翻訳者になろうとする人なら、巷にどんな辞書が売られているのか
プロの翻訳者がどんな辞書を使っているのか気になると思います。

 

では、プロが使っている辞書・有名な辞書を一通り揃えれば、
たくさん所有していればプロとしての仕事ができるのでしょうか?

 

特に、電子辞書が普及した現在、検索テクニックを身につけることが
翻訳者になるためには重要なんだと考えるきらいがあります。

 

けれども、本当にそうなのでしょうか。

 

翻訳者は、辞書とどう向き合うべきでしょうか。
辞書に使われるのではなく、本当に辞書を活用するにはどうすればいいのか。

 

わたしの英語学習の始まりの頃に遡って考えてみたいと思います。

 

 

 

所有している辞書一覧

 

巷では、「辞書はお金で買える実力だ。」と言われています。

 

私もこの言葉を信じて、翻訳者を目指した頃からいろんな辞書を
買い集めてきました。揃えてきたのは、現在主流となっている
電子辞書が中心となっています。

 

下記図1及び図2から、現在どんな辞書を使っているかが
おわかりいただけると思います。

 

 

辞書一覧

 

図1:LogoVista辞書ブラウザから利用可能なマイ辞書一覧

(ロゴビスタ:http://www.logovista.co.jp/LVERP/top/Default.aspxにて購入)

 

 

マイ辞書

 

図2:Logophleから利用可能なマイ辞書一覧

※Logophile:http://dicwizard.jp/logophile/を参照のこと。

 

 

学習者向けの辞書から専門用語に関する辞書、国語辞典から用例集まで
幅広く揃えています。

 

では、これで実力はついたのでしょうか?
お金で実力は買えたといえるのでしょうか。

 

そう単純な話しではないことは、容易に想像がつくはずです。

 

 

 

辞書を揃えればいいのか?

 

確かに、知らない用語を調べることが翻訳なら、
辞書が多ければ多いほど有利と言えます。

 

様々な分野の辞書を取りそろえることで、
知らない用語を調べるパワーがアップしたのですから、
お金で実力がアップしたと言えるでしょう。

 

けれども、実はそんなに単純な話ではなさそうです。

 

 

この問題を考える前提として、

そもそも翻訳とは何か?」を考える必要があります。

 

翻訳とは、不明な用語を辞書で調べて、その訳語を当てはめる
作業なのでしょうか。

 

訳語はどこかの辞書には必ず記載されているのでしょうか。

辞書を引くことが翻訳作業の中心部分を占めるのでしょうか。

 

 

 

中高時代の恩師の教え

 

辞書は引くな!

中学校~高校時代の英語の授業で「分からない言葉は辞書を引いて
調べるように。」との指導を受けた人も多いと思います。

 

では、辞書は引くものなのでしょうか。

 

それは当たり前だろう?

分からない言葉は辞書にあたってどういう意味か調べるしか
ないだろうという人も多いと思います。

でも、本当にそうでしょうか。

 

 

10代の頃「先生、トップレベルの英語力を身につけるためには
どんな辞書を買えばいいでしょうか?」と聞いたことがあります。

 

すると先生は、研究社の辞書を持ってきてこう言いました。

 

「これを読みなさい。」

「引くんじゃない。読むんだ。」

 

 

研究社

 

(参照)

Amazon.co.jp: 新英和大辞典 第六版 ― 並装: 竹林 滋: 本

 

 

そうです。辞書は引くのではなく、小説のように読むものだと言うのです。

 

もちろん、忙しい10代に毎回該当箇所を最初から最後まで
読む時間があるわけもないわけですが、重要単語については
該当箇所の説明をできる限り読むように意識しました。

 

結果、学内でトップになることができました。

 

 

それもダントツと言われるようになったのです。
この力は、就職してからも論文や特許を読む基礎力として
役だってくれました。

 

辞書を引くことが翻訳だと思っていたわたしには、
この「引く」から「読む」への意識変革は衝撃でした。

 

 

もっと衝撃だったのは、副業で翻訳を始めた当時、
「辞書は引くものだ、だからPCを使って電子化した用語集を使えば
超高速で翻訳が終わる。」と信じて疑わない翻訳者との出会いでした。

 

特許翻訳者になる前、産業翻訳者だった頃、用語集を使って
置換作業をする同業者がいました。

 

そのとき、「用語の意味はコンテクストで変化するのに
一体何を考えているんだろう。」と思ったことがあります。

 

 

同じ専門用語でも、分野が違えば訳語は違います。

 

例えば、elementには、「エレメント、素子、要素、子、ゲート、演算子、元素、部、部品、器、成分、構成部分、部材、体、因子、単位」などの使い分けが必要となります。

 

 

その人に「専門領域によって使い分けが必要となる場合は
どうするのか。」と聞いたところ、

 

「機械系、バイオ系、電気系、化学系など専門分野毎の用語集を用意して
使い分ければいい。」と答えました。

 

これにはあきれました。

 

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書籍も出している有名な人でしたが、もうこれ以上聞いても無駄だ
と思いました。この方法では、現在の特許明細書のように
様々な分野が混ざっている場合にはとてもじゃないですが、
対応できないのですから。。。

 

 

まず想像しろ!

 辞書は、未知の用語についてすべての答えを用意しているわけでは
ありません。

 

どんなに辞書を買いそろえても、そのコンテクストでぴったりくる
言葉が辞書に載っていないこともあります。
辞書に答えがある、という発想しかない人はどうするのでしょうか。

 

 

10代の頃に辞書を読むように指導してくれた教師は、

 

「辞書を引く前に想像しろ。前後関係から想像しろ。
まず、自分なりに答えを出してから、確認のために辞書を引け。」

 

と指導していました。これもコンテクスト理解力を鍛える指導法と言えます。

 

 

最近になって、ネットで検索してみると、同様の指導を受けた人が
少なからずいたことに気づきました。

 

ネット起業家で有名なK氏は、その英語メルマガの中で
「推測」することを指導されていました。

 

また、多くの英語学習者が「辞書は読む」「分からない言葉は推測する」
と言っています。やはり、この勉強方法は間違っていなかったのだな
と思います。

 

それが、何十年か経って翻訳フリーランスになろうとしたときに
役だったと思います。当時の教師には感謝しています。

 

 

まとめ

 

もちろん辞書はないよりあった方がいいですし、ある程度の数は
揃えておく必要があります。

 

けれども、辞書に依存してはいけません。
辞書は万能ではないのです。

 

最近では、電子辞書を使った「高速検索」と「置換作業」を
翻訳だと思っている人もいます。

 

けれども、コンテクスト理解のために、翻訳者がすべきことは、

 

辞書を「検索」するためのものではなく、読みものとして捉え、
コンテクストから未知語の意味を「推察」した後に
確認のために辞書にあたる・・・

 

こんな風に辞書とかかわっていくことなのではないでしょうか?

 

 

<追伸>

 

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