特許明細書を専門知識に依存せず読み取る方法

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高収入な在宅ワーク

特許明細書を読み取るためには、理系の専門知識が大量に必要だ。

だから文系の自分は不利だ、無理だ、できない、
と思っている人が多いのには驚かされます。

 

本稿では、足りないのは知識ではなく思考力や論理力であること、
そしてその前提として素直に明細書に立ち向かうマインドに
問題があることを説明していきたいと思います。

 

以下の文章をよく読み、実践していただければ、
巷に広まっている「特許翻訳=理系有利」という「ドグマ」が
瓦解すると思います。

 

足りないのは知識ではありません。
考えるという一手間を惜しむその脆弱マインドこそ問題なのです。

 

ここでは、2016年・セミコンジャパンで登場した
「ステルスダイシング」を素材として取り上げたいと思います。

 参照)https://www.disco.co.jp/jp/news/event/sj2016/index.html

 

 

 

言葉を出発点としたアプローチ

 

「ステルスダイシング=ステルス+ダイシング」です。

 

そして、この言葉がセミコンジャパンで登場しているのですから、
半導体関連の技術についての言葉であるはずです。

 

 

 

ダイシングについて

 

まずは、半導体プロセスの一つである「ダイシング」について
確認するため、「半導体+ダイシング」で検索します。

 

この際、大切なことは細かい知識に惑わされないことです。
「要するに」どういうこと?という質問を自分に投げかけて、
それに答えるようにして調べるようにしてください。

 

 

次に、従来のダイシングが抱える問題点を解決するために
「ステルス」ダイシングなるものが登場したと考えられますから、
まずは現状把握、つまり半導体プロセスにおけるダイシング工程と
そこでの問題点を確認します。

 

まず、グーグルサジェストを活用してみます。

 

半導体工程におけるダイシングには専用装置が存在し、
その工程にはフィルムが使われ、ディスコが代表的な装置メーカーであり、
その工程には「ブレード」「レーザー」が使われていることが推測できます。

 

ここまで確認したら、一度通しでお読みいただいた
半導体関連の書籍(下記で推奨書籍をご紹介しています)の
索引を活用し、関連箇所を読みます。

 

 

20161220-1

 

 

あわせて、グーグル検索結果を「画像」に切り替えます。

 

20161220-2

 

出典)http://www.lintec.co.jp/e-dept/adwill/about/

 

 

ダイシングとは、ウェハー上に作成したチップを分離するために、
レーザーまたはカッター(ブレード)で切断する工程
であることが分かります。

 

この後、YouTube等でダイシングプロセスの動画をチェックします。
従来のダイシングではゴミが発生するために
洗浄工程が必要であることが分かります。

 

 

となると、「ステルス」とは「コンタミ防止」に関連した技術
ではないかと推測できます。

 

ここまでの説明を読んで「難しい」と思った場合、
前提が欠如していることになります。

 

 

英語を勉強するのに「アルファベット」は知る必要があります。
特許明細書を読むために細かい専門知識は不要と言いましたが、
程度問題です。最低限度の言葉は押さえてください。

 

もちろん、ネットで勉強する、知識ゼロからネット検索で
芋ずる式に知識を獲得する方法もありますが、
いかんせん時間がかかります。

 

普通は、まず定評のある書籍を入手し、
半導体プロセス全体を押さえておく必要があります。

 

オススメするのは、前田さんの本です。
この2冊はぜひ購入してください。

 

 

 

 

 

 

 

この本の存在を知らない、あるいはここに書かれている基礎的な知識も
欠如している状態では、半導体案件を受けることはできません。

 

また、そのレベルで半導体が得意分野です、
とか言わないようにしてください。
コーディネータに鼻で笑われてしまいます。

 

さて、事前にこうした本で学習済みであること、あるいは
最初の依頼が半導体がらみだった場合は大急ぎでこうした本で
大枠を把握していただいたことを前提に、話を進めていきましょう。

 

 

 

ステルスの正体

 

すでに、ステルスがコンタミ防止がらみで出てきた技術に
関連するのではないかという推測はしていますから、
次は「ダイシング ステルス コンタミ」で検索します。

 

すると、

https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/etd/SD_tech_TLAS9004J.pdf
がヒットし、その中に「図1 ステルスダイシングの基本概念」が出てきます。

 

 

20161220-3

 

 

ウェハーの内部にレーザーの焦点があり、
これがスキャン(走査)されていることが分かります。

 

ウェハーの内部にのみ局所的・選択的な加工を施してありますから、
外部からはレーザーによる加工がなされたかどうかは
分からないことになります。

 

これが「ステルス」という意味ではないかと推測できます。

 

 

上記PDF内にも「ステルスダイシングは対象材質を
その材質“内部”から割断する方式であるため、
対象材質を“外部”から切断する従来のレーザダイシングとは
その原理機構が明らかに異なります。」

 

との記述はこのことを示していると考えられます。

 

また、外部変化が無いということは、
レーザーやダイヤモンドカッターを使った機械的切断と違い、
削りかす(ゴミ)が発生しない「クリーンプロセス」であることが分かります。

 

参考)本プロセスの特徴については、

https://www.disco.co.jp/jp/laser/merits.html
にまとめられているように、コンタミ防止以外にもいろいろあるようです。

 

 

 

違いを端的に表現する力

 

 

20161220-4

 

出典:

https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/etd/SD_tech_TLAS9004J.pdf

 

 

図6の説明には、「SD方式の場合、ステルスダイシング後は
個々のチップは依然として一体化したウェハーのままの状態であり、
その後テープエクスパンドにより初めてチップ分離されます。」とあります。

 

外からは見えない「切れ目」を入れておいて、
実際にチップを取り出す前に、ウェハーの裏面に貼ったテープを
引き延ばすことで、チップどうしを物理的に分離していることになります。

 

これは、日常生活で使っている湿布薬(モーラステープ)の使用例に似ています。

 

 

20161220-5

 

出展:http://hisamitsu-katahari.jp/sp/

 

 

つまり、レーザーを内部にフォーカスし、
見えない切れ目を作成しておいてからテープを引き延ばすことにより
分離するという視点は、技術としても操作としても、
何ら新しいものは無いことになります。

 

それをダイシングという工程に組み合わせた視点が新しいと言えます。
が、この理解に特段の専門知識は不要です。
専門知識の有無とは関係なく理解可能なのです。

 

レーザーのフォーカシングをウェーハ内部で行ったこと、
見えない切れ目を予め入れておいてからテープを引き延ばす
機械的操作と同時にチップを分離していること、
ここがポイントです。

 

あえて理系知識を問題にするのなら、
レーザーがどういうものでそのフォーカシングが可能であるという点だけでしょう。

 

 

 

まとめ

 

文系だから、専門知識が無いから、
といったできない理由を探すことはやめましょう。

 

結局、当該特許明細書において、何が新しいのか、どういう発想で、
何に着想を得て出願された特許なのかと考えてみましょう。
このことで、特許の理解が加速します。

 

先入観を捨てて素直に特許明細書と向き合うことが何よりも大切です。

 

 

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特許明細書を読むためには、
どの程度の専門知識が必要とされるのでしょうか。

 

その量と正確さ(厳密さ)について確認しておくことは、
これから特許翻訳者になろうとする人にとって、とても大切なことです。

 

なぜなら、知識は多ければ多いほど良い、正確であればあるほど良い
というのであれば、果てしなく専門知識を追い求めることになり、
翻訳者に求められる処理量とのバランスが取れなくなってしまうからです。

 

それどころか、何年勉強しても仕事が始められない
ということになってしまいます。

 

Tired woman in glasses sitting at the table with laptop and books. Looking at camera

 

 

競合する翻訳者との「比較的優位」が維持されている限り、
とりあえず仕事は受注できます。問題は、どこまで踏み込むかです。

 

特許翻訳者は、論文の査読委員のような専門知識は求められてはいません。

 

翻訳対象に大きな論理破綻がない前提で言えば、
翻訳者には「素早い内容把握」とコンテクスト理解に基づく
正確な翻訳」と「納期厳守」が求められています。

 

あまりに細部にこだわり過ぎて納期に間に合わないようでは、
プロの特許翻訳者とは言えませんが、逆に、内容を全く読み取ろうとせず
語句の置換作業に終始していたのでは、早晩仕事の依頼がなくなるでしょう。

 

後者は論外としても、大学・大学院・企業で専門知識を
ブラッシュアップしてきた人が、「潔癖症」で「完全主義」を
追い求めてしまうと職業人として特許翻訳者失格となってしまいます。

 

では、具体的にどの程度の深さで特許明細書を読めばいいのでしょうか。
具体例を挙げて説明しましょう。

 

 

 

題材とした特許明細書

 

今回取り上げたのは、以下の特許です。

 

【公開番号】特開2005-58288(P2005-58288A)
【発明の名称】医療用粘着テープのための粘着剤組成物及び粘着テープ

 

PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE TAPE AND PRESSURE-SENSITIVE ADHESIVE COMPOSITION FOR MEDICAL ADHESIVE TAPE
WO2005019369 (A1)

 

 

 

特許の大枠を把握しよう

 

結局のところ、何の特許なのか、
まずやることは特許の大枠の把握です。

一言で言えば何の特許か、どこがキモなのか、ということです。

 

 

まずは「課題」分を見てみましょう。

 

【課題】

 

高い透湿性と優れた防水性とを同時に有し、剥離時の皮膚刺激が少なく、 繰り返し接着が可能で、匂いがない医療用粘着テープを提供する。 また、高い透湿性と吸水性、保水性とを同時に有し、 剥離時の皮フ刺激が少なく 匂いがない医療用粘着テープを提供する

 

何=「医療用テープ」であることが分かります。

 

 

Content of First aid kit plasters, bandage and pills

 

 

となると、治療中という期間限定での使用となり、その間、
皮膚にしっかりと貼り付き、同時に容易に取り外し(剥離)可能で、
その際に皮膚への刺激が少ないこと(皮膚を傷つけたりしないこと)、
余計な匂いがしないこと、透湿性.吸水性.保水性などの特性が
問題となることは、明細書中の続きの文章を読まなくても分かりますので、
読んでいるのは、確認のためということになります。

 

次に、そのための「解決手段」をみてみましょう。

 

 

【解決手段】

 

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を 架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含む ベースポリマーを含み、 かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg) は0℃以下である、 医療用粘着テープのための粘着剤組成物。

 

成分について、「ウレタンアクリレートオリゴマー」というのが登場しますが、
ここで、構造式や性質を想起できる必要はありません。

 

化学を専攻した人や細部にこだわる人の中には、
こういう物質が実在するのだろうか、どういう構造をしているのだろうか、
などの疑問を解消すべく徹底的調べようとする人がいますが、不要です。

 

こういう「潔癖体質」「完全主義」は、
自分の首を絞めることになりますので要注意です。

 

知識があって不利になることはありませんが、
その知識を使う場所と使い方を間違えてはなりません。

 

プロというのは、納品レベルを維持しつつ大量処理が求められますので、
「訳質」と「処理速度」にリンクしない作業に余計なエネルギーを
回してはいけません。

 

ここで翻訳者に求められるのは、「ウレタンアクリレートオリゴマー」が、
「ウレタン」+「アクリレート」+「オリゴマー」の合成であって、
スペルミスがないことの確認だけです。逆にいえば、その程度の
化学的背景知識は求められているということになります。

 

 

次に気になるのは、「前駆体」でしょう。

 

文章構造から考えて、どうやら「前駆体」というものを
「架橋」「硬化」させると「ポリマー」というのが出来るらしい。
前駆体はポリマーの「前」の段階にある何かだろう、
くらいは解読できると思いますが、ここではそこで止めておきます。

 

 

では、最後に「解決手段」の中で取り上げられている「ガラス転移温度(Tg)
を取り上げてみたいと思います。

 

 

glass-broken-12-texture_g1spwoh_

 

 

上で取り上げた「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「前駆体」は、
中身(組成)についてのものだと推測されますが、
この「ガラス転移温度」は、本明細書が目指す製品の「特性」についてのもの
であると推測され、より発明の本質に関わるものであると考えられることから、
専門知識がなくても理解でき、かつこの点について理解できないと
本発明が完全にブラックボックスになってしまう危険があるからです。

 

 

 

ガラス転移温度についてどこまで理解すべきか

 

では、このガラス転移温度についてどこまで理解すべきでしょうか。
まず、明細書の中に答えがないかという視点で読み進めていきます。

 

以下のように、本明細書中に「ガラス転移温度」という言葉は、数回登場します。

 

 

【請求項1】

 

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む
前駆体を架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含むベースポリマーを含み、
かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である、
医療用粘着テープのための粘着剤組成物。

 

 

【請求項13】

 

ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む
粘着剤組成物前駆体を混合すること、

前記粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成すること、
及び、前記塗布液を基材上に塗布し、その後、
前記ウレタンアクリレートオリゴマーを架橋もしくは硬化して、
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるベースポリマーを形成させること、
を含む、医療用粘着テープのための粘着剤組成物の製造方法。

 

 

【課題を解決するための手段】

 

本発明は、1つの態様によると、
ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を
架橋もしくは硬化して得られる感圧接着性ポリマーを含むベースポリマーを含み、
かつ、前記ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下である、
医療用粘着テープのための粘着剤組成物である。

 

本発明は、別の態様によると、
上記の粘着剤組成物を高透湿性基材上に有する、医療用粘着テープである。

本発明は、さらに別の態様によると、上記の粘着剤組成物の層からなる、
医療用粘着テープである。

 

本発明は、さらに別の態様によると、
ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤を含む
粘着剤組成物前駆体を混合すること、
前記粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成すること、
及び、前記塗布液を基材上に塗布し、その後、
前記ウレタンアクリレートオリゴマーを架橋もしくは硬化して、
ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であるベースポリマーを形成させること、
を含む、医療用粘着テープのための粘着剤組成物の製造方法である。

 

 

【0011】

 

本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は一般的に市販されている
粘弾性測定装置等によって測定される。

 

 

glass-broken-7-texture_g1qddoru

 

 

 

【0013】

 

ベースポリマー

 

粘着剤組成物中のベースポリマーはウレタンアクリレートオリゴマー及び
紫外線(UV)開始剤を含む前駆体を架橋もしくは硬化して得られる
感圧接着性ポリマーを含み、かつ、前記ベースポリマーの
ガラス転移温度(Tは0℃以下である。

 

ベースポリマーの原料としてウレタンアクリレートオリゴマーを
用いることで、アクリレートモノマーなどのモノマーがベースポリマー中に
残存して皮膚刺激を生じることを防止することができる。

 

また、ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)0℃以下であり、
室温(例えば、25℃)などの使用温度よりも低いので、
皮膚に貼りつけるときに、粘着性を有し、また、皮膚形状に追従して
柔軟に変形することができるようになる。

 

 

【0031】

 

粘着剤組成物及び粘着テープの製造方法

 

本発明の粘着剤組成物は、1態様として、以下のとおりに製造されうる。

まず、ウレタンアクリレートオリゴマー及び紫外線(UV)開始剤などの
原料を混合して粘着剤組成物前駆体を形成し、次いで、
粘着剤組成物前駆体を50℃以上100℃未満の温度に加熱して2000~100000mPa.sの粘度を有する塗布液を形成する。

 

この塗布液を基材上に塗布し、その後、ウレタンアクリレートオリゴマーを
架橋もしくは硬化して、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である
ベースポリマーを形成させ、基材上において粘着剤組成物を製造する。

 

 

glass-texture-design_gjo8zvtu

 

 

このうち、なぜ「ガラス転移温度」が問題になるかについては、
【0013】に答えが書いてあります。

 

ここから読み取れるのは、ガラス転移温度というのは、ポリマーの柔らかさ(柔軟性)
と関係する。
この温度を0℃としたことで体温ではもちろん、水洗いなどの際、
体温より低温になったとしても、接着層の皮膚・体の凹凸への追従性が保持され、
テープがはがれたりしないしないことを言いたいのではないかという点です。

 

 

 

ガラス転移温度について調べてみる

 

専門知識の無い特許翻訳者がいきなり辞書や便覧で確認しようとしても、
コンテクスト理解には結びつきません。

 

まずは、明細書の記述を素直に読んで、何を言わんとしているのかを
推測してみることが大切です。その後で、ネット検索してみます。
すうすると、以下の解説が見つかります。

 

結晶性プラスチックにおいては、 結晶部分と非晶(非結晶)部分が存在するが、温度を上げて行くと、 まず分子間力に拘束されない非晶質部分の分子が動き出す温度(1)に達する。 更に温度を上げて行くと、ポリマーが分子間力で集まった 結晶部分の分子までも動き出し、すなわちそのプラスチックが溶融する温度 「融点」(2)に達する。 この時、(1)の温度を「ガラス転移点」という。 また、このガラス転移点以下では非晶質部分の分子も熱運動しない 柔軟性のない状態、即ちガラス状態となるので、 物性変化の点移転としてそう呼ばれている。 一般的には、非晶質固体において、 ガラス転移を起こす温度をガラス転移点と呼び、その上の温度域ではゴム状態、 それより低い温度域ではガラス状態となる。

 

http://www.kda1969.com/words/words_pla_2k_07.htm

 

「結晶」「非晶」「分子間力」など、
更に分からない言葉が出てきたと思いますが、とりあえず無視します。

 

最後のところを読み取ると、
要するに「ガラス転移点以上ではゴムのように柔らかくなり、
それ以外ではガラス状態、つまり固くなる。」ことが分かり、
検索前の推測が概ね正しかったことになります。

 

あとは、化合物名や調製方法について解読するためには、
それなりの化学の専門知識が必要となりますが、
ここでの調査も時間が許す範囲にとどめるべきでしょう。

 

このように考えれば、とても無理だ、読めないと思っていた
化学系の特許明細書も、とりあえず納品レベルでの作業はやれそうな気が
してきたのではないでしょうか。

 

 

 

まとめ

 

本特許明細書が何を目指しているのか、まずはその大枠を把握しましょう。

そして、その際には、細部に踏み込んで、化合物名から構造や反応式を
考えるようなことはせず、作業に必要な範囲と深さで調査することを心掛けましょう。

 

プロの翻訳者には、量と品質を両立させつつ、納期厳守で継続的に
安定した仕事(アウトプット)をすることが求められているのだということを
くれぐれも忘れないようにして下さい。

 

 

レバレッジ特許翻訳講座

 

 

<追記>

 

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これから特許翻訳者になろうと考えている人や
すでに特許翻訳の仕事をしている人が、
知識をブラッシュアップするためにもっと関連情報を入手したい、
最新情報を入手したいといった場合、
そうした情報をどこから取ればいいでしょうか?

 

ジャーナルについては本ブログの別記事にて
紹介させていただきましたので、
それ以外の情報源についてお話したいと思います。

 

まず多くの人が連想するのが、翻訳者どうしのお茶会・勉強会、
翻訳会社が開催しているセミナーでしょう。

 

しかし、もっと良い情報源があります。
最新情報をその道の専門家から入手できる素晴らしい情報源があります。
それはショウコンベンションなどのイベントです。

 

業界団体が集まって開催されるので、
関連情報を短期間に一気に集めることができます。

 

また、当該技術を説明してくれるのはその製品の専門家、
場合によっては開発者自身です。

 

引退した翻訳者がやっているようなセミナーとは違います。
10年前、20年前のカビの生えたような情報ではありません。
フレッシュな情報、最先端情報です。

 

今回は、講座の受講生にもお勧めしている
ショウやコンベンションの活用術についてお話していきましょう。

 

自分の得意分野については、常に業界の最新ニュースについて
語れるぐらいでなければ偽物です。

 

 

 

翻訳者におススメのイベント会場

 

東京ビックサイト

 

まずは、公式ページ(http://www.bigsight.jp/)にアクセスして下さい。
次に、「イベント情報」(http://www.bigsight.jp/event/)を
確認しましょう。

 

 

 

カレンダーをめくっていけば、
自分が得意分野にしようとしている、あるいは
得意分野としている特許を出願していそうな会社や
その会社が属している業界団体が開催しているイベントを
見つけることができるでしょう。

 

ここでポイントとなるのは、イベント名や、
主催している会社の名前や業界団体を見た時に、
おおよそどの分野の技術についてのものであるか、
を特定できる程度の「常識」は必要だということです。

 

また、特定分野を扱っているイベントは、
毎年、同時期に開催されることが多いので、
年間スケジュールに入れておいて、
予定はブロックしておくことが肝要です。

 

不意に仕事が入ったときに「参加するイベントが集中しているかどうか、
その仕事を受けるとスケジュールに余裕がなくなるかどうか」を
即座に確認できるカレンダーが必要です。

 

 

 

東京国際フォーラム

 

公式ページ(https://www.t-i-forum.co.jp/)の
カレンダーをめくっていただくとおわかりだと思いますが、
こちらは学会・研究会系が多いです。

 

 

 

それ以外だと、特定テーマで開催される企業のシンポジウムが
比較的多いようなので、あるテーマでじっくり知識を吸収したい
という場合はオススメです。

 

なお、事前登録制になっていることが多く、
急に思いついて参加しようとしても満席で参加できない可能性が
ありますので注意が必要です。

 

東京ビックサイトで業界全体の情報を仕入れておいて、
特定の企業や学会まで絞り込めたら、
こちらの会場で開催されるイベントを活用して知識の深掘りを
するといいでしょう。

 

いずれにせよ、事前に企業のサイトを読み込んで
背景情報は頭に入れておく、主力商品に関連した特許を
読みこんでおくといった準備作業は必要です。

 

研究者や技術者に質問するなどして有意義な時間を過ごすためにも、
その程度の事前準備はしておきたいものです。

 

 

 

幕張メッセ

 

公式ページ(https://www.m-messe.co.jp/)の
イベントカレンダー(https://www.m-messe.co.jp/event/)は、
「展示会・見本市」「学会・会議」のタブがあり、
使いやすくなっています。

 

 

 

同じ業界団体のイベントが春はビックサイト、
秋はメッセというように年2回開催されるケースもありますが、
メッセでしか開催されていないイベントもありますので注意が必要です。

 

最初の1~2年は、思いつきでもいいので
いろんなイベントに参加してください。

 

そして、自分の好みや方針との関係で、
継続して参加するイベントが絞られてきたら、
その分野の知識を一気に増やして当業者レベルに近づけるでしょう。

 

その段階になったら、毎回参加するイベントで最新情報の確認だけ
行うようにすれば、さほど負担にはならないと思います。

 

 

 

イベント参加時の注意点

 

地方から参加する場合は、ホテルの予約や移動手段の確保を
早めにしてください。

 

離れた場所から、首都圏のラッシュにもまれて会場まで移動すると
疲労困憊します。

 

また、名刺は多めに用意しましょう。
名刺を渡さないと資料をくれない場合もあります。

 

さらに、こうしたイベントでは情報だけを入手するために
質問している「調査屋」は嫌われます。

 

素直に「御社の特許について翻訳の仕事をさせていただいているものです」
と言った方がいいかも知れません。

 

聞かれなければ答える必要はありませんが、
どのように受け答えするかは事前にシミュレーションしておきましょう。

 

また、ポスターセッションが併設されている場合は大チャンスです。
研究者本人が説明してくれますから、自分が翻訳した特許の出願人に
会えるかも知れません。

 

研究者というのは「承認欲求」が異常に強い人種なので、
もしあなたが「あの特許を出された○○さんですよね?」
「○○さんのXX関連の特許は全部読んでいますよ。」
とでも言おうものならもう大変です。

 

1時間でも2時間でも話を聞くはめになるかも知れません。
タダで専門家からレクチャーを受けることができるわけです。

 

 

 

その他の情報源

 

企業が独自に開催するイベントがあります。

 

ある特定企業の仕事が多い場合には、このようなイベントは
仕事に必要な情報をまとめて入手できるチャンスです。

 

企業のサイトをブックマークしておいて、イベントカレンダーを
定期的にチェックしましょう。

 

メルマガを発行している場合は、必ず登録しておいてください。
メルマガは最新ニュースを自動的に配信してくれますから、
イベント情報を見逃すこともありません。

 

 

 

東京以外でのイベント

 

大阪、名古屋などの地方都市でもイベントは開催されていますので、
移動や宿泊の費用が負担になるという方は、
できるだけ地元の情報を収集するようにしてください。

 

地方にも全国的・世界的に有名な企業はあります。
また、工場見学という手もあります。

 

大切なことは、自分がその分野では非常に詳しいんだ
というプライドを持つことです。

 

得意分野として打ち出している人が、
最近面白い技術が出てますかと聞かれて、
いきなり声が小さくなってしまうのは変です。

 

 

 

まとめ

 

翻訳者だからと言って、いつも翻訳関連の雑誌を読み、
翻訳者どうしでだべって満足しているようでは、
レベルアップは望めません。

 

常に、業界の最先端の情報を仕入れ、専門家とも対等に
議論できるようなレベルの特許翻訳者を目指すべきです。

 

少なくとも、最終目標はそこに設定すべきです。

 

とりあえず日々の生活には困らないというレベルで満足していると、
知らない間にレベルダウンしてしまいます。

 

そのためには、各種イベント及び同時開催されている発表会にも
積極的に参加すべきです。

 

 

(関連記事)特許翻訳者のためのジャーナル活用術

 

 

 

<追伸>

 

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特許翻訳者を目指して特許翻訳の勉強をしている人だけでなく、
すでに特許翻訳者になっている人の中にも、
特許に書いてあることが最先端だ」と思っている人が
少なからずいらっしゃいますが、コレは間違いです。

 

最先端技術情報は、実は特許ではありません。

 

また、特許を読む上でキモとなる「背景知識」は、
特許だけを読んでいたのでは身につきません。

 

この記事では、その辺りの誤解を解くと同時に、
特許翻訳者になるための学習に、
ジャーナルを取り入れる有効性についても
詳しくお話していきたいと思います。

 

 

 

特許翻訳者の誤解(研究者が目指すもの)

 

皆さんは、企業の研究者が日々何をモチベにして頑張っているとお考えでしょうか。

 

上司の評価?ボーナスの査定?それとも人間関係?会社員ですからね。
もちろんそれもあるでしょう。

 

けれど、研究者になったからには、「研究者としての評価」を上げることを
一番に考えるはずです。では、「研究者の評価」は特許出願の数でしょうか?
会社にとってお金を生み出すエース級特許でしょうか?それも否定はしません。

 

けれども、研究者としての評価は、やはり、自分が執筆者として
名前が出ている論文が一流の雑誌(ジャーナル)に掲載され、
それが世界中の一流の学者の論文に引用されることだと思います。

 

学会に参加したときに、「君の論文読んだよ。凄いね。
うちの研究室でもすごい話題になっているよ。」

 

 

Image of a business team with its leader being at the conference on the foreground

 

 

なんて言われたら舞い上がってしまいます。
研究者というのはそういう生き物なのです。

 

 

もちろん、論文を出すだけではダメです。
論文の数だけでなく、個々の論文の質(インパクトファクター)
被引用数などで評価される研究者のいわば「戦闘力」
(ドラコンボールで登場するスカウターに表示される数値)
が大きければ大きい程、研究者の評価も急上昇し、
当然、研究者本人の満足度もアップするはずです。

 

逆に、この戦闘力がゴミレベルなら、
いくら職場の上司に評価されていても、論文がゴミ認定されれば
研究者仲間からは、当然、研究者の頭脳レベルは
「ゴミ」認定されてしまいますよね。

 

ここで大切なのは、研究者自らの第一義的評価基準が
「特許」ではないということです。

 

 

企業が、職務発明規定により「金一封」というインセンティブ(※)
を与えている場合であっても、その金額はせいぜいボーナスが
幾分増えたかなという程度です。

 

多くの研究者は、特許の対価に期待して研究しているわけではなく、
研究者として一流の認定を受けたいのです。

 

ですから「俺の特許で会社が100億円儲かったから半分の50億よこせ。」
などど言ったら、日本の村社会ではそれこそ「鼻つまみ者」です。

 

会社はその特許を生み出すために、研究所を建設し、
高学歴社員を大量に採用し、実験装置に大金をはたいて研究活動を
支援しているのです。

 

 

Flu virus experiment -  scientist in laboratory with microscope, wear protective eyewear

 

 

会社には利益を、従業員(研究者)には名誉を」です。
研究者に渡される最高の報酬はお金ではありません。
名誉なのです。

 

※報奨金の相場については、「職務発明対価請求ナビ」等を参照してください。

 

 

であるとするなら、ライバル企業(大学、各種研究機関を含む)で
同じ分野の研究をしている研究者からの高い評価を得るため、
誰よりもすばらしい論文を誰よりも多く、
メジャーなジャーナルに発表したいと思うはずです。

 

そして、このことがときどき「勇み足」となり、
特許出願できない事態(※)を招くことになります。

 

もし、研究者の心が、特許出願に向かっているとすれば、
そもそもこのような事態は起こりえない得ないはずです。
まず、研究者の頭の中が「論文発表ありき」だからこのような問題が起きるのです。

 

※「学会発表する場合に、特許関係で気をつけること
(名古屋大学、学術研究・産学官連携推進本部)を参照のこと。
併せて、特許法第29条1項の新規性についての特許庁の資料を参照願います。

 

 

 

ジャーナルに旬の情報が掲載されるワケ

 

ジャーナルの種類にもよりますが、
投稿から掲載されるまでの日数は概ね数十日です。
少なくとも、数ヶ月以上かかることはありません。

 

ちなみに、「Applied Physics Express(APEX)」2008年1月創刊号によれば、
「JJAP Express Lettersは、投稿からオンライン版掲載まで
平均35日という迅速な出版プロセスを持っています(最短15日)。

 

この特徴は、新編集体制を導入して、APEXでもさらに充実して行きます。」
となっています。研究者は、このスピード感の中で争っています。

 

もし、あなたが得意分野の最新情報に精通したいのなら、
ジャーナルをフォロー(定期購読)すべきです。

 

ちなみに、わたしの主催している講座では、
Journal of Electrochemical Society」及び
Journal of Vacuum Science & Technology A, Journal of Vacuum Science & Technology B」の購読をすすめています。

 

加えて、ジャーナルには、査読(Peer Review)プロセス(※)が
組み込まれているため、内容・文体などの点において
特許明細書を上回るクオリティが担保されています。

 

 

特許明細書を活用して特許翻訳を勉強している人は、
「特許には間違いが多い」と文句を言いますが、
書いている人のレベルも査読のプロセスの有無も、
そして何より執筆者の意気込みがジャーナルと特許では違います。

 

質の高い情報を求めるなら、一流ジャーナルを定期購読すべきです。

 

加えて、複数の学会に参加、研究者が参加する
ショウ・コンベンションの類もフォローすべきです
特許のネタは特許翻訳業界の外にあるのですから。

 

※「査読」については、例えば、
査読(Peer Review)とは何か?」を参照願います。

 

 

 

特許の鮮度

 

では、ジャーナルの鮮度に比べて特許のそれはどの程度なのでしょうか?

 

この点については、特許庁のサイトに公開されています。
そこには、「公開特許公報については、出願日から18月(1年6月)
とあります。

 

 

そもそも特許法の目的は、特許法1条に記載されているように
「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、
もつて産業の発達に寄与すること」です。

 

特許制度というのは、世の中にとって「有用な」技術を、
特許という形で一般に公開してもらう見返りとして、
公開した者に特許権という独占権を与えるものです。

 

この1年半という非公開期間が長くなれば、
公開した者にとっては先行者利益が増大し有利ですが、反面、
ライバル企業からみれば似た発明(場合により同一発明)に重複して
投資するリスクが増大してしまいます。

 

結果、産業界のリソースを無駄食いすることになります。

 

この期間設定は、秘密にしたい側の利益と公開して欲しい側との
バランス(利益考量)から決定されたものと考えることができます。

 

なので、あなたが最先端情報だと思って見ていた特許は、
1年半以上前のものであることになります。

 

 

研究者が研究テーマを選定するときに、
特許だけを決定材料にすることはありません。

 

なぜかというと、情報が古いからです。

 

関係者が見ているジャーナルを普段から読み込んでいる研究者が
特許を読む理由として考えられるのは、
例えば自分の研究予算を確保するために、
特許を参考にして「この研究が金になる」という
アピール材料を探すためでしょう。

 

 

もちろん、企業の研究部門が他社特許を参考にして
研究テーマを探す場合、より直裁的に他社に対して
特許出願数・取得数を争うことが目的だったりしますが、

 

ジャーナルで名前を売ることが目的の研究者が、
他社特許との比較ありきでテーマ選定することはありません。

 

この辺りは、サイエンティスト志向とエンジニア志向の違いが
出る場面とも考えられます。

 

 

 

翻訳者がジャーナルを読むことによる副次的効果

 

まず、特許判例データベースにアクセスしてください。

 

「平成 12年 (行ケ) 409号 特許取消決定取消請求事件」の中に、
次の箇所が見つかると思います。

 

「ウ 特開昭62-90863号公報(乙第4号証)
「一方Li+イオン等の陽イオンを取り込んだ黒鉛層間化合物を
負極として用いることは当然考えられ,事実,例えば
特開昭59-143280号公報に,陽イオンを取り込んだ黒鉛層間化合物を
負極として用いることが記載されている。しかしながら,
かかる陽イオンを取り込んだ黒鉛層間化合物は極めて不安定であり,
特に電解液と極めて高い反応性を有していることは,エイ・エヌ・デイ・・・等の「ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティー・・・1970年」
の記載から明らかであり
,」。

 

このように、代表的なジャーナルは、特許判例でも引用されていることから、
その有用性がおわかりいただけると思います。

 

 

 

特許と論文との関連

 

まず、「”journal of electrochemical society” google patent」
で検索してみましょう。

 

20160825-1

 

 

この中で、赤枠で囲った特許を見てみます。

 

Method for maskless chemical and electrochemical machining

公告番号              US4283259 A

公開タイプ           認定

出願番号              US 06/037,074

公開日                  1981年8月11日

出願日                  1979年5月8日

優先日                  1979年5月8日

 

 

この特許の「2. Background Art」に、

 

「The classical methods of machining which rely on
deformation mechanisms are limited in their resolution and
result in deformation of the machined surface.

 

The problems associated with deformation of the machined surface have in part been overcome by electrochemical machining techniques.

W. Kern and J. M. Shaw, in Journal of Electrochemical Society, Electrochemical Technology, Vol. 118, No. 10, pp. 1699-1704
disclose a technique for delineation of high resolution patterns in
tungsten films on semiconductor device wafers.」とあります。

 

 

翻訳者募集のページで、「当該分野における背景知識があること
という記載を見たことがあると思います。

 

背景知識とは、当該分野の特許出願をしている当業者の知識が
地層のように積み重なったものです。

 

当該分野の背景知識に習熟するためには、
目の前にある特許だけを見るのではなく、
当業者がすでに発表しているジャーナルを追跡し、
関連情報を根こそぎ拾う力が必要です。

 

それなくして、当業者レベルの背景知識があるとは
言えないのではないでしょうか。

 

 

ちなみに、読むべきジャーナルは自分が得意としている分野で違います。

 

ジョブとして読んでいる特許の「引用非特許」の箇所に
同じジャーナルが何度も登場するなら、
それを定期購読して読むようにしましょう。

 

わたしが主催している講座の受講生・卒業生も、
学会や学会論文をフォローしている人が増えてきました。

 

 

 

まとめ

 

もしあなたが得意分野の最新情報に精通したいのなら、
ぜひ代表的なジャーナルをフォローしてみて下さい。

 

また、特許はその発表論文との関連で読むようにすると、
より深く理解できますし、発明の内容(技術思想)の立体的把握にも
きっと寄与するはずです。

 

 

 

<追伸>

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ネットの相談コーナーを見ると、こんな相談をしている人がたくさんいます。

 

文系だから理系に比べて不利でしょうか?

文系が専門知識を身につけるにはどうしたらいいでしょうか?

 

多くは、文系女子(主婦)の方です。

 

これに対して、「理系の大学に入り直せ」といった
無茶苦茶なアドバイスをしている人がいます。

 

 

相談者は、主婦業・子育てを続けながら、
在宅で収入を得るための方途として特許翻訳者になろう、
そのための方法を模索して質問しているわけですから、
この答えはあまりに無責任と言えます。

 

講座へのお問い合わせでも、この点を不安に思っている方からの
ご相談が大変多いのです。

 

そこで、今回は、

 

文系が特許翻訳者になろうとするのは無理なのか。
なれたとしても長い学習期間が必要なのか。

 

について考えてみたいと思います。

 

 

 

文系・理系の区分けに騙されるな

 

自分は文系ですから、という人の話を聞いてみると、
高校時代に理系科目が嫌いになって勉強しなかったとか、
女性だからという理由で文系前提の進路指導された、

だから、大学も必然的に文系になったというケースが多いのです。

 

では、なぜ高校時代に理系科目(数学・物理・化学)が嫌いになったか
というと、教師に問題があるケースがほとんどです。

 

科目の面白さを伝えられない教師、本当に内容を理解せずに
とりあえず試験に出るから暗記しろというでたらめな指導をしている
教師が実に多いです。

 

生徒が授業中寝ているのは教師の力量不足です。

 

つまり、理系科目ができないから文系を選択したというより、
理系科目をちゃんと教えてもらわなかったから、
理系科目の面白さに触れることなく、消去法で文系になった
という人が多いのです。

 

自分は文系ですという人は、今一度考えて欲しいと思います。
本当にあなたは文系なのですか、と。積極的に文系を選んだのですか、と。

 

 

 

好きになれば得意になったはず

 

例えば、こんなケースを想像してみてください。

 

あなたの高校では、物理・化学の教師が爽やかなイケメン教師で
教え方がめちゃめちゃ上手い。

 

笑顔もすてきでいつもどんな質問にも喜んで答えてくれる。

 

そのイケメンが「僕の科目が好きになってくれたらうれしいな。」
とか言ったら、特に女性ならその科目は絶対に満点取ろう
と思うんじゃないですか?

 

その結果、理系に進んだ可能性も多分にあったのでは?

 

教師が嫌いだった、教え方が下手だったから
その教科が嫌いになり勉強しなくなった。
赤点ばかり取るようになった。

やっぱり自分は文系しかないと思うようになった。

 

それだけのことじゃないですか?

 

 

 

理系向きかの試金石となる名著

 

とはいえ、いまさら高校時代に戻ることはできません。

 

なので、ここで本当にその科目が自分に合わないのか、
向かないのか、嫌いなのかを確認して欲しいのです。

 

その確認のために読んで欲しい本が2冊あります。

 

一つは、「化学のドレミファ(黎明書房)」で、

 

 

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化学のドレミファ 1 〔新装・改訂〕 / 米山正信 【全集・双書】
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もう一つは、「物理の散歩道(岩波、筑摩書房)」です。

 

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新物理の散歩道(第1集) [ ロゲルギスト ]
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いずれも理系なら知らない人はいない名著です。

 

前者については、品切れとなっていますので、
アマゾンや楽天ブックスなので中古品を入手するか、
図書館で借りることになると思います。

 

 

もし、これらの本をじっくり読んで、
科学的なモノの見方」に興味が全くわかないようなら
産業翻訳や特許翻訳などの専門性の高い文章を翻訳する仕事には
向いていない可能性があります。

 

翻訳業界では「専門知識」の有無を問題にするケースがほとんどですが、
実は知識より大切なものは「体系」です。

 

関連知識を自力で掘り出す力、未知を既知に転換する探索力こそが
重要なのです。

 

 

それが自分に備わっているか。本当に自分が文系なのか。
それを判定するための「試金石」となる本ですので、
是非入手して読んでみてください。

 

これらの本を読んで全く心が動かないとすれば別ですが、
多くの場合はそうじゃないと思います。
文系だと思っていたのは思い込みかも知れません。

 

 

 

科学的なモノの見方

 

ここでは具体例に沿って、あなたの向き・不向きを判定してみましょう。
ハスの葉はご存じですよね。では、どうやって水をはじいているのか
分かりますか?

 

図3

http://www.tousan13.com/?p=14891

 

最初は誰でもわからないのですから、調べましょう。

 

 

1)「はすの葉 水をはじく wiki」でまず検索してみます。

 

そうすると、ロータス効果という言葉が出てきます。

 

 

2)次に、Google検索のサジェスト機能を活用して、
ロータス効果 原理」で検索します。

 

そうすると、http://nano.willfair.com/article/122285548.htmlに、
図が載ってます。

 

 

図2

 

どうやらハスの葉の表面が特殊な構造になっていて水滴をはじくようです。

 

 

3)では、次に「ハスの葉 表面構造」で調べます。

 

ここでも、Googleのサジェスト機能を使いました。

そうすると、ヒットしたhttp://www.mech.keio.ac.jp/ja/souzou/proceedings2014/pdf/8-5.pdfから、

 

「ハスの葉の表面構造には数ミクロン単位の突起物があって、
この表面の凹凸(突起物)によって接触角が180度に近い状態となり、
超撥水構造となる。」と分かります。

 

 

4)そこで、次に「接触角」「超撥水構造」について調べます。

 

このように未知の言葉を芋ずる式に調べていきます。

 

 

5)次に、このロータス効果を使った特許を調べてみましょう。

 

https://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tkk/tokujitsu/tkkt/TKKT_GM201_Top.action

 

にアクセスし、

 

種別=特許公報にチェックし、

キーワード=検索項目で、請求の範囲を選んで、
検索キーワードに「ロータス効果」と入れて「キーワードで検索」
をクリックします。

 

2016年7月7日時点で6件ヒットしました。

 

 

その中の1つ、東レ先端素材株式会社・特許第5470628号
(基材の表面を高疎水性にする、基材の表面処理方法)を見ると、 

 

「本発明は、基材に高疎水性を付与するために
基材の表面を処理する方法に関する。

 

さらに詳細には、上記方法は、基板の処理中に、
低い表面エネルギーを有するが異なる鎖長を有する2つの異なる種類の
有機シラン分子
の自発的に生じる相分離を利用する。

 

これらのドメイン(domain)とマトリクス(matrix)構造の高さ差から生じ、相分離され低い表面エネルギーを有する長い有機シラン分子及び
短い有機シラン分子により形成された表面粗度
は、

 

それぞれロータス効果(Lotus effect)の超疎水性を再現する。
このように、上記方法は上記基板を高疎水性とすることができる。」 

 

 

図1

 

 

この内容は文系だと理解不能なのでしょうか?
逆に、理系だと専攻によらずいきなり理解できるものでしょうか。

 

そこが問題です。

 

もし、理系だと簡単に理解できるのに、文系だと理解不能だというのなら、
文系は不利あるいは対応不可能ということになります。

 

 

けれども、これに関しては

 

ハスの葉の表面と同じような段差を作る手段として分子の長短の差を
使っている
」とだけ理解できれば、残りの専門用語は少しずつ
理解を深めていけば足りる話なのではないでしょうか。

 

特許はそのアイデアが天から降ってくるワケではありません。
必ず参照にしたアイデア、競合他社の特許が存在します。

 

 

今回はたまたま自然界に存在するモノからヒントを得ているわけです。

だから、身の回りの製品や自然現象から「検索スキーム」に留意しながら
特許を読むクセをつけ、同時に類似特許をまとめて読むクセをつければ
特許が読めるようになるのです。

 

このポイントさえ外さなければ、
文系でも独学でもマスターすることは可能です。

 

 

ただし、多くの分野でこの見方(未知を既知にする探索ルートの設定方法)
を集積していくことになるので広範囲に対応できるようになるまでには
時間がかかります。

 

ついでに言えば、その時間、プロになるまで期間を圧縮する点にこそ、
講座やスクールの存在価値があります。

 

期間圧縮ができないのなら、
そうした講座やスクールに存在価値はありません。

 

 

 

まとめ

 

文系だから専門的・技術的な文章の翻訳ができないわけではない
ということがおわかり頂けたかと思います。

 

問題なのは、内容のキモを見抜く力を身につけること。
森を見て、木を見て、枝を見て、そして葉を見ることです。

 

一つ一つの葉だけに目を奪われてしまうと、
無限に知識を追い求めることになり、長い年月の果てに
挫折することになってしまいますのでご注意ください。

 

 

<追伸>

 

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ある雑誌(稼げる産業翻訳者になる!翻訳力を鍛える本
(イカロスムック、P.94))によれば、

有名な翻訳スクールの4社のうち3社までが「調べ物力」を
翻訳者の必須スキル第1位にしています(残り1社は3位)

 

では、この「調べ物力」とはどのようなもので、
どう運用されるものなのでしょうか。
具体的な事例を使って説明してみたいと思います。

  (さらに…)