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会員87(女性、文系、元派遣社員)

講座を受けたきっかけ

 

文系、独身、アラフォーの元派遣社員です。就職氷河期世代で、やっと新卒で入った会社でお局に目をつけられて退職後、なんとか派遣で食いつないできました。最初は一般事務でしたが、30 代になってからなにか手に職をつけないといけないと思い、独学で TOEIC の勉強を始め、800 点後半位のスコアをとれるようになってから、英文事務にシフトしました。そのため、英語がとても好きだったとかそういうことは無いと思います。私にとっての英語とは、完全に食べていく手段でした。派遣ではあるが比較的時給の高い英文事務の仕事をこのままやっていけたら、と思っていましたが、派遣法が改悪され、3 年以上は働けないようになってしまいました。また、私が前にいた部署は、外国人の方が多く、TOEIC900 点の方もいました。帰国子女の正社員の方もいて、派遣の英文事務自体が無くなるのでは、という危機感がありました。そのため、派遣ではなく一生積み上げていけるスキルがある仕事がしたいという思いが強くなっていました。

 

また、私はなぜか女性に嫌われやすく、どれだけ気を遣っても冷たい扱いを受けるので、勤め人をすること自体がとてもつらく、帰ってくるとそのストレスでぐったりしてしまい、会社に勤めることを一生続けることに絶望していました。加えて、小学校の頃は男子の間で罰ゲームとして私と結婚することというのがあったくらい、女性としてのスペックも低いので、他の女性のように結婚して子育てのため就業から離脱、という道がないのは明らかでした。一生独身で死ぬまで働くのだったら、派遣でもなく、また、非常に高度な人間関係を要求される正社員でもない、別の道を選ぶ必要がありました。

 

職歴としては、これまで車メーカーでの仕事が多く、ある程度業界の言語がわかっているので、これを専門にした特許翻訳がいいのではないかと思い、そのころちょうど TOEIC で 900 点以上をとることができた自信もあって、本講座を受講するに至りました。

 

ただ、私は高校では進学校に通ってはいたものの、化学、物理、数学が苦手で、英語一本で大学に入ったようなものだったため、本当に特許翻訳者になれるのかとても不安でした。卒業した大学も、英語に関係する学科ですらありません。理系科目については、芳香族炭素とか、アルケンとか、アルカンとか、こんな言葉あったっけ?というくらい何も覚えていませんでした。実は、この講座を受けるだいぶ前に、Espacenet で特許明細書の日本語と英語の対訳が入手できるということを、ネットで調べてわかってはおりました。しかし、その対訳をそろえていざ勉強しようと思ったとき、日本語自体何を意味しているのかが理解できず、もちろん英語も正しいのかすらわからないため、特許翻訳だけは難しすぎて文系の私には無理なのだと思っていました。

 

しかし、本講座のメールマガジンを申し込み、受講感想を読んだときに、化学、物理の講義があること、文系の方でもトライアルに受かっていることなどを知り、これだ!と思い、300 本無料ビデオを見ずに、すぐ応募致しました。

 

受講感想がとにかくすごい熱量でした。まるで未来の自分から警告文が送られてきたかと思われるくらい、今の自分の現状の問題を指摘しているものでした。当時 600 ページくらいだった受講感想を、おののきとある種の興奮と共に、一気に読み終えました。これから賃金の安い外国人や、機械翻訳によって中以下の翻訳者の仕事がなくなること。簡単な翻訳は内製化されて外部に出てこなくなること。自分がどのような将来を選ぶのかを今決めなくてはならないと思いました。難しくても飛び込むしかないのだと思いました。そして、躊躇無く緑色のピルを飲むのを選びました。

 

コースに関しては、受講案内を参照すると、特許事務所にお勤めのかたなどで特許の知識があり、さらに理系の大学を卒業した方だと1年くらいでプロになっている方がいらっしゃったのを見て、私には物理・化学の基礎がまるでないので、確実に1年は無理だろうと思い、2年コースにしました。翻訳の力量としても、派遣のインハウスの翻訳者ではありましたが、別にネイティブのチェックがあるような所でもなかったので、実績もほぼ無いようなものです。そのため、私にとって高い買い物ではありましたが翻訳メモリも買っておきました。

 

 

1 ヶ月~3 ヶ月目

 

受講開始以前は TOEIC の勉強を会社帰りにしていたので、机に向かう習慣ができていました。このころは、昼間に派遣で働きながらの学習となります。昔から夜型でしたが、朝に勉強するスタイルに変えました。そうすると平日は 3.5 時間、休日は 12 時間は勉強に充てることができました。そのため当初は平均すると1日 5 時間くらいの勉強量を見込んでいました。しかし、勉強する時間をもっと確保するために仕事を早く切り上げていたら、当時の上司に目をつけられ、残業が増えてきて、逆に勉強時間がかなり削られてしまう結果となってしまいました。

 

このころは、帰ってきてビデオセミナーを 1 本見るのがやっとという状況でした。そんな中で、この頃はまず備品をそろえること、TRADOS を購入することなどを優先しました。メイン PC に始まり、東プレのキーボード、ローラーバーマウス、コンテッサの椅子、知子の情報など。サブのノート PC は、稼いでから買おうと思いましたが、雷の多い地域に住んでいるため、早めに購入しました。HDD を2台購入し、バックアップ体制も整えました。現在は、災害対策用に持ち運びができるよう、ポータブル HDD と USB も追加しています。早速 CV を作成するべく、CV に関するビデオ視聴に取りかかりました。また、プロの翻訳の雰囲気を知りたいと思い、プレゼントの 300 本内の明細書を読むシリーズも平行して視聴しました。

 

この頃一番時間と手間が掛かったのは TRADOS の操作でした。講座のビデオは古いものなので、そのまま使うことはできません。SDL で出しているビデオをみても、私の知りたいことはなにも解決しませんでした。しかし、ある時、講座受講生のブログで藪内さんの「翻訳ツール大全」が紹介されているのを見て、すぐ購入しました。おかげで私の悩みもすぐ解消できました。藪内さんの「翻訳ツール大全」は本当にすばらしい。また、受講生のブログを書いている方には、本当に頭が上がりません。だいたい私と同じようなところで同じように悩んでいる。そう思うと、一方的ではありますが、シンパシーを感じてしまいます。孤独な勉強が孤独でなくなります。ここが本講座の素晴らしいところの数多くの一つだと思います。

 

 

3 ヶ月~6 ヶ月

 

私がこの講座に入った当初は、講座のやり方として CV シリーズ→明細書シリーズ→トライアルシリーズという順番で、化学と物理は稼ぎながら勉強するという方式でしたので、まず CVを作成しました。しかし、これもあらゆる知識、戦略が無いと書けないものです。また、私の専門分野は、職歴からして車関係のものがストーリーとしてわかりやすいかと思い、電池やセンサ関係にしました。しかし、電池は化学でもあり、電気でもあります。酸化還元がわからないとどうしようもない。セパレータは高分子でできていますし、電解質は有機材料です。電圧の制御の特許になると、物理も必要になります。センサの MEMS にしても、梁の振動などの力学がわからないと、てんでだめ。そんな状態でしたので、岡野の化学、橋本の物理に予定を変更して進めました。物理、化学シリーズがない時代にプロになった方もいらっしゃるので、化学は、「化学のドレミファ」、物理は「物理の散歩道」だけでいいのではないかと思いましたが、私は先述の通り、理系の基礎が無きに等しいため、地道に時間をかけてやるしかないなと覚悟を固めました。

 

ちょうどそのころ、仕事も不条理な扱いを受けることになり、勉強する時間を確保することがさらに難しくなり、さらに若い女性の派遣社員に手ひどいマウンティングを受けるようになったので、当時の仕事をやめることにしました。しかもそのとき、幸運なことに派遣会社から特許調査の仕事の打診があったのです。仕事としては履歴書にも書け、かつお金をもらいながら明細書が読めると思い、すぐ面接に行き、採用が決まりました。この講座を受けていなかったら特許のことも何もわからなかったので、面接で落とされていたと思います。

 

 

6 ヶ月~1 年目

 

特許調査の仕事は、前職と違って上司の方に恵まれました。この方は文系でしたが、理解力に優れ、実にうまく物事を例え、難しいことも簡単にかみ砕いて説明される方で、特許翻訳をする上でも考え方や物事へのアプローチの仕方など勉強になりました。得られる情報も桁外れで、侵害調査をしていると、その会社がどういう戦略で特許を取ろうとするのかが手に取るようにわかります。ここでの仕事は、特許を素早く読み解く練習に大いに貢献しました。特許翻訳の勉強のために早く帰ることは派遣先に了承されていたため、平日は 4.5 時間程勉強できました。この頃は化学や物理の勉強が楽しくなってきた頃でした。

 

明細書を読むシリーズを参照しながら自分の専門分野に沿った対訳収集を始めました。また、1 年目が終わるまでにトライアルを開始しなくてはと思い、トライアルシリーズの視聴も開始しました。

 

 

1 年目~1 年半目

 

しかし、新しい仕事にも慣れてきて、岡野、橋本も終わったあたりでした。毎日がだるく、眠くて仕方なく、動悸が止まらなくなりました。このころは、毎日 6 時間睡眠で稼働していました。睡眠不足なのかと思い、なるべく 7 時間位の睡眠を確保しようと思いましたが、そうすると、必然的に勉強時間が少なくなります。このころは対訳もまだ 5、6 本位しかとれていませんでした。しかも、対訳 1 本を取るのに、調べ物をしながらビデオセミナーの視聴と平行させると 1 ヶ月くらい掛かっていました。ここで私のいる状況にようやくですが愕然としました。

 

私の場合、とにかくすべてが遅すぎました。このままトライアルを受けても受かるはずはなく、また万が一合格しても仕事を回せるだけの実力も時間も無いなかで、兼業でやっていく覚悟があるか、自分に問い直しました。何のためにこの講座に入ったのかを、受講案内を読み直して考えました。結論として、今の仕事を辞めて勉強に専念することを決めました。辞めるまでは体調が戻らなかったので、このころもかなりペースダウンした形ではありますが、細々と一日2時間くらいの勉強は続けました。また、辞める前に、ソフト(MemoQ、PAT-Transer、Just right!)や本(マクマリー有機化学、化学便覧など)をまとめ買いしておきました。

 

 

1年半~現在

 

会社を辞めて、睡眠を8時間とるようになった途端、体調もめきめき回復し、毎日平均11~12時間は勉強できるようになりました。このころは、とにかく対訳をとることを念頭に勉強しました。すると、今まで難しくて読めなかった特許でも、学んできた岡野、橋本のビデオで出てきた話が頭の中をフラッシュするようになって、わからないことも調べていけばすんなり腹に落ちるようになってきました。そうなると、訳質も目に見えて良くなってきた感じがしました。これまでは、英語力でなんとか英語から日本語にしていた感じ(完全に置換屋の発想です)でした。しかし、シニフィエの道理が理解できれば、それを日本語にすればいいだけの話なのです。お手本の公開訳文と自力翻訳を比較しながらだと、8時間以上はかかるものの、1日に2000文字以上翻訳できるようになったので、トライアルに応募を開始しました。しかし、本講座で学習中の方にとっては、1年半でトライアルは遅すぎるものです。講座期間3ヶ月前に私のトライアルラッシュがようやく始まりました。そして、現在のトライアルの実績がこちらです。

 

返答なし 2 社

合格 産業翻訳 1 社(実ジョブ 1 件)

不合格 特許翻訳 1 社

結果待ち 特許翻訳 2 社

 

手始めに、以前から入会していた某アメリアで応募している翻訳会社とコンタクトを取り、トライアルを受けました。産業翻訳でしたが、講座で言われているギリギリ OK くらいのレートで合格することができました。B+判定だったので、仕事は来ないだろうと思っていました。その後、大手の翻訳会社の特許翻訳のトライアルを受けましたが、結果は不合格でした。技術的な所は理解した上で訳したつもりでしたので、かなりショックでした。その理由を考えていくと、基本的な翻訳スキルができていないのではないかと思い、「翻訳の布石と定石」、「翻訳の泉」、安西徹雄さんの「翻訳英文法」などをしっかり読み直しました。たしかに、訳文に甘いところが出ていたように思えます。

 

その後 2 件の特許翻訳のトライアルを受け、現在結果待ちです。また、現在は産業翻訳のトライアル 1 件を受けている最中です。

 

そんな中、最初に受けた産業翻訳の翻訳会社から、年度末ということもあったかと思いますが実ジョブが来ました。生まれて初めてプロとして、フリーランスとして、翻訳のお仕事をすることができました。とても充実して楽しかった。論理の流れに沿ったうえでその言葉が引き立つにはどのような並びが適切なのか、前に出てきたこの言葉がここで布石となっているのだな、そしてそれをどのように生かして訳そうか、などいろいろな試行錯誤と気づきがありました。「言葉と格闘」するのは本当に大変なことですが、日本語の意味がすーっと通ったとき、これに勝る喜びはありません。そして、誰の力も借りずに自力で成果物をメールで納品する。

 

これで完結する仕事ってすごいと思います。判定は B+なので、翻訳会社にとっては忙しいときの猫の手代わりと思われているとは思いますが、これをチャンスに変えていきたいと思います。

 

 

これからの展望

 

講座受講期間前に実ジョブを経験できて、本当に良かったと思います。他の受講生の皆さんも仰っていますが、実ジョブに勝る優れたトレーニングはありません。専門知識、原文の読解力、日本語の表現力などの翻訳スキルはもちろん、時間配分、コメント力、メールライティング、ビジネスマナーなどオールラウンドの能力が必要となります。そしてこれでお金がいただけるのです。

 

反省すべき点は、2年という長い期間がありながら、特許翻訳でのトライアルの合格ができなかったことです。その理由はやはりトライアルを受ける時期が遅すぎたことです。講座では20 件以上のトライアルを受けることを推奨していますが、その分量のトライアルを受けるには、とにかく早く受ける必要があります。トライアル課題が待っていても来ない場合もありますし、来るまでに 2 週間かかってくる場合もあるためです。

 

また、なぜトライアルを受ける時期が遅くなったのかというと、外部要因(残業の増加、職場の変化による勉強時間の減少、体力的な問題)をどこで取り戻すかなどの戦略がなかったからだと思います。突き詰めますと、年次計画をしっかりと作っておらず、その場その場で対応していたからだと思います。そのため、これからは次の仕事のピーク(これからだと 5 月連休中)を見越して早めに行動しようと思っています。

 

また、インプットばかりの勉強法を見直し、遅ればせながらではありますがブログによるアウトプットを始めました。ブログを書くことで、学んだことが違った方向から見られるようになり、更に知識が深まるような気がしています。

 

また、日英に対して、英日の仕事自体の応募が少なくなっているように見受けられます。機械翻訳の影響などもあるのでしょうが、いずれは日英翻訳の勉強も遅かれ早かれやらなくてはいけません。加えて、今の得意分野は電気・電子分野なのですが、電磁気学や、画像処理や統計の話になると、数学の壁にぶつかります。トライアルに合格したら数学シリーズもしっかりやりこむ必要があります。場合によっては再受講も検討するかもしれません。得意分野も広げる必要も出てくるでしょう。現在は化学分野の対訳を強化中です。

 

やることは山積みです。でも今やるしかありません。今やらないと、もっと年を取って苦労するのは目に見えています。人生、40 代は何かを始めるには遅すぎる。でも人生を諦めるには早すぎます。そして、今が一番若いのだから、今頑張らないといけません。でも、今の私はそれが苦ではないのです。勉強することがとても楽しいのです。数学の勉強もこれからですが、わくわくしています。

 

できていないこと、やるべきことは山積していますが、今できることを精一杯やることにします。それだけが自分をどこかに導いてくれる手段なのだと、この講座を受けて学びました。それが私の、誰にも奪うことのない大切な財産です。管理人様、2 年間本当にありがとうございました。そして再受講の際は再度よろしくお願い致します。

 

 

※管理人より

 

環境が悪い中でよくこれだけ頑張れたと思います。途中でギブアップしたと言い訳できる要因がいくつもあったのに。読んでいて泣きそうになりました。40代からでも全然遅くはありません。大企業の会社員でも40代でリストラされてそのまま心が折れてしまう人は多いです。ゼロからここまでやれるなら、これからの1-2年で驚異的にレベルアップできるはずです。頑張ってください。

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