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特許翻訳者になりたいという人に、

これまでに何件ぐらい明細書を読みましたか?

と聞くと、

「まだです。まだ明細書を読んだことがありません。これからです。」
と答える人が多いのに驚かされます。

毎日、特許明細書の翻訳をするのが「生業」の特許翻訳者を
目指しているのに、これはどういうことでしょうか。

更に驚くのは、特許翻訳の勉強を開始して何年も経つというのに
まだ明細書を読んだことがないという人が少なからず存在することです。

彼らは何をしているかというと、

ずーっと英語のお勉強をしているんですね。
これでは、特許翻訳者になれるわけがありません。
トライアルに合格できるわけがありません。

一流のバッターになりたい野球少年が、
一度もバットを振ったことがないというのと同じですから。

ただ、だからと言って闇雲に明細書を読もうとしても読めません。
特許明細書の読み方にはコツがあるのです。

この点、「定型表現」を切り口に読み方を解説したり、
部分的に読んだことで、明細書を読んだことにしている場合もあるようですが
これでは当業者の読み方に迫ることはできませんし、
優秀なサーチャーもそんな読み方はしません。

本記事では、これから特許翻訳者になりたいという人向け
特許明細書の読み方」について説明させていただきます。

これまでそれなりの数の明細書を読んで来たけれども、
自己流でうまく読み込めてないのではないか?
という不安を抱えている人にも役立つ内容となっておりますので、
是非最後までお読みください。

<関連記事>

特許明細書を専門知識に依存せず読み取る方法

特許明細書を読むために必要な専門知識の深さ

特許明細書を読むための化合物命名法

そもそも特許明細書とは何か

こちらには、「特許出願人が、その技術分野の専門家が発明を
実施することができる程度に十分に、発明を説明した書類である」
との説明がありますが、

この点については、特許法1条についての特許庁のページ
参考に考えると分かりやすいと思います。

(参照)※太字部分は本記事作成者による。

特許法第1条には、
「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し
もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。

発明や考案は、目に見えない思想、アイデアなので、
家や車のような有体物のように、目に見える形でだれかがそれを占有し、
支配できるというものではありません。

したがって、制度により適切に保護がなされなければ、
発明者は、自分の発明を他人に盗まれないように、
秘密にしておこうとするでしょう。

しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することが
できないばかりでなく、他の人が同じものを発明しようとして
無駄な研究、投資をすることとなってしまいます。

そこで、特許制度は、こういったことが起こらぬよう、
発明者には一定期間、一定の条件のもとに特許権という
独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、
その発明を公開して利用を図ることにより新しい技術を
人類共通の財産としていくことを定めて、
これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。

ものすごく端折って言うと、

「発明したら公開してね。その発明は国が保護してあげる。

その代わり、ライバル企業はその発明を参考に
もっと良い発明をするかも知れないけど、お互い様だから、
参考になるところは参考にどんどん競争して
良い製品開発して工場建ててばんばん売って儲けてね。

儲かったらたんまり納税してもらうね。」ってことです。

もっと上品に言うと、日本弁理士会のページにあるように、

「発明を秘密にしておくのではなくて、
世の中に公開するとともにその代償として特許権という独占権を
得ようとするのが、特許制度の趣旨及び目的になります。

つまり、私はこのような発明をしましたので世の中に
その技術内容を公開しますという役目を負っているのがこの明細書です。」

この明細書の趣旨に沿って、以下の様式が定められています。

特許明細書の構造

願書の様式については、
1.願書等様式(通常出願)(1)通常出願 特許

特許出願書類:明細書の記入例については、
特許出願書類:明細書(平成21年1月1日以降)の記入例
をご覧ください。

次に、「特許の上手い読み方」として、
弁理士会・東海支部のページに以下のような内容が記載されています。

アウトラインと思われる部分だけをわたしが抽出しました。

● 「特許請求の範囲」は後回し(最後に読む)

● 「要約書」から見る(代表図面も一緒に)
→発明の概略を知る

●「明細書」は従来の技術(背景の技術)から発明が解決しようとする課題を見る
→目的を知る

● 課題を解決するための手段
→構成、作用、効果に着目

● 実施例
→必要部分だけ、特徴的な部分を探す

● 「発明の概要」を「特許請求の範囲」とすり合わせる

ポイントは、最初から順番で読まない
発明の概略の把握に努めるということです。

当業者が短時間で読める理由

当業者やサーチャーは、数秒からせいぜい数分で
特許明細書のコア(キモ)を読み取ることができます。

図面と請求項を軽くスキャンするだけで、「ああ、あれか。」と
エッセンスを抜き取ることができます。

ここに明細書読解のヒントが隠されています。

ここにこれから特許翻訳者になろうという人が、
特許明細書の読み方をマスターするためのヒントが隠されています。

彼らはどこをどういう順番で読んでいるのでしょうか。
そして、その際にどのようなことを考えているのでしょうか。

因果関係から考える

これから特許翻訳者になろうという人・ゼロから始めようという人が、
上級者の真似をするのは困難です。ハードルが高すぎます。

当業者であれば、タイトルだけで発明の概略が把握できます。
そうでない場合も、タイトルと出願人(会社名)・発明者を見ただけで
概略が把握可能です。

普段から、学会等でライバル会社の動向は注視しているわけですから、
「ああ、XX社のYYさんか。タイトルは、~か。ああ、あれか。
だいたいの内容は想像できるな。」で終わりです。
図面と請求項すら見る必要がありません。

しかし、それができない人はどうしたらいいでしょうか。

物事には因果の流れがある

ポイントは、因果関係です。

企業は研究開発のために大金を投じています。
その投入したお金はどこかで回収しなければなりません。
趣味や道楽で研究開発する企業は存在しません。

その企業にとって解決すべき「問題」があり、

その「問題」を解決することで製品の「競争力」が向上し、
マーケットから多くの「利益を回収」でき、
その「利益の一部」をまた次の研究開発費に「投入」するという
サイクルになっているわけです。

そして、当該企業にとって目指すべき研究成果があるとすれば、
その成果によって解決されるべき問題が存在し、
その解決すべき問題は利益を生む自社製品あるいは
これから製品化しようとするものと関連したものであることは
容易に想像できるでしょう。

だから、当業者でない人が特許明細書を読む際に最初に確認すべきは、
「解決すべき課題(問題)」とそれがなぜ設定されたかという
背景」に関連する部分であることは明白です。

問題解決、そしてその間に「発明の成果(効果)」が挿入されるはずです。

全体の流れは、「背景(業界の動き)→問題発明の成果(効果)→解決
であり、問題解決までの道筋に存在するのが基礎理論(専門知識)に
裏打ちされた論理ということになります。

自動車メーカーが燃費向上させたエンジンを開発する目的は、
ユーザーへの価値の提供であり、
ユーザーがその価値を認めてくれることによる
自社製品の選択→自社の売り上げ増→利益増大ですから、
この場合は、問題設定は容易かつ明白であり、
発明の中心は、燃費を向上させる手段追求に帰着します。

しかし、発明によっては「なぜそのような問題設定がなされたのか?
が当業者以外には理解困難なものも存在します。

その場合、当業者が共通して持っている知識、
常識部分については補充するしかありません。

では、この常識はどのようにして獲得すべきでしょうか。

ニワトリと卵

逆説的ですが、特許明細書が読めないのは特許明細書を読まないからです。

特許明細書の中には、特許文献・非特許文献の引用があるはずです。
それを読めば、発明者が着目しているライバル企業及び
そのテーマで自分と競っている研究者が分かります。

研究開発のテーマは共通しているわけですから、
数件~十数件まとめて読めば、おおよそどういう会社が
どういうテーマに群がって競合しているかは分かるわけです。

あとは、解決すべき問題への切り込み方(アプローチ)に
どの程度の振れ幅があるかどうかを確認し、
それを中学~高校で学んだ科目(数学、物理、化学、生物など)に
登場する基礎理論に照らし合わせて読み解く作業となります。

当業者が特許明細書を瞬時に読み解けるのは、
この知識部分及び論理の運びが十分備わっているからです。

だから、それが不足している人が特許翻訳者を目指すのであれば、
この欠けている部分を補充するしかありません。

この補充作業を端折って、
英文法・構文や頻出パターン・一括置換等でごまかそうとするから、
おかしな翻訳文をはき出してしまうのです。

特許庁DBに公開されている訳文をチェックしてください。
大変残念なことですが、誤訳のオンパレードです。

特許明細書をちゃんと読めるようになるには、
ある程度の数の特許明細書を読むしかないのです。

文系のハンデはあるか

あるかないかと問われれば、「あります」としか答えられません。

が、文系の人が思っているほど、絶望的な差が理系との間に
存在するわけでもありません。

むしろ、論理力の差が大きいと思います。

普段から、なぜそうなのか、裏取りして納得するまで
調べるクセが付いているのであれば、さほど苦労しないはずです。

むしろ、問題は時間でしょう。

それなりの時間投入は必要です。
理系が投入した数年間を無かったことにするワケにはいきません。
あるとすれば、その間に理系が身につけた「~的考え方+論理力」を
どれだけ期間圧縮してキャッチアップできるかでしょう。

広さと深さ

本当の難しさは、あるテーマについてどこまで深掘りするのかにあります。

特許翻訳に必要とされる知識の深さを見切る力
独力で身につけることは、極めて困難と言えます。
要不要が文系には極めて見極めにくいのです。

何年も努力しているのにどうも読み方のコツが見えてこない、
という人は「努力の方向性」が間違っている可能性があります。

知識は無限の広がりを持ちます。深さも底なしです。
それを特許翻訳者に必要な範囲で見切ることの難しさ。

おそらく特許翻訳者をゼロから育てる上で、これが最大の難敵でしょう。

暗記脳からの脱却

脳が脳たるゆえんは、答えがあるのかないのか分からない状態で、
課題を設定することができることです。

イメージ、構造化し、自己の知識体系・知識空間の中に
対象を持ち込むことで、問題設定及び解決策までの連結部分を導出する力です。

課題設定力・課題解決量の根本にあるのは、イメージする力です。
そして、これは理系だからと言って、必ずしも備わっているとは言えません。
優良特許を出願するために必要なスキルです。

特許翻訳では、この部分の作業は企業(研究者)が
やり終えているわけですから、あとは論理と知識で繋いて
因果の流れに乗せるだけです。足りないのは専門知識ではありません。

すでに終わっている課題設定、課題解決に沿って
構造化し図解化することでそのトレースをしてみることです。

この作業の重要性に気づければ、一定期間の鍛錬によって
特許翻訳者になれるのは当然といえるでしょう。

まとめ

特許明細書を読む上でいくつかのポイントがあります。

まず、量を読むこと。

次に、論理が破綻しないように内容理解に努めること。
知識ではなく、鍛錬こそが重要であると知ることです。

そしてそれらができるようになるには、
おそらく年単位の期間が必要となってきます。

そのまずは第一歩として、特許明細書を読んでみてください。
すべてはそこから始まるのですから。

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特許明細書を読むためには、
どの程度の専門知識が必要とされるのでしょうか。

その量と正確さ(厳密さ)について確認しておくことは、
これから特許翻訳者になろうとする人にとって、とても大切なことです。

なぜなら、知識は多ければ多いほど良い、正確であればあるほど良い
というのであれば、果てしなく専門知識を追い求めることになり、
翻訳者に求められる処理量とのバランスが取れなくなってしまうからです。

それどころか、何年勉強しても仕事が始められない
ということになってしまいます。

Tired woman in glasses sitting at the table with laptop and books. Looking at camera

競合する翻訳者との「比較的優位」が維持されている限り、
とりあえず仕事は受注できます。問題は、どこまで踏み込むかです。

特許翻訳者は、論文の査読委員のような専門知識は求められてはいません。

翻訳対象に大きな論理破綻がない前提で言えば、
翻訳者には「素早い内容把握」とコンテクスト理解に基づく
正確な翻訳」と「納期厳守」が求められています。

あまりに細部にこだわり過ぎて納期に間に合わないようでは、
プロの特許翻訳者とは言えませんが、逆に、内容を全く読み取ろうとせず
語句の置換作業に終始していたのでは、早晩仕事の依頼がなくなるでしょう。

後者は論外としても、大学・大学院・企業で専門知識を
ブラッシュアップしてきた人が、「潔癖症」で「完全主義」を
追い求めてしまうと職業人として特許翻訳者失格となってしまいます。

では、具体的にどの程度の深さで特許明細書を読めばいいのでしょうか。
具体例を挙げて説明しましょう。

題材とした特許明細書

今回取り上げたのは、以下の特許です。

【公開番号】特開2005-58288(P2005-58288A)
【発明の名称】医療用粘着テープのための粘着剤組成物及び粘着テープ

PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE TAPE AND PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE COMPOSITION FOR MEDICAL ADHESIVE TAPE
WO2005019369 (A1)

特許の大枠を把握しよう

結局のところ、何の特許なのか、
まずやることは特許の大枠の把握です。

一言で言えば何の特許か、どこがキモなのか、ということです。

まずは「課題」分を見てみましょう。

【課題】

高い透湿性と優れた防水性とを同時に有し、剥離時の皮膚刺激が少なく、
繰り返し接着が可能で、匂いがない医療用粘着テープを提供する。
また、高い透湿性と吸水性、保水性とを同時に有し、
剥離時の皮フ刺激が少なく 匂いがない医療用粘着テープを提供する

何=「医療用テープ」であることが分かります。

Content of First aid kit plasters, bandage and pills

となると、治療中という期間限定での使用となり、

その間、皮膚にしっかりと貼り付き、同時に容易に取り外し(剥離)可能で、
その際に皮膚への刺激が少ないこと(皮膚を傷つけたりしないこと)、
余計な匂いがしないこと、透湿性.吸水性.保水性などの特性が
問題となることは、明細書中の続きの文章を読まなくても分かりますので、
読んでいるのは、確認のためということになります。

次に、そのための「解決手段」をみてみましょう。

【解決手段】

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を
架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含む ベースポリマーを
含み、 かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg) は
0℃以下である、 医療用粘着テープのための粘着剤組成物。

成分について、「ウレタンアクリレートオリゴマー」というのが登場しますが、
ここで、構造式や性質を想起できる必要はありません。

化学を専攻した人や細部にこだわる人の中には、
こういう物質が実在するのだろうか、どういう構造をしているのだろうか、
などの疑問を解消すべく徹底的調べようとする人がいますが、不要です。

こういう「潔癖体質」「完全主義」は、
自分の首を絞めることになりますので要注意です。

知識があって不利になることはありませんが、
その知識を使う場所と使い方を間違えてはなりません。

プロというのは、納品レベルを維持しつつ大量処理が求められますので、
「訳質」と「処理速度」にリンクしない作業に余計なエネルギーを
回してはいけません。

ここで翻訳者に求められるのは、

「ウレタンアクリレートオリゴマー」が、
「ウレタン」+「アクリレート」+「オリゴマー」の合成であって、
スペルミスがないことの確認だけです。逆にいえば、その程度の
化学的背景知識は求められているということになります。

次に気になるのは、「前駆体」でしょう。

文章構造から考えて、どうやら「前駆体」というものを
「架橋」「硬化」させると「ポリマー」というのが出来るらしい。

前駆体はポリマーの「前」の段階にある何かだろう、
くらいは解読できると思いますが、ここではそこで止めておきます。

では、最後に「解決手段」の中で取り上げられている
ガラス転移温度(Tg)」を取り上げてみたいと思います。

glass-broken-12-texture_g1spwoh_

上で取り上げた「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「前駆体」は、
中身(組成)についてのものだと推測されますが、

この「ガラス転移温度」は、本明細書が目指す製品の「特性」についてのもの
であると推測され、より発明の本質に関わるものと考えられますので、
専門知識がなくても理解でき、かつこの点について理解できないと
本発明が完全にブラックボックスになってしまう危険があるからです。

ガラス転移温度についてどこまで理解すべきか

では、このガラス転移温度についてどこまで理解すべきでしょうか。
まず、明細書の中に答えがないかという視点で読み進めていきます。

以下のように、本明細書中に「ガラス転移温度」という言葉は、数回登場します。

【請求項1】

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を
架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含むベースポリマーを
含み、かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である
医療用粘着テープのための粘着剤組成物。

【請求項13】

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む
粘着剤組成物前駆体を混合すること、

前記粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して
2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成すること、
及び、前記塗布液を基材上に塗布し、その後、
前記ウレタンアクリレートオリゴマーを架橋もしくは硬化して、
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるベースポリマーを形成させること、
を含む、医療用粘着テープのための粘着剤組成物の製造方法。

【課題を解決するための手段】

本発明は、1つの態様によると、ウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を架橋もしくは硬化して得られる
感圧接着性ポリマーを含むベースポリマーを含み、かつ、
前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である、
医療用粘着テープのための粘着剤組成物である。

本発明は、別の態様によると、上記の粘着剤組成物を高透湿性基材上に有する
医療用粘着テープである。

本発明は、さらに別の態様によると、上記の粘着剤組成物の層からなる、
医療用粘着テープである。

本発明は、さらに別の態様によると、ウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む粘着剤組成物前駆体を混合すること、

前記粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して
2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成すること、
及び、前記塗布液を基材上に塗布し、その後、

前記ウレタンアクリレートオリゴマーを架橋もしくは硬化して、
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるベースポリマーを形成させること、
を含む、医療用粘着テープのための粘着剤組成物の製造方法である。

【0011】

本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は一般的に市販されている
粘弾性測定装置等によって測定される。

glass-broken-7-texture_g1qddoru

【0013】

ベースポリマー

粘着剤組成物中のベースポリマーはウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を架橋もしくは硬化して得られる
感圧接着性ポリマーを含み、かつ、前記ベースポリマーの
ガラス転移温度(Tg)は0℃以下である。

ベースポリマーの原料としてウレタンアクリレートオリゴマーを用いることで
アクリレートモノマーなどのモノマーがベースポリマー中に残存して
皮膚刺激を生じることを防止することができる。

また、ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)0℃以下であり、
室温(例えば、25℃)などの使用温度よりも低いので、
皮膚に貼りつけるときに、粘着性を有し、また、皮膚形状に追従して
柔軟に変形することができるようになる。

【0031】

粘着剤組成物及び粘着テープの製造方法

本発明の粘着剤組成物は、1態様として、以下のとおりに製造されうる。

まず、ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤などの
原料を混合して粘着剤組成物前駆体を形成し、次いで、粘着剤組成物前駆体を
50℃以上100℃未満の温度に加熱して2000~100000mPa.s
の粘度を有する塗布液を形成する。

この塗布液を基材上に塗布し、その後、ウレタンアクリレートオリゴマーを
架橋もしくは硬化して、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である
ベースポリマーを形成させ、基材上において粘着剤組成物を製造する。

glass-texture-design_gjo8zvtu

このうち、なぜ「ガラス転移温度」が問題になるかについては、
【0013】に答えが書いてあります。

ここから読み取れるのは、ガラス転移温度というのは、ポリマーの柔らかさ
(柔軟性)と関係する。この温度を0℃としたことで体温ではもちろん、
水洗いなどの際、体温より低温になったとしても、接着層の皮膚・体の
凹凸への追従性が保持され、テープがはがれたりしないしないことを
言いたいのではないかという点です。

ガラス転移温度について調べてみる

専門知識の無い特許翻訳者がいきなり辞書や便覧で確認しようとしても、
コンテクスト理解には結びつきません。

まずは、明細書の記述を素直に読んで、何を言わんとしているのかを
推測してみることが大切です。その後で、ネット検索してみます。
そうすると、以下の解説が見つかります。

結晶性プラスチックにおいては、 結晶部分と非晶(非結晶)部分が
存在するが、温度を上げて行くと、 まず分子間力に拘束されない
非晶質部分の分子が動き出す温度(1)に達する。

更に温度を上げて行くと、ポリマーが分子間力で集まった 結晶部分の
分子までも動き出し、すなわちそのプラスチックが溶融する温度 「融点」
(2)に達する。 この時、(1)の温度を「ガラス転移点」という。

また、このガラス転移点以下では、非晶質部分の分子も熱運動しない
柔軟性のない状態、即ちガラス状態となるので、 物性変化の点移転として
そう呼ばれている。

一般的には、非晶質固体において、 ガラス転移を起こす温度をガラス転移点と
呼び、その上の温度域ではゴム状態、 それより低い温度域ではガラス状態となる。
https://www.kda1969.com/words/words_pla_2k_07.htm

「結晶」「非晶」「分子間力」など、
更に分からない言葉が出てきたと思いますが、とりあえず無視します。

最後のところを読み取ると、要するに

ガラス転移点以上ではゴムのように柔らかくなり、それ以外では
ガラス状態、つまり固くなる。」ことが分かり、検索前の推測が
概ね正しかったことになります。

あとは、化合物名や調製方法について解読するためには、
それなりの化学の専門知識が必要となりますが、
ここでの調査も時間が許す範囲にとどめるべきでしょう。

このように考えれば、とても無理だ、読めないと思っていた
化学系の特許明細書も、とりあえず納品レベルでの作業はやれそうな気が
してきたのではないでしょうか。

まとめ

本特許明細書が何を目指しているのか、まずはその大枠を把握しましょう。

そして、その際には、細部に踏み込んで、化合物名から構造や反応式を
考えるようなことはせず、作業に「必要な範囲と深さ」で調査することを
心掛けましょう。

プロの翻訳者には、量と品質を両立させつつ、納期厳守で継続的に
安定した仕事(アウトプット)をすることが求められているのだ
ということをくれぐれも忘れないようにして下さい。

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特許明細書を読み取るためには、理系の専門知識が大量に必要だ。

だから文系の自分は不利だ、無理だ、できない、と思っている人が
多いのには驚かされます。

本稿では、足りないのは知識ではなく思考力や論理力であること、
そしてその前提として素直に明細書に立ち向かうマインドに
問題があることを説明していきたいと思います。

以下の文章をよく読み、実践していただければ、巷に広まっている
「特許翻訳=理系有利」という「ドグマ」が瓦解すると思います。

足りないのは知識ではありません。
考えるという一手間を惜しむその脆弱マインドこそ問題なのです。

ここでは、2016年・セミコンジャパンで登場した
「ステルスダイシング」を素材として、その「言葉」からどのように
内容にたどり着くのか、その過程をお見せしたいと思います。

 参照)https://www.disco.co.jp/jp/news/event/sj2016/index.html

言葉を出発点としたアプローチ

「ステルスダイシング=ステルス+ダイシング」です。

そして、この言葉がセミコンジャパンで登場しているのですから、
半導体関連の技術についての言葉であるはずです。

ダイシングについて

まずは、半導体プロセスの一つである「ダイシング」について確認するため
「半導体+ダイシング」で検索します。

この際、大切なことは細かい知識に惑わされないことです。
「要するに」どういうこと?という質問を自分に投げかけて、
それに答えるようにして調べるようにしてください。

次に、従来のダイシングが抱える問題点を解決するために
「ステルス」ダイシングなるものが登場したと考えられますから、
まずは現状把握、つまり半導体プロセスにおけるダイシング工程と
そこでの問題点を確認します。

まず、グーグルサジェストを活用してみます。

半導体工程におけるダイシングには専用装置が存在し、
その工程にはフィルムが使われ、ディスコが代表的な装置メーカーであり、
その工程には「ブレード」「レーザー」が使われていることが推測できます。

ここまで確認したら、一度通しでお読みいただいた半導体関連の書籍
(下記で推奨書籍をご紹介しています)の索引を活用し、関連箇所を読みます。

20161220-1

あわせて、グーグル検索結果を「画像」に切り替えます。

20161220-2

出典)http://www.lintec.co.jp/e-dept/adwill/about/

ダイシングとは、ウェハー上に作成したチップを分離するために、
レーザーまたはカッター(ブレード)で切断する工程であることが分かります。

この後、YouTube等でダイシングプロセスの動画をチェックします。
従来のダイシングではゴミが発生するために洗浄工程が
必要であることが分かります。

となると、「ステルス」とは「コンタミ防止」に関連した技術ではないか
と推測できます。

ここまでの説明を読んで「難しい」と思った場合、
前提が欠如していることになります。

英語を勉強するのに「アルファベット」は知る必要があります。
特許明細書を読むために細かい専門知識は不要と言いましたが程度問題です。
最低限度の言葉は押さえてください。

もちろん、ネットで勉強する、知識ゼロからネット検索で芋ずる式に
知識を獲得する方法もありますが、いかんせん時間がかかります。

普通は、まず定評のある書籍を入手し、
半導体プロセス全体を押さえておく必要があります。

オススメするのは、前田さんの本です。
この2冊はぜひ購入してください。

この本の存在を知らない、あるいはここに書かれている基礎的な知識も
欠如している状態では、半導体案件を受けることはできません。

また、そのレベルで半導体が得意分野です、とか言わないようにしてください。
コーディネータに鼻で笑われてしまいます。

さて、事前にこうした本で学習済みであること、あるいは、
最初の依頼が半導体がらみだった場合は大急ぎでこうした本で
大枠を把握していただいたことを前提に、話を進めていきましょう。

ステルスの正体

すでに、ステルスがコンタミ防止がらみで出てきた技術に
関連するのではないかという推測はしていますから、
次は「ダイシング ステルス コンタミ」で検索します。

すると、

https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/etd/SD_tech_TLAS9004J.pdf
がヒットし、その中に「図1 ステルスダイシングの基本概念」が出てきます。

20161220-3

ウェハーの内部にレーザーの焦点があり、
これがスキャン(走査)されていることが分かります。

ウェハーの内部にのみ局所的・選択的な加工を施してありますから、
外部からはレーザーによる加工がなされたかどうかは
わからないことになります。

これが「ステルス」という意味ではないかと推測できます。

上記PDF内にも「ステルスダイシングは対象材質をその材質“内部”から
割断する方式であるため、対象材質を“外部”から切断する従来の
レーザダイシングとはその原理機構が明らかに異なります。」

との記述はこのことを示していると考えられます。

また、外部変化が無いということは、

レーザーやダイヤモンドカッターを使った機械的切断と違い、
削りかす(ゴミ)が発生しない「クリーンプロセス」であることが分かります。

参考)本プロセスの特徴については、
https://www.disco.co.jp/jp/laser/merits.html
にまとめられているように、コンタミ防止以外にもいろいろあるようです。

違いを端的に表現する力

20161220-4

出典:https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/etd/SD_tech_TLAS9004J.pdf

図6の説明には、「SD方式の場合、ステルスダイシング後は
個々のチップは依然として一体化したウェハーのままの状態であり、
その後テープエクスパンドにより初めてチップ分離されます。」とあります。

外からは見えない「切れ目」を入れておいて、
実際にチップを取り出す前に、ウェハーの裏面に貼ったテープを
引き延ばすことで、チップどうしを物理的に分離していることになります。

これは、日常生活で使っている湿布薬(モーラステープ)の使用例に似ています。

20161220-5

出展:http://hisamitsu-katahari.jp/sp/

つまり、レーザーを内部にフォーカスし、
見えない切れ目を作成しておいてからテープを引き延ばすことにより
分離するという視点は、技術としても操作としても、
何ら新しいものは無いことになります。

それをダイシングという工程に組み合わせた視点が新しいと言えます。
が、この理解に特段の専門知識は不要です。
専門知識の有無とは関係なく理解可能なのです。

レーザーのフォーカシングをウェーハ内部で行ったこと、
見えない切れ目を予め入れておいてからテープを引き延ばす
機械的操作と同時にチップを分離していること、ここがポイントです。

あえて理系知識を問題にするのなら、レーザーがどういうもので
そのフォーカシングが可能であるという点だけでしょう。

まとめ

文系だから、専門知識が無いから、
といったできない理由を探すことはやめましょう。

結局、当該特許明細書において、何が新しいのか、どういう発想で、
何に着想を得て出願された特許なのかと考えてみましょう。
このことで、特許の理解が加速します。

先入観を捨てて素直に特許明細書と向き合うことが何よりも大切です。

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特許明細書を読むための化合物命名法

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化学系特許明細書には、沢山の化合物が登場します。

では、これらの化合物はどのようなルールで命名されているのでしょうか。

こういう疑問が生じると、すぐに命名法の書籍を買って勉強しようとしたり、
命名法のセミナーに参加したりする人がいます。

でも、ちょっと待ってください。

そもそもそういう勉強は本当に必要なのでしょうか?
そこをちゃんと確認しておかないと、必ずしも必要とされない
勉強に時間とお金を無駄遣いすることになります。

命名法の完全マスターは化学系の専門家でもハードルが高いのですから。

今回は、化学系特許明細書を読む際に、最低限どこまで
知っていなければならないのか、命名法のポイントについて
お話したいと思います。

翻訳者が知るべき命名法の3つのルール

まず、命名法には、

① IUPAC(International Union of Pure & Applied Chemistry
  国際純正及び応用化学連合)の規則に基づくもの

② CAS(Chemical Abstract)によるもの

③ 慣用名によるもの、の3通りがあります。

①と②は多少の違いはありますが本質は同じです。

③は、いまだに広く利用されていますので、
これを知らないと古い文献を読むときに困ります。

ちなみに、化学の専門家になるためには、
①~③全てをマスターする必要があります。

IUPAC

IUPACは、わかりやすくて明確な命名を目指しており、
必ずしもある化合物の名称が1つに限定される必要はありません。

つまり、個々の化合物の命名には裁量の余地が残されているのです。
結果、IUPACでは名称と構造とは「多対1」の対応となっています。

CAS

これに対してCASでは、実験的又は理論的に取り上げられた
あらゆる化学種を収録して科学者の検索の用に供するように要請されます。

従って、CASの索引名は、同じ化学種が別名を持たないように規則を作り、
それが厳密に適用されることが期待されます。

そこで、CASにおいては原則として、
名称と構造との対応が、「1対1」となっています。

特許翻訳者にとっての命名法

特許翻訳者が構造式から名称を決定することは、通常求められていません。

従って、最低限押さえておくべきは、
同じ構造式に複数の名称が割り当てられている場合に、
明細書執筆者の注意力不足で、同一化合物の名称が統一されず、
同一明細書内で「ゆらぎ」が生じている可能性があることです。

特許翻訳者は、その場合の対応方法を知っておく必要がありますが、
以下のような方法で対応することができます。

まず、J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター
「化学物質の目的別検索」などを利用して、
別名の有無及びCAS登録番号を確認します。

J-GLOBAL

CAS登録番号については、化学情報協会の説明を参考にして下さい

CAS登録番号全般 – 化学情報協会

化学情報協会

CAS 登録番号 (CAS Registry Number: CAS RN) は,
世界的に利用されている、個々の化学物質に固有の識別番号です。

CAS 登録番号自体には化学的な意味はありませんが、
一つの物質あるいは分子構造に様々な体系名・一般名・商品名・慣用名などが
存在する場合にも間違いなく同定 できる手段となっています。

CAS 登録番号は、CAS の作成するすべてのデータベースに
用いられているほか、他の多くの公的・私的データベースや
化学物質規制リスト登録にも利用されています。

このようにして、ある化合物の名称が複数存在し、
それらが明細書内で統一されていない可能性がある場合に、

別名検索の結果とCAS番号を対比させることで、
明細書中の揺らぎが実際生じているのか、それとも、
同一化合物かと思われたものが別化合物(別CAS番号)であったのかを
確認することが可能となります。

また、同様な調査方法を使えば、化合物の一部が文字化け等で読めない場合、
文字化け部分を確定することができる場合もあります。

もちろん、これらの調査結果は、必要に応じて訳文と併せて
コメントとして依頼者に連絡することになります。

命名法誕生の背景と必要性

そもそもなぜこのような命名法が生まれたのかを知っておくことは、
命名法とどのように付き合うべきかを理解する上で重要です。

科学の進展と共に確認された化合物の数が膨大になってくると、
それまで使われてきた慣用名だけでは間に合わなくなることは
容易にご理解いただけると思います。

膨大な数の化合物を命名するための「命名の約束事」(ルール)が
必要となってきたのです。

そして、実験室で合成された化合物が新規物質であるか否かを
命名及びCAS番号検索によって判断することができれば、
研究も効率的に行えます。

加えて、構造の共通性(その構造に基づく特性・物性)をある命名ルールに
紐付けておくことは、専門家同士の議論や思考経済上も有益です。

ソフトウェアを活用して、構造から簡単に化合物名を決定できる時代には、
化学者が独力で複雑な化合物の命名をするニーズも薄れており、
命名できるスキル自体にさほどの価値があるとは思えません。

特許翻訳者が命名法をマスターする必要性

命名法のルールが何に着目しているのかさえ理解しておけば、
明細書を読み解く上での強力な武器になります。

例えば、明細書中に「~類」とあった場合、
その類に対応する化合物の構造上の特徴や特性が想起できれば、
明細書の意図するところをすばやく理解できる可能性があります。

けれども、

特許翻訳者が構造式を見て、ゼロから命名することや、
命名の間違いを指摘したり、その名称の化合物が実在するかどうかを
判断したり、新規物質かどうかを判定するといった作業を
求められることはないのです。

あくまで明細書中の化合物名の「揺らぎ」を疑った際に
CAS番号を使ってその確認をしたり、一部文字化けのものを修正したり
明細書中の化合物のグルーピングを行って構造・特性情報を読み取り、
コンテクストの素早い把握に役立てることができれば十分なのです。

翻訳関係者の話は鵜のみにするな

翻訳関係者や講師などの中には、自分が化学の専門家であることを
アピールするために、命名法の専門書を持ち出したり、
優秀な翻訳者であると言えるためにはそういう専門書をマスターすることが
必要であるかのような説明をしたりすることがあります。

しかし、そういうポジショントークに惑わされてはいけません。

命名法のルールは必要に応じてネットからいくらでも入手できますし、
化学系特許明細書の内容理解のために求められる命名法の知識は
そもそも限定的なのです。

間違っても化学者・研究者になろうとはしないでください。
時間と労力の無駄遣いになります。

まとめ

化学系特許明細書を読むために必要とされる「命名法」の知識は
あくまで限定的なものですので、巷の話に惑わされて
無駄な努力をしないように気をつけて下さい。

特許翻訳者に求められていることは、
命名法についてのルールが複数あることを知ること

同一化合物に複数の名称が対応している可能性と、
CAS登録番号の確認作業が翻訳作業に役立つことを知ること

命名法の大枠と、構造・特性の対応関係の概略を知り
素早く明細書の内容を把握することなのですから。

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受講感想を原文のまま「卒業生の声」として
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