特許翻訳は法律文書でもある。だから法律の勉強も必要だ。
ここまで良いとして、「じゃあ特許法も勉強するか・・・」
となる人が多いのではないでしょうか。
でも、ちょっと待ってください。
特許法ってどういう法律なのかご存じですか?
まずは、特許法の位置づけから考えてみたいと思います。
目次
特許法は、民法の特別法
特許法は知的財産法の一つですが(知的財産権の種類 | 日本弁理士会)
この知的財産法は民法の特別法です。
特別法というのは、適用の対象が特定の事物・人・地域など
特別のものに限られている法で、このような制限のない
一般法に対する語であり、特別法は一般法に優先し、
一般法は特別法に規定のないものについて補充的に適用されます
(以上、内田・民法I、有斐閣・有斐閣法律用語辞典等参照)
つまり、民法の基礎的理解が知的財産法の勉強には必要となります。
知的財産法の知識しかない場合、知的財産法自体を正確に理解することは
できないことになります。民法の用語・概念を正確に理解していることが
知的財産法の理解の前提となるのです
(以上、民法でみる知的財産法・第2版参照)。
![](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/07/443250c9eeb40c938b46b27e86abceee.jpg)
特許翻訳者が法律の勉強をするきっかけというのは、
中間処理への対応を迫られた場合かも知れません。
確かに、中間処理には法律の知識が必要と言われ、
法律特有表現について学ぶ講座・セミナーもあるようです。
しかし、法的文章を書いた人は法律家ですから、
その文章は、法律家としてのリーガルマインド(法的思考力)及び
法的論理力を前提として読み解く必要があります。
単に、中間処理特有表現・定型文の収集のみで対応できるはずがありません。
法律家どうしの「攻撃」「防御」がそこにあるのですから。
従って、一見遠回りのように見えても、定評のある法学書を用い、
特許法の一般法である民法を学ぶところから始める必要があるはずです。
そうでなければ、「法律実務家の英語表現を学ぶ」という表層的な勉強で
終始してしまい、内容理解からはほど遠いものになってしまいます。
リーガルマインド(法的思考力)は、英語表現だけを覚えて
パターンにあてはめるだけでマスターできるはずがありません。
ここでは、独学でリーガルマインドを身につけたい人のために、
必読書のいくつかを紹介します。
なお、弁理士だからと言って、民法から特許法を理解しているとは限りません。
直接学ぶ機会があるのであれば、弁護士(あるいは弁理士資格を持つ弁護士)
から学んでください。
特許翻訳者のための法律入門書
リーガルマインドとは何かについて、司法試験(旧制度)合格者が
その体験談からまとめたものです。2冊ともお勧めです。
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特許翻訳者のための民法入門書
遠くに飛ぶためには低い姿勢から飛び出しましょう。
いきなり特許法を勉強するのではなく、まず民法を勉強しましょう。
民法は基本六法(憲法、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、商法)
の一つであり、特許法から見て一般法にあたります。
「特別法は一般法を破る」と言われるように、
ある特定の事項について特別法がある場合には、まず特別法を適用し
特別法に規定のない場合にのみ民法を適用することになります。
つまり、特別法である特許法で解決できない箇所は、
一般法である民法に遡る必要があります。
特許法と民法とはコインの裏表のような関係にあるとも言えます。
そして民法を学ぶなら、師と仰ぐべき人はただ一人、
我妻榮先生以外に考えられません。
まずは、イントロにあたるこの1冊を入手してください。
法学を学んだ者でこの本を知らない人はいないと言われるほどの名著です。
入門書
![民法案内1](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/07/c2c8a75751fbbfcc2f06f5ab0e07ebbe-205x300.jpg)
この本で法律学習の基本を理解したら、いよいよ総則以下に入っていきます。
大切なのは、各巻を相互参照すること、六法全書・法律辞典を
丁寧に引くことです。
総則
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物権・担保物権
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債権総論・債権各論
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契約総論・各論
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民法の名著は数多くありますが、まずは民法案内を読み進めてください。
あとは、必要に応じて買い足せば十分です。
民法から特許法への理解
この本の著者は弁護士です。民法から特許法へ連続的理解が
可能なように配慮して説明されています。
民法案内全体を読み進むのは難しいという方は、
「私法の道しるべ」を読んだ後にこの本を読み、
関連箇所のみ民法案内を参照するという手もあります。
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判例集
法律の条文は抽象度が高く、判例にあてはめて見ないと理解が困難です。
判例集は揃えて参照判例が出てきたらチェックしてください。
事案を図解すること、判例のポイントとなる要旨から射程範囲を
把握することが大切です。
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最後に
中間処理というのは、それだけで稼働率を確保できるほど
ボリュームゾーンの仕事でもなく、また、手間がかかる割に報酬が低い
ということで特許翻訳者には必ずしも歓迎されていないと思います。
けれども、特許翻訳のレベルを上げるために経験する価値はあると思います。
ただ、順番は間違えないで下さい。
まずは、特許翻訳で安定稼働させること。
そして、少しずつ法律の勉強時間を確保しつつ、
長く特許翻訳を続けられるレベルアップの一環として
中間処理も経験する方向で検討したらいいと思います。
<追伸>
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