翻訳者になるには何時間くらいの勉強が必要でしょうか?
人によって条件が異なるため一概には言えませんが、
講座を数年間運営してきた感触としては、
おおむね1500時間ほどが必要ではないかと思われます。
ただ、その1500時間は、ずっと一定の勾配ではなく
途中に超えるべき大きな山があるのです。
時間と習熟度の関係性(学習曲線)
翻訳者になるには、およそ1500時間が必要です。
けれども、それはあくまで「目安」であって、
みなさんが、文系なのか、理系なのか、
英語が得意なのか、不得意なのか、
時間的な余裕があってまとめて勉強できるのか
細切れの時間をつなぎ合わせる必要があるのか
勉強の環境に恵まれているのか、
それとも子育てとの両立やストレスフルな職場との両立が
求められているのか、それらの条件によって
実際に必要となる時間はかなり異なってきます。
そこで、翻訳の学習を始めるにあたって、
ぜひ皆さんに理解しておいていただきたいのが、
時間の経過と、習熟レベルの関係性です。
横軸が「時間」、縦軸が「習熟レベル」を表しています。
【図1】
![学習曲線1](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/06/4d4f2862bb680ff894f37d50f330875a-1-300x225.jpg)
学習者が途中でサボらないとすると、時間の経過と共に
「学習量」は右肩上がりに増えますが、
「習熟レベル」は時間の経過に「比例」して
上がっていくものでしょうか?
学習者は、そのように考えていますから、
上記【図1】のようなイメージを持つと思います。
けれども、現実には、下記【図2】の赤線のような経路を経て、
習熟度は上がっていくことになります。
【図2】
![学習曲線2](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/06/75f565f0f5304937d636988b7a4aca88-1-300x225.jpg)
これを「学習曲線」といいます。
挫折の危機が訪れる時
図を見てお分かりのように、初期の段階では
着実に勉強を積み重ねているにもかかわらず横ばい状態で
学習者にはほとんど変化が感じられません。
このように、努力しているのに勉強の成果が感じられない時期を
「プラトー」といいます。
このプラトーを経て、必要となる学習時間の後半、
特に残り2~3割となった時点で、急激に習熟度が上昇し
学習者自身もレベルアップを実感できる時期がやってきます。
ここがまさに乗り越えるべき大きな山なのです。
そこまで何とか到達できたなら、うっすらではありますが
ゴールが見えているので恐らく最後まで走りきれるはずです。
けれども、夜明け前が一番暗いと言いますが、
赤い曲線が一番変化する時期、すなわち、まさにこれから
急激に実力がアップしようとする手前で挫折してしまう人が
実に多いのです。
【図3】
![学習曲線3](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/06/64bde28454657c58908022a299cd0a5b-1-300x225.jpg)
つまり、学習者の習熟度に対する「主観」と「客観」差が
マックスになる時点、つまり青の時点で、
心理的に疲労感が最大になり、
こんなに努力しているのにどうして結果がでないんだ、
自分には適性が無いんじゃないか、といった悩みがピークになり
心が折れて、挫折してしまうのです。
プラトーを超えるために
あとどれくらいで上昇に転じるのか・・・
過去の経験から感覚的に分かれば、
挫折する人も減るのではないかと思われますので
もし、あなたが何らかの資格や認定に挑戦したことがあるのなら
その時の経験を参考にしてみてはいかがでしょうか?
【図4】
![学習曲線4](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/06/3554e3ad945bd84eb06ac8a7319438c5-1-300x172.jpg)
これは、ある英検合格者(TOEIC上位者)の勉強時間を示したものです
(出典:http://www.eigo-duke.com/colum/time.html)
人によって差が大きいとは思いますが、
英検1級+TOEIC900点取得までに、
およそ3000時間が必要だったことが分かります。
もし、あなたが同じような英語上級者+資格フォルダーなら
その半分の1500時間の長さがどれくらいなのか、
どの程度の努力を要するのか、おそらく感覚的にわかるのでは
ないでしょうか?
さらに【図5】をご覧ください。
![学習曲線5](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/06/256826e46d36161e899dc7b38300090d-1-251x300.jpg)
過去に資格試験に挑戦した方には、
こちらのほうが参考になるかも知れません。
いずれにせよ、1500時間というのはそれなりに
まとまった時間の投資になります。
ここで注意していただきたいのは、世間で難関と言われている
資格試験(数千時間を要するもの)を突破できたからといって
簡単にプロの特許翻訳者になれるわけではないということです。
新たにどれくらいの分野を勉強する必要があるかどうかによって
必要とされる学習時間は大きく異なってくるのです。
過信は禁物
そういうと、いや私は英語ができるし理系の知識もあるから
1500時間もかからない、と思われるかも知れません。
しかし、講座運営の経験から言えることが1つあります。
高卒なのか大卒・大学院卒なのか、文系なのか理系なのか、
主婦なのか会社員なのか等に関係なく、
プロの特許翻訳者になるという「出口」を常に意識した学習を
一定密度で、一定程度継続した人でなければ決してプロにはなれない、
なれてはいないという現実です。
この点を無視して、まずは初級、次は中級、最後は上級
という風にクラス分けした授業に時間とお金を費やしてみても、
学習レベルが上がることは決してありません
【図6】
![学習曲線6](https://eigo-zaitaku.com/wp-content/uploads/2016/06/d607d1726ed63c9c8a28dd705c4c9a41-1-300x225.jpg)
上記のような「階段」は、学習者側の勝手な思い込みに過ぎません。
初級コースを履修したから、S1レベルまで上がった、
中級コースを履修したから、S2レベルだ。
上級コースにいるからS3レベルまで来ている。
それは・・・ただの幻想に過ぎないのです。
まとめ
特許翻訳をマスターするのに要する時間の目安は、
経験則上、およそ1500時間です。
そして、稼げる翻訳者になるためには、
プロの特許翻訳者になるという「出口」を常に意識した学習を
淡々と集中して継続してやる。
これ以外に道はないのです。
<追記>
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