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英語を使って稼ぐプロというと、
多くの人は「翻訳者」と同じぐらい「通訳者」を
連想するようです。

通訳っていうと、華やかなイメージを抱く英語女子が多そうですが、
果たしてその実態はどうなんでしょうか。

これから、職業として選ぶとしたら通訳と翻訳のどちらがいいでしょうか。

私は、会社員時代に不採算部門を他社に売却する事前準備
としての会議に通訳者として駆り出されたことがあります。

そのときの経験も踏まえ、「通訳者」と「翻訳者」を
いろんな観点から比較してみたいと思います。

通訳と翻訳の比較

収入について

意外かも知れませんが、通訳者の年収は低いです。

ある雑誌に以下のような説明があります。

「1000万円以上の高収入を実現している3人の通訳者は、
1人を除いてキャリア20年以上の大ベテラン。

3人の平均キャリアは19年で、全体の平均10.7年の約2倍。
やはり相応のキャリアを積んでいる人が、高い収入にたどりつくようだ。」
(通訳者・翻訳者になる本 2017、イカロス出版刊、P.67)

また、通訳者をA~Eの5段階で分けた場合、
最上位のAランクで一日あたりの報酬が6~8万円(25年の経験者)
となっています。

もし、年間の稼働率が150日だとして、
1日7万円程度の報酬が得られるAランクの通訳者だとすると
確かに年収が1000万円となります。

これと特許翻訳者と比較してみます。

特許翻訳者の場合、ゼロから初めて3年程度で1000万円に
到達できる可能性がありますから、それに比較して通訳者の場合
同じ1000万円の年収に到達できるまでの年数が長すぎます。

通訳者がそのキャリアの終盤において特許、やっと翻訳者が3年程度で
到達できる可能性がある年収まで到達したとしても、
生涯収入で考えると非常に不利であることは明らかです。

これだけの差がついてしまうと、キャッチアップも不可能です。

下積み期間について

上記雑誌の同じページに、

一日の通訳料金3~4万円の中堅クラスで、
経験が平均7.8年のキャリアとなっています。

この中堅クラスの年収を計算してみましょう。

もし、稼働日数が150日だとすると年収は400~500万円
にしかなりません。

1日あたりの報酬が5万円を超えるのに10年かかるとありますから、
特許翻訳であれば2年程度で到達できる年収700~800万円に
到達するするまでに10年かかることになります。

下積み期間が長すぎます。

しかも、フリーランスとして独立した当初の年収が
平均で200万円強(同書、P.68より)ですから、
この金額なら、会社員の副業翻訳でも簡単に稼げてしまいます。

稼働率について

翻訳の場合は、一定レベルの評価を得た後は、
ひっきりなしに仕事の依頼がやってきますから、
本人が望めば年間を通じて90%以上の安定稼働が見込めます。

処理ワード数とレートがほぼ一定していますから、
結果として毎年の安定収入が見込めます。

しかし、通訳の場合は、現場に行かなければいけません。

移動時間も拘束時間です。ネット経由で会議に参加する方法もありますが
会議が開催されている間、拘束されるという点では同じです。

どれぐらい幅広い議題に対応できるかにもよりますが、
移動の日数も含めて年間200日以上拘束され、
そのうち報酬に計算される日数が年間150日対応だとすると
稼働日数を上げて年収を上げるという作戦は使えそうにありません。

加えて、いきなり会議に参加しても話についていけませんから、
事前に資料を読み込む日数も考慮しなければなりません。

例えば、通訳者として年間300日拘束され、
報酬に計算される日数はその半分の150日ということも考えられます。

レバレッジ的観点から

翻訳であれば、

一度経験した同一分野・類似分野の訳例は、翻訳支援ソフトに
ストックしてその後何度でも再利用することが可能です。

経験する案件が増えれば、訳例も増強されますから
段階的に処理速度を上げていくことができます。
類似案件の経験値も上がれば、品質も安定することになります。

しかし、通訳の場合、

一品料理なのでその経験をそのまま別の仕事に使い回すことはできません。
前回と同じフレーズだから、その部分は録音した音声で済ます、
というわけにはいかないのです。

前提条件の厳しさ

通訳者は「接近戦」で戦う仕事です。

現場の雰囲気の変化を読むスキルも必要ですし
社会経験や対人スキルがあるレベル以上であることが
前提となる場合が多いと思います。

社会経験が乏しい若い人がいきなり通訳の勉強だけ続けても
仕事の確保には結びつかないはずです。

加えて、体力勝負のところもあり、精神面も含めかなり
タフな方でないと安定的な稼働はできません。

前述の通り、わたしはある程度の英語力もあり、
議題となった他社特許の知識もある状態で、
企業売却のための会議の通訳を引き受けました。

それでも、正直二度とやりたくありません。お断りです。
それぐらいキツイ仕事でした。

子育てとの両立

現場に出かける必要がありますし、場合によっては、
泊まりがけの仕事になります。

このような働き方は、出張の多い職場の会社員と同じです。

自宅で仕事がしたい。子育てと両立したい。
そのような働き方を希望して退職した主婦のニーズには全く合いません。

まとめ

収入、仕事の効率、下積み期間、在宅・子育てとの相性など
さまざまな観点から比較して、翻訳者に軍配が上がります。

特に、翻訳メモリによる高速化が可能な特許翻訳に比較すると、
通訳者は生涯収入の点からも非常に不利です。

20年~25年かけて年収1000万円を目指すなら、
特許翻訳者になって経験3年~5年で1000万円を目指すのが
得策と言えるでしょう。

<追伸>

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