言葉が、「適用基準が厳格だ」
という意味だとすれば、ここでの「strict」は「be strictly applied」
とでも表現すべきです。

実際、「”rule * strictly applied”」でフレーズ検索してみると、
大量の例文がヒットしますので、
これが一般的に使用される表現だと分かります。

加えて、半導体におけるルールが、
「寸法そのもの」を指すこともあると知っていれば、
「線幅が小さくなることだ」と解釈できますから、
「becomes smaller」「miniaturized」「shrinked」などで
表現することも可能です。

例えば、以下のような表現が実際に使われています。

As the design rule of lithography becomes smaller, accuracy and
precision in Critical Dimension  (CD) and controllability of
pattern-shape are required in semiconductor production.

As the design rule is miniaturized, the device operates
with higher speed and lower power.

The yield and device characteristics in LSI have become
more sensitive to their process variation,
as the design rule is more shrinked and larger wafer is used.

では、この特許を書いた「出願人」の真の意図はどこにあったのか?
と問われると、申し訳ありませんが、本人に聞かない限り分からない
としか答えられないのです。

このように、英日ペアをたった1文見ただけでも、
様々なことを検討する必要があることが
お分かり頂けたのではないかと思います。

出願人の意図を探る

半導体プロセスでは、多数の層を積み重ねていくので、
何も対策をしなければ下地の段差の影響がそのままその上の層に
及ぶことになります。

レジストを塗布する場合に、このことをあてはめてみると、
塗布したレジスト層の厚みにばらつきが生じることになります。

そして、厚みが異なれば、下地までのエッチング時間が異なり、
このエッチング時間のばらつきが横方向の線幅にばらつきを
生むことにもなります。

これにより、線幅制御も困難となりますし、加えて
この段差を吸収させるために厚く塗布したレジストは
縦方向(レジスト厚み方向)での光学系のデフォーカス等による
解像度の低下をもたらします。

つまり、段差は、「解像度の低下」及び「線幅制御」の両方に
悪影響を与えることになるのです。

ここで、再度原文を見てみましょう。

As the design rule in device design for fabrication of
integrated circuits becomes strict, steps present on surfaces of
semiconductor devices serve as a limitation on pattern formation.

ここまで見ても、

デザインルールがより「シビア(実現困難)」になってしまうことと、
このシビアなデザインルールを「厳格に適用」すること、
つまり、高度な線幅制御を行って誤差を最小限にすること、
という2つの解釈のうち、原文がどちらを意味しているのかは
やはり不明であると思われます。

結局のところ、この文章で言いたいことは、

「半導体がどんどん高精細になると、
回路のサイズがどんどん小さくなるから、
段差のある上にパターン形成することはどんどん難しくなる。
細かい回路が画けないだけでなく、線幅制御も難しくなる」
ということでしょう。

原文をいじることができない翻訳者としては、
せいぜい「コメント」をつけて納品し、あらぬ誤解をされないように
保険をかけておくことしかできませんし、
またそれはあなたにとって大切なことだと思います。

内容理解が訳文品質に反映されない場合もある

集積回路を作成するデザインルール(design rule)が、
きびしくなるにつれ、半導体素子の平面に存在する段差が
パターン形成時の制約原因となる。

この日本語訳文作成時に、翻訳者がどこまで読み取っているかは
不明ですが、結果として、この和訳に関しては、

何らかのコメントを付けて納品しない限り、
納品先の評価者には、適当に翻訳した納品物と、
色々な検討を行った上で翻訳した納品物が同じであることから、
「訳質の差」を認めてもらえないことになってしまいます。

しかし、だからといって文字面だけ見て、
言葉の置き換えだけやっていては、
何時まで経っても実力は向上することはないのです。

英訳の品質向上には内容理解が必須

本件和訳では、慎重に検討したケースと適当に置き換えたケースで、
訳質に大差ない結果となりましたが、訳質に大差が生まれる場合もあります。

それは、英訳の場合です。

英訳の場合、翻訳者の内容理解の程度によって
選択すべき「動詞」や「構文」が大きく変化する可能性があります。
すなわち、自由裁量が増える分、実力差が出やすいのです。

英語が得意な文系女子が英訳を好むのは、
仕上がりの英文がクライアントにけちを付けられにくいから
という話を聞いたことがあります。

クライアントのレビュー担当者は英文読解が苦手だから、
英文のチェックが日本語に比べて甘いから、というわけです。

しかし、そこに甘えて英訳を続けていると、ある日突然、
契約を打ち切られる可能性があります。

事実、英訳ではクレームがほとんどないベテラン英訳者が、
和訳の案件を担当したとたんにクレームを受けるというのは、
クライアントが日本語ネイティブであるために誤訳を指摘されやすい
ということが影響している可能性があります。

ある外資系特許翻訳事務所の社長(英語ネイティブ)に
この話をしたところ、

「日本人の英訳は、米国特許庁の審査官からみて
一般的に品質に問題あると思われている。

ただ、審査官が移民の場合、英文ではなく図面をヒントにして
内容把握していることもあるから、よほど酷いもの以外は
スルーしてしまって、問題になりにくいのではないか。」
とのことでした。

真偽の程はともかく、和訳も英訳も、
正しい内容の理解がなければ意味がありません。

トップレベルの翻訳者になるためには、
下記の能力が必要になると思いますが、

英訳が得意だという英語女子は、
おそらく「③の力」は優れているのでしょうが、

その力が発揮されるのは、その基礎となるべき「①②の力」
すなわち、内容を伴った日本語の正確な理解があってこそだと思います。

ですから、

英語が得意だから「英訳」と単純に考えるのではなく、
本当に訳質に問題がないのか、内容をどこまで正確に理解しているのか
を意識して明細書を読む訓練をお勧めします。

まとめ

和訳も英訳も、内容の正確な理解力がなければならない
という点では何ら変わりありません。

英語ができるから「英訳者」・・というような安易な考えは
通用しないということは、ぜひ心に留めておいて下さい。

<追伸>

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コーパス言語学とは、「言語学」の一分野であり、
コーパス(言語資源;言語研究に使用するために大量に収集された
「書き言葉」および「話し言葉」のテキスト)をある種の処理
(キーワードを中心に前後に文脈を表示する)を施して分析するという
言語分析一般を指します。

この分析の有効性の前提として、「人間が使用する言語の殆どが
“決まり文句の組み合わせ”である」という事実があります。

特許翻訳のためのコーパスとしては、
特許庁のデータベースに公開・搭載されている特許明細書を使用します。

ここでは、実際に特許明細書を収集してどのような分析ができるのか、
その分析の有効性、そして分析結果を特許翻訳に
どのように役立てることができるのかについて具体的にお話しましょう。

翻訳者のためのコーパスの収集

コーパスとは、実際に使用されている言葉です。
となると、特許翻訳に必要なコーパスは「特許全部」
ということになりますが、それではコーパスとして活用できません。

なぜなら、目的に合致した良質なコーパスを集める必要があるからです。

なお、「良質」とは、これから特許翻訳する上で役立つもの
ということになりますから、その目的に合致しないコーパスを
準備しても無意味です。

ここでは、ある分野の特許翻訳をする前提でコーパス収集をしてみましょう。

ちなみに、英語表現全般とか、日本語表現全般とかを対象としたコーパスは
商用のものがいくつか存在しておりますので、そちらをご確認ください。

下表は、対訳収集ソフトE’Storage2016を使って取得した
3M社の粘着テープの特許一覧です。

20160823-1

いろいろな会社がある中で3M社を選んだのは、
3M社が粘着テープの特許を大量に出しているためです。

つまり、このコーパスを収集する人は、粘着テープ関連の特許翻訳の仕事を
しようとする人(又はこれからこの分野を得意分野にしようとする人)で
この分野では3M社がメジャープレーヤーであることを知っている
ということが前提です。

ここまでの絞り込みが自力でできない初心者は、
まずはそこをクリアするための勉強をしてください。

ここで使用した検索式は、
「adhesive and tape in the title AND 3M as the applicant」で、
特許のタイトル部分に「adhesive」及び「tape」を含むものという意味です。

もし、既にE’Storage2016をお使いでしたら、
同一環境を構築しながら読み進めていただければと思いますが、
仮に現在お持ちでなくても、その先の分析は行っていただけますので
そういうソフトがあるのだと認識して、読み進めていただければ大丈夫です。

では、上記表中で一番上にある特許をコーパスとして
使用してみることにします。

「PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE COMPOSITION,
CONDUCTIVE ADHESIVE COMPOSITION AND ADHESIVE TAPE
MADE THEREFROM」(US2016230052)ですね。

このファイルを開き、「Abstract」以下を秀丸などのエディタへ
コピー&ペーストして、任意の場所にテキストファイル形式で保存して下さい。

コンコーダンサーの導入とファイル指定

コンコーダンサーとは、コーパス分析ソフトです。

この種のソフトはいくつか存在しますが、
ここでは、KWIC Concordanceを使用します。

こちらのソフトは「フリーウェア」で無料ですので、
ダウンロードしてお使いのPCにインストールしてみてください。
起動すると、以下のようなウィンドウが表示されます。

20160823-2

FileOpen」と選択して、

20160823-3

Corpus Files」タブを開き、

20160823-4

先ほどテキスト形式で保存したファイルを指定します。

ここでは、デスクトップ上に保存してあったファイルを
ウィンドウの中にある大きな枠内へドラグ&ドロップして、
分析対象のファイルとして追加しました。

20160823-5

コーパス分析ソフトを使った分析

では、実際に分析してみましょう。

「Wordlist」をクリックすると、左に縦長のウィンドウが表示されます。

ここでは、「アルファベット順」に表示されていますので、
これを出現頻度順に変更してください。

単語の出現頻度というのは、その文書を特徴づけているものです。

20160823-6

ただし、下表でベスト3になっている「the」「of」「and」などは
文章の内容を特徴づけてはいませんので、あくまで文章の内容と
関連性の高いものを選択する必要があります。

20160823-7

ここで関連性の高いものとその出現頻度を上位10個書き出してみると、
以下のようになります。

20160823-8

この中で一番特徴的(特異的)な言葉は、benzoxazineでしょう。

「benzoxazine ベンゾ」で検索してみると、
ベンゾオキサジン」と読むことが分かります。

次に、特徴的なのは、「methacrylateメタクリレート」でしょう。

これらが、化合物であることが分かりますから
(「ベンゾオキサジン メタクリレート 粘着 テープ」等で検索すれば、
化合物であることは分かるはずです。)これらが成分として含まれていて、
熱的に(thermally)に硬化する(curable)のであろうと推測できます。

問題は、「electrically」(電気的に)ですが、
「conductive」と組み合わされて「electrically conductive」という表現で
使われる場面が多ければ、「導電性」という性質を持つ材質(テープの素材)
なのではないか、と推測可能です。

そこで次に、「Collocate」をクリックし、

20160823-9

「Keyword」ウィンドウを表示させ

20160823-10

そこに「conductive」と入力して、「OK」をクリックします。

 そうすると、下表が表示されます。

20160823-11

「conductive」のすぐ左側(L1)には、「electrically」が74個あり、
本明細書中では「electrically conductive」(導電性)の意味で
使われていることが判明しました。

先ほどの推測が正しかったことになります。

このことから、本発明は組成物中に
メタクリレート」と「ベンゾオキサジン」とを含む、
導電性」の「粘着テープ」であると推測できます。

翻訳前作業の省力化

次に、「methacrylate」(メタクリレート)で同様に検索すると、
下表が得られます。

20160823-12

この表で見えてくるのは、

モノマー成分としてのMMA(メタクリレート)と
重合体のPMMA(ポリメタクリレート)、そして
共重合体成分の「ベンゾオキサジン」の性質や比率がポイントなのではないか
ということです。

もし、この分析ができないとすると「高校レベルの化学」の基礎が
できていないということですから、そこを補強する必要があります。

当該分野の専門家(当業者)でない翻訳者が、
翻訳対象が概ねどのような内容なのかを初見で短時間で把握できるかどうかは
その後の翻訳作業に大きな影響を与えます。

ここまでの分析から、

翻訳前作業(準備作業)の一環としての内容把握に対して、
「コンコーダンサー」が威力を発揮することが
おわかりいただけたのではないかと思います。

コーパスの改善

コーパスは一回作成して終わりではありません。

どんどんファイルを追加し、また余計な(無関係なファイル)を削除して
バージョンアップしていくことで、より当業者の頭の中に
近づくことができます。

今回は、3M社の特許を取り上げましたが、
同じ3M社の粘着テープ関連のファイルを大量に収集して
コーパスとすることで、3M社の粘着テープ関連特許の出願傾向を
分析することもできますし、

また、キーワードを中心としたコーパスにすれば、当該分野における
開発動向を複数社にまたがって包括的に分析することも可能です。

また、今回は英文を扱いましたが、日本語のコーパスを別途用意し
同様に分析し、両者の分析結果を比較することで、
対訳集として活用したり、用語集収集の素材として
活用したりすることも可能です。

要は、「クライアント特化型」にするか、「開発テーマ特化型」にするか、
コーパスの性格を選ぶことができるわけです。

まとめ

短時間で当業者の知識レベルに近づくために、
コーパスやコンコーダンサーは利用価値がとても高いです。

もしプロの特許翻訳者を目指すなら、初期の段階から
コーパス言語学に慣れ親しんでおくことが望ましいと思います。

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特許翻訳は法律文書でもある。だから法律の勉強も必要だ。

ここまで良いとして、「じゃあ特許法も勉強するか・・・」
となる人が多いのではないでしょうか。

でも、ちょっと待ってください。
特許法ってどういう法律なのかご存じですか?

まずは、特許法の位置づけから考えてみたいと思います。

特許法は、民法の特別法

特許法は知的財産法の一つですが(知的財産権の種類 | 日本弁理士会
この知的財産法は民法の特別法です。

特別法というのは、適用の対象が特定の事物・人・地域など
特別のものに限られている法で、このような制限のない
一般法に対する語であり、特別法は一般法に優先し、
一般法は特別法に規定のないものについて補充的に適用されます
(以上、内田・民法I、有斐閣・有斐閣法律用語辞典等参照)

つまり、民法の基礎的理解が知的財産法の勉強には必要となります。

知的財産法の知識しかない場合、知的財産法自体を正確に理解することは
できないことになります。民法の用語・概念を正確に理解していることが
知的財産法の理解の前提となるのです
(以上、民法でみる知的財産法・第2版参照)。

特許翻訳者が法律の勉強をするきっかけというのは、
中間処理への対応を迫られた場合かも知れません。

確かに、中間処理には法律の知識が必要と言われ、
法律特有表現について学ぶ講座・セミナーもあるようです。

しかし、法的文章を書いた人は法律家ですから、
その文章は、法律家としてのリーガルマインド(法的思考力)及び
法的論理力を前提として読み解く必要があります。

単に、中間処理特有表現・定型文の収集のみで対応できるはずがありません。
法律家どうしの「攻撃」「防御」がそこにあるのですから。

従って、一見遠回りのように見えても、定評のある法学書を用い、
特許法の一般法である民法を学ぶところから始める必要があるはずです。

そうでなければ、「法律実務家の英語表現を学ぶ」という表層的な勉強で
終始してしまい、内容理解からはほど遠いものになってしまいます。

リーガルマインド(法的思考力)は、英語表現だけを覚えて
パターンにあてはめるだけでマスターできるはずがありません。

ここでは、独学でリーガルマインドを身につけたい人のために、
必読書のいくつかを紹介します。

なお、弁理士だからと言って、民法から特許法を理解しているとは限りません。
直接学ぶ機会があるのであれば、弁護士(あるいは弁理士資格を持つ弁護士)
から学んでください。

特許翻訳者のための法律入門書

リーガルマインドとは何かについて、司法試験(旧制度)合格者が
その体験談からまとめたものです。2冊ともお勧めです。

 

 

 

 

特許翻訳者のための民法入門書

遠くに飛ぶためには低い姿勢から飛び出しましょう。
いきなり特許法を勉強するのではなく、まず民法を勉強しましょう。

民法は基本六法(憲法、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、商法)
の一つであり、特許法から見て一般法にあたります。

「特別法は一般法を破る」と言われるように、
ある特定の事項について特別法がある場合には、まず特別法を適用し
特別法に規定のない場合にのみ民法を適用することになります。

つまり、特別法である特許法で解決できない箇所は、
一般法である民法に遡る必要があります。

特許法と民法とはコインの裏表のような関係にあるとも言えます。
そして民法を学ぶなら、師と仰ぐべき人はただ一人、
我妻榮先生以外に考えられません。

まずは、イントロにあたるこの1冊を入手してください。
法学を学んだ者でこの本を知らない人はいないと言われるほどの名著です。

入門書

民法案内1

この本で法律学習の基本を理解したら、いよいよ総則以下に入っていきます。
大切なのは、各巻を相互参照すること、六法全書・法律辞典を
丁寧に引くことです。

総則

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物権・担保物権

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民法案内 6 担保物権法 / 我妻栄 【全集・双書】
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債権総論・債権各論

 
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契約総論・各論

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民法案内 11|上 契約各論 / 我妻栄 【全集・双書】
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民法の名著は数多くありますが、まずは民法案内を読み進めてください。
あとは、必要に応じて買い足せば十分です。

民法から特許法への理解

この本の著者は弁護士です。民法から特許法へ連続的理解が
可能なように配慮して説明されています。

民法案内全体を読み進むのは難しいという方は、
「私法の道しるべ」を読んだ後にこの本を読み、
関連箇所のみ民法案内を参照するという手もあります。

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【送料無料】 民法でみる知的財産法 / 金井高志 【単行本】
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判例集

法律の条文は抽象度が高く、判例にあてはめて見ないと理解が困難です。

判例集は揃えて参照判例が出てきたらチェックしてください。
事案を図解すること、判例のポイントとなる要旨から射程範囲を
把握することが大切です。

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民法判例百選 総則・物権 I 別冊ジュリスト / 潮見佳男 【ムック】
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民法判例百選 債権 2 別冊ジュリスト / 中田裕康 【ムック】
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最後に

中間処理というのは、それだけで稼働率を確保できるほど
ボリュームゾーンの仕事でもなく、また、手間がかかる割に報酬が低い
ということで特許翻訳者には必ずしも歓迎されていないと思います。

けれども、特許翻訳のレベルを上げるために経験する価値はあると思います。

ただ、順番は間違えないで下さい。

まずは、特許翻訳で安定稼働させること。
そして、少しずつ法律の勉強時間を確保しつつ、
長く特許翻訳を続けられるレベルアップの一環として
中間処理も経験する方向で検討したらいいと思います。

<追伸>

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