ネットの相談コーナーを見ると、こんな相談をしている人がたくさんいます。

 

文系だから理系に比べて不利でしょうか?

文系が専門知識を身につけるにはどうしたらいいでしょうか?

 

多くは、文系女子(主婦)の方です。

 

これに対して、「理系の大学に入り直せ」といった
無茶苦茶なアドバイスをしている人がいます。

 

 

相談者は、主婦業・子育てを続けながら、
在宅で収入を得るための方途として特許翻訳者になろう、
そのための方法を模索して質問しているわけですから、
この答えはあまりに無責任と言えます。

 

講座へのお問い合わせでも、この点を不安に思っている方からの
ご相談が大変多いのです。

 

そこで、今回は、

 

文系が特許翻訳者になろうとするのは無理なのか。
なれたとしても長い学習期間が必要なのか。

 

について考えてみたいと思います。

 

 

 

文系・理系の区分けに騙されるな

 

自分は文系ですから、という人の話を聞いてみると、
高校時代に理系科目が嫌いになって勉強しなかったとか、
女性だからという理由で文系前提の進路指導された、

だから、大学も必然的に文系になったというケースが多いのです。

 

では、なぜ高校時代に理系科目(数学・物理・化学)が嫌いになったか
というと、教師に問題があるケースがほとんどです。

 

科目の面白さを伝えられない教師、本当に内容を理解せずに
とりあえず試験に出るから暗記しろというでたらめな指導をしている
教師が実に多いです。

 

生徒が授業中寝ているのは教師の力量不足です。

 

つまり、理系科目ができないから文系を選択したというより、
理系科目をちゃんと教えてもらわなかったから、
理系科目の面白さに触れることなく、消去法で文系になった
という人が多いのです。

 

自分は文系ですという人は、今一度考えて欲しいと思います。
本当にあなたは文系なのですか、と。積極的に文系を選んだのですか、と。

 

 

 

好きになれば得意になったはず

 

例えば、こんなケースを想像してみてください。

 

あなたの高校では、物理・化学の教師が爽やかなイケメン教師で
教え方がめちゃめちゃ上手い。

 

笑顔もすてきでいつもどんな質問にも喜んで答えてくれる。

 

そのイケメンが「僕の科目が好きになってくれたらうれしいな。」
とか言ったら、特に女性ならその科目は絶対に満点取ろう
と思うんじゃないですか?

 

その結果、理系に進んだ可能性も多分にあったのでは?

 

教師が嫌いだった、教え方が下手だったから
その教科が嫌いになり勉強しなくなった。
赤点ばかり取るようになった。

やっぱり自分は文系しかないと思うようになった。

 

それだけのことじゃないですか?

 

 

 

理系向きかの試金石となる名著

 

とはいえ、いまさら高校時代に戻ることはできません。

 

なので、ここで本当にその科目が自分に合わないのか、
向かないのか、嫌いなのかを確認して欲しいのです。

 

その確認のために読んで欲しい本が2冊あります。

 

一つは、「化学のドレミファ(黎明書房)」で、

 

 

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もう一つは、「物理の散歩道(岩波、筑摩書房)」です。

 

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いずれも理系なら知らない人はいない名著です。

 

前者については、品切れとなっていますので、
アマゾンや楽天ブックスなので中古品を入手するか、
図書館で借りることになると思います。

 

 

もし、これらの本をじっくり読んで、
科学的なモノの見方」に興味が全くわかないようなら
産業翻訳や特許翻訳などの専門性の高い文章を翻訳する仕事には
向いていない可能性があります。

 

翻訳業界では「専門知識」の有無を問題にするケースがほとんどですが、
実は知識より大切なものは「体系」です。

 

関連知識を自力で掘り出す力、未知を既知に転換する探索力こそが
重要なのです。

 

 

それが自分に備わっているか。本当に自分が文系なのか。
それを判定するための「試金石」となる本ですので、
是非入手して読んでみてください。

 

これらの本を読んで全く心が動かないとすれば別ですが、
多くの場合はそうじゃないと思います。
文系だと思っていたのは思い込みかも知れません。

 

 

 

科学的なモノの見方

 

ここでは具体例に沿って、あなたの向き・不向きを判定してみましょう。
ハスの葉はご存じですよね。では、どうやって水をはじいているのか
分かりますか?

 

図3

http://www.tousan13.com/?p=14891

 

最初は誰でもわからないのですから、調べましょう。

 

 

1)「はすの葉 水をはじく wiki」でまず検索してみます。

 

そうすると、ロータス効果という言葉が出てきます。

 

 

2)次に、Google検索のサジェスト機能を活用して、
ロータス効果 原理」で検索します。

 

そうすると、http://nano.willfair.com/article/122285548.htmlに、
図が載ってます。

 

 

図2

 

どうやらハスの葉の表面が特殊な構造になっていて水滴をはじくようです。

 

 

3)では、次に「ハスの葉 表面構造」で調べます。

 

ここでも、Googleのサジェスト機能を使いました。

そうすると、ヒットしたhttp://www.mech.keio.ac.jp/ja/souzou/proceedings2014/pdf/8-5.pdfから、

 

「ハスの葉の表面構造には数ミクロン単位の突起物があって、
この表面の凹凸(突起物)によって接触角が180度に近い状態となり、
超撥水構造となる。」と分かります。

 

 

4)そこで、次に「接触角」「超撥水構造」について調べます。

 

このように未知の言葉を芋ずる式に調べていきます。

 

 

5)次に、このロータス効果を使った特許を調べてみましょう。

 

https://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tkk/tokujitsu/tkkt/TKKT_GM201_Top.action

 

にアクセスし、

 

種別=特許公報にチェックし、

キーワード=検索項目で、請求の範囲を選んで、
検索キーワードに「ロータス効果」と入れて「キーワードで検索」
をクリックします。

 

2016年7月7日時点で6件ヒットしました。

 

 

その中の1つ、東レ先端素材株式会社・特許第5470628号
(基材の表面を高疎水性にする、基材の表面処理方法)を見ると、 

 

「本発明は、基材に高疎水性を付与するために
基材の表面を処理する方法に関する。

 

さらに詳細には、上記方法は、基板の処理中に、
低い表面エネルギーを有するが異なる鎖長を有する2つの異なる種類の
有機シラン分子
の自発的に生じる相分離を利用する。

 

これらのドメイン(domain)とマトリクス(matrix)構造の高さ差から生じ、相分離され低い表面エネルギーを有する長い有機シラン分子及び
短い有機シラン分子により形成された表面粗度
は、

 

それぞれロータス効果(Lotus effect)の超疎水性を再現する。
このように、上記方法は上記基板を高疎水性とすることができる。」 

 

 

図1

 

 

この内容は文系だと理解不能なのでしょうか?
逆に、理系だと専攻によらずいきなり理解できるものでしょうか。

 

そこが問題です。

 

もし、理系だと簡単に理解できるのに、文系だと理解不能だというのなら、
文系は不利あるいは対応不可能ということになります。

 

 

けれども、これに関しては

 

ハスの葉の表面と同じような段差を作る手段として分子の長短の差を
使っている
」とだけ理解できれば、残りの専門用語は少しずつ
理解を深めていけば足りる話なのではないでしょうか。

 

特許はそのアイデアが天から降ってくるワケではありません。
必ず参照にしたアイデア、競合他社の特許が存在します。

 

 

今回はたまたま自然界に存在するモノからヒントを得ているわけです。

だから、身の回りの製品や自然現象から「検索スキーム」に留意しながら
特許を読むクセをつけ、同時に類似特許をまとめて読むクセをつければ
特許が読めるようになるのです。

 

このポイントさえ外さなければ、
文系でも独学でもマスターすることは可能です。

 

 

ただし、多くの分野でこの見方(未知を既知にする探索ルートの設定方法)
を集積していくことになるので広範囲に対応できるようになるまでには
時間がかかります。

 

ついでに言えば、その時間、プロになるまで期間を圧縮する点にこそ、
講座やスクールの存在価値があります。

 

期間圧縮ができないのなら、
そうした講座やスクールに存在価値はありません。

 

 

 

まとめ

 

文系だから専門的・技術的な文章の翻訳ができないわけではない
ということがおわかり頂けたかと思います。

 

問題なのは、内容のキモを見抜く力を身につけること。
森を見て、木を見て、枝を見て、そして葉を見ることです。

 

一つ一つの葉だけに目を奪われてしまうと、
無限に知識を追い求めることになり、長い年月の果てに
挫折することになってしまいますのでご注意ください。

 

 

<追伸>

 

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